はじめに

この記事では、企業規模に応じておすすめの会計システムを解説しています。オンプレミス会計システム、クラウド会計システム、AIを活用した会計システムの種類と特徴について詳しく説明し、中小企業向け、中小・中堅企業向け、中堅企業向け、大企業・グローバル企業向けのそれぞれにおすすめのパッケージ製品を紹介しています。

会計システムの種類と特徴

会計システムにはさまざまな種類があります。ここでは「オンプレミス会計システム」、「クラウド会計システム」、「AIを活用した会計システム」の3つの主要なタイプを取り上げます。

1.オンプレミス会計システム

オンプレミス会計システムは、企業が自社のサーバーやPCにシステムをインストールして利用するタイプの会計ソフトウェアです。これまで最もよく使われていた種類です。

自社のサーバーでデータを管理するため、外部のクラウドサービスを利用する場合よりもセキュリティが高いのが特徴です。

デメリットとしては、導入コストが高い、システムのアップデートや保守管理が必要等が挙げられます。

ライセンス形態は、 使用許諾権等の購入型ライセンスや、リース型ライセンスが主流です。

2.クラウド会計システム

クラウド会計システムは、インターネット経由でアクセスできる会計ソフトウェアで、システムやデータはクラウド上で管理されます。クラウド会計システムには、完全クラウド型とハイブリッド型の2つの主要な形態があります。

2-1 完全クラウド型会計システム

完全クラウド型会計システムは、100%インターネットブラウザを通じてアクセスできるオンラインの会計ソフトウェアです。ソフトウェアをPCにインストールする必要がありません。インターネット環境があれば、どこからでもアクセスできます。また、システムのアップデートやバックアップは自動で行われます。

2-2 ハイブリッド型会計システム

ハイブリッド型会計システムは、PCにインストールされたソフトウェアを使用し、データはクラウド上で管理されます。このタイプのシステムは、オフラインでの作業が可能であり、その後オンラインでデータの同期が行われます。

クラウド会計システムは、ハードウェアやソフトウェアの購入が不要で、初期費用を抑えられます。月額または年額の定額制プランが主流です(導入支援費用を除く)。

デメリットとしては、インターネット接続が必須であること、オンプレミスと比べるとセキュリティの懸念があることです。

一口にクラウド会計システムと言っても、パッケージベンダーがサーバー運用するパターン(マルチテナント型)と、会社が専用のクラウドサーバーを構築するパターン(シングルテナント型)では、その意味合いは大きく異なります。

前者はいわゆる「SaaS」で、本当の意味でのクラウド会計システムです。一方、後者は、インターネット経由(クラウド上)でシステムを提供していますが、自社でそのサーバー等を構築しているため、実質オンプレミス会計システムと言えます。

「クラウド会計システムなのに、なぜこんなに見積金額が高いの?」という時は、たいがい隠れオンプレミス会計システムです。

3.AIを活用した会計システム

AIを活用した会計システムは、人工知能(AI)技術を用いて経理業務を効率化・自動化する会計ソフトウェアです。クラウド会計システムと組み合わせて使用されることが多いです。

基幹システムや金融機関、ECサイト等からデータを取込みした際、AI技術を活用して、科目や取引先を自動で設定(ないしは推定)、仕訳を生成します。

従来は、自動仕訳を行う際、トランザクションデータに科目コードや取引先コードを追加して、仕様に沿ったデータを作る必要がありました。AIを活用することで、そのような作り込みが不要となり、API連携で簡単に自動仕訳を増やすることができるようになりました。

これにより経理担当者の入力の手間は大きく削減できます。ただし、推定処理の場合は、まちがった科目や取引先が割り振られることもありますので確認は必要です。

AIを活用した会計システムは、これからの主流になるでしょうが、まだまだAI搭載の会計システムが少ないのが現状です。

企業規模別の会計システム

世の中には、様々な会計パッケージ製品が販売されています。企業の規模によって求められる機能は異なります。中小企業向け、中小・中堅企業向け、中堅企業向け、大企業・グローバル企業向けの4つのクラスに分けてて、おすすめのパッケージ製品を紹介します。

1.中小企業向け(~年商10億円)

中小企業は売上も社員数も少なく、社内に基幹システムはありません。請求書等の書類は紙やExcelが大半です。このステージでは、経理業務を会計事務所に任せきりの場合も、よくあります。

社内で経理業務を行う場合(自計化)は、仕訳入力がメインで、決算書や総勘定元帳、仕訳帳があれば十分です。社内にシステム担当者がいないので、価格が安くて設定も簡易なものを選びます。

中小企業向けの代表的なパッケージ製品は次のとおりです。

2.中小・中堅企業向け(~年商50億円)

売上や社員数が増えてきて、仕訳明細数も大幅に増えます。業務の一部で基幹システムが導入され、社内にシステム担当者を置くのもこの頃です。

このステージでは、経理担当者による大量の仕訳入力は非効率なので、基幹システムと会計システムを連携し、自動仕訳の構築が必須となります。

また、取引量の増加に伴い、経理で行う入金消込(会社によっては経理で請求書発行もある)、支払処理等も相当な業務量に達します。そこで従来の一般会計システムに加え、債権管理システム、債務管理システム等のサブシステム(モジュール)の導入も検討されます。

基幹システム等の他システム連携、管理会計の機能、サブシステムの充実度、将来の拡張性等を考慮して、パッケージ製品を選びます。

中小・中堅企業向けの代表的なパッケージ製品は次のとおりです。

3.中堅企業向け(~年商500億円)

全国に拠点やグループ会社が増えます。このステージになると、拠点間の内部取引を管理したり、拠点をまたがる同一取引先の取引を全社集計したり、複数会社対応等、管理が複雑化します。企業によっては、海外取引(輸出入)も発生します。

複数会社・複数事業セグメント、外貨建取引、商品・取引・取引条件の多様化等があると、特に債権管理システム、債務管理システムのサブシステムは、より高度な機能が要求されます。

事業がシンプルな場合は、中小・中堅企業向けクラスでも対応できますが、事業が高度化・複雑化した場合は、次のようなパッケージ製品が候補となります。

4.大企業・グローバル企業向け

海外に複数拠点ができ、海外子会社が何社もできます。このステージになると、取引量が膨大かつ複雑になりすぎて、大なり小なりの修正が日常茶飯事です。「基幹システムの数字を一度固めてから、会計システムに流す」という仕組みが難しくなります(疎結合)。

基幹システムの数字が修正される都度、会計と連動するためには、データベースを一元化する必要があり(密結合)、全社統合システム(ERP)が求められます。

さらに、グローバル企業だと、複数通貨(マルチカレンシー)、複数言語(マルチランゲージ)の機能も必須です。

国内中心の事業であれば、中堅企業向けクラスでも対応できますが、海外が多くなると、本格的なERP製品が候補となります。

まとめ

会計システムの種類には、オンプレミス会計システム、クラウド会計システム、AIを活用した会計システムの3つがあります。クラウド会計システムは、さらに完全型とハイブリッド型に分けられます。AIを活用した会計システムは、まだまだ製品の数が少ないのが現状です。

企業規模によって、会計システムに求められる機能は異なります。中小企業は基本機能で十分ですが、中堅企業ともなると高機能のサブシステムが必要です。また、海外のウエイトが大きい大企業やグローバル企業は、海外製のERPパッケージが候補となります。