物価高の経営ではモノの生産性が大事。計画系システムの活用で生産性向上を図る

物価高はこれからが本番

最近はニュースで、インフレの話を聞かない日はありません。日本は今の時点ではまだ影響が小さいほうですが、世界は深刻な物価高になっています。

要因は大きく3つ。1つは食料事情。ウクライナ侵攻で、穀物輸出大国であるロシアとウクライナの輸出量が激減しています。それに加え、今年は米国、欧州、中国、ブラジルで干ばつが発生。特に欧州は500年に一度の大干ばつで、生産量が大幅に減少する見込みです。日本でも飼料の価格高騰で、すでに酪農家の方々は大打撃を食らっています。

2つ目はエネルギー事情です。2年前の原油相場は1バレル40ドルでしたが、現在は90ドルです。一時は120ドルを突破しています。LNG価格も基本的に原油価格に連動していますから、同じです。

本来、日本の電力会社は長期契約でLNG価格の安定化を図っているはずですが、それでも今冬からは、燃料調整費(電力料金を構成する要素)の上限が撤廃されます。電力料金が青天井で上がりそうな勢いです。

3つ目は円安です。あらゆるものが輸入される日本では、円の価値下落が、すべての商材で物価高に少なからず影響をもたらします。

物価高はこれからが本番であり、ウクライナ戦争が長期化すれば、今後何年間もインフレが続く可能性があります。

物価高の経営の視点

これまでの日本は30年以上にわたり物価水準がほぼ一定でした。長年、日銀は低金利政策を続けてきましたが、それでも物価は上がらずでした。つまり多くの企業は、物価は変わらない前提で、経営をしていたわけです。

しかし今回、数十年ぶりに物価高となる環境下で、経営していく必要が出てきました。このような時代では、否が応でもモノに着目せざるを得えません。

たとえば、材料価格が高騰すれば、材料を無駄なく使い切りたい、材料から作られる生産量を少しでも増やせられないか、となります。もちろん、これまでも材料の生産性向上に取り組んできたはずですが、物価高では必要性や真剣度が違います。企業によっては材料費の増加が死活問題になりかねないからです。

新規の設備投資は、躊躇する企業と早めに前倒し企業に二極化するでしょう。躊躇する企業は、既存の設備をより長く使えるよう、メンテナンスに力を入れるかもしれません。前倒しする企業は、今後ますます高くなると考えて、資金が許す限り先行投資や大量発注します。

企業にとって最も大事なモノと言えば、製品や商品です。いかに安く作るか・仕入れるか。取引先の選定・価格交渉から製造・仕入・物流プロセス等まで、生産管理・購買管理・原価管理、これらを総点検です。特に製品商品のムダやロスにつながることは、これまで以上にご法度です。

IT化・業務改革はモノの生産性向上へシフトする

これまでの(物価安定時の)システム化・業務改革は、「社員の生産性向上」がメインテーマでした。業務を効率化したり、手作業をシステムに置き換えたりすることで、社員の業務時間を減らし、今より少ない人数でも業務を回せるようにする(少人化)、ということを求めていたわけです。

これに対して、物価高の時代は、もう一つの経営資源「モノ」の価値が相対的に上がります。これからのシステム化・業務改革は、「モノの生産性向上」を模索していくことが大事です。

計画系システムと実行系システムの違い

もう少し具体的に言うと、人の生産性向上では、ERPのような実行系システムが活躍しました。業務そのものを行ったり処理したりするためのシステムです。これは人の業務を効率化する役割があります。

一方で、モノの生産性向上では、SCMのような計画系システムの重要性が増します。業務を行う前に計画を立てたり予測したりするためのシステムです。これは人の意思決定を助ける役割があります。

たとえば、この商品をいつ何個発注すれば、欠品を起こさず(売上の機会損失を出さず)、過剰在庫で廃棄ロスを出さずに在庫を最適化できるのか。この意思決定を助けるのがSCM(計画系)であり、最終的に決めた数量で仕入先に発注書を作成・送信するのがERP(実行系)です。

Excelバケツリレーと経験測の世界

残念ながら、多くの企業で、計画作成や意思決定のような「決め」は、属人的な作業となっています。さまざまな部署やシステムから情報やデータをExcelでかき集め、それらをバケツリレーのようにつなぎ合わせ、情報を読み解く担当者の経験と勘で行っています。

経験と勘は、代替がきかないという属人化リスクはありますが、余計なコストはかかりません。ある程度の精度が期待できるのであれば、許容されます。

しかし、新型コロナで状況は一変しました。在庫を例にすると、外出制限や生産停止など社会の極端な変質が起きたため、ここ数年、購買担当者の経験測がまったく役に立たなかったのです。実際、経験則での生産や仕入れを続け、大量の欠品を引き起こしたり、納期が長期化したり、過剰在庫の処分や廃棄で苦しんだ企業は少なくありません。

計画系の業務プロセスの見直し

もし「新型コロナやウクライナ侵攻は100年一度の出来事で、もうしばらくすれば社会は例年並みに落ち着く」というお考えであれば、従来通りの方法でも良いと思います。

しかし、今後はますます社会が変化(混乱)し、製品商品の需要が大きく上げ下げしたり、製造や物流のリードタイムが目まぐるしく変わるとお考えなら、もはや経験測での予測・計画づくりは厳しいと認識すべきです。

物価高でモノの価値が上がり続けるのに加え、経験則が通じず計画が狂ってモノのムダやロスが増えるのであれば、企業にとってはダブルパンチです。計画系の業務プロセスや方法を一から見直しましょう。

SCMとAI予測の組み合わせ

SCMは、在庫のPSI計画を作るシステムです。PSI計画とは、P(入庫計画)とS(出庫予測・売上予測)とI(在庫量)の数量を連動した計画です。将来のSで基準在庫(あるべき在庫)Iを計算、そこから必要な入庫量P(リクエストベース)を割り出します。

AI予測は、機械学習や統計的手法を使って出庫(売上)を予測する手法です。PSI計画のカギとなる基準在庫は、将来のSの精度にかかっています。AI予測はこのSの精度を高める手法の一つです。

以上は、在庫の需給調整業務において計画系システムを使う際の一例です。

これらの仕組みへの期待は「在庫のムダやロス、売上の機会損失を少なくする」という点だけではありません。これまでの担当者の経験や勘というブラックボックスを、計画系システムで可視化・数値化し、誰でも合理的に判断・意思決定できるようにする、ということのほうがより重要なのです。

キーとなる数字を可視化・数値化できれば、「どこをどう改善すれば計画・予測の精度が上がるのか」を見極めることができます。それは社内に残る計画に関する知恵、無形の財産になるはずです。