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 6月下旬、企業会計基準委員会から「無形資産に関する検討経過の取りまとめ」が公表されました。

 

 無形資産については平成21年12月に「無形資産に関する論点の整理」が公表されていますが、本レポートは、その後、同委員会においてコンバージェンスの観点から審議されてきた論点、意見、考え方などの検討経過の取りまとめだそうです。

 

 論点整理を公表後5年経っもていまだ継続審議ですから、無形資産の基準化、関係者のコンセンサスの難しさがわかります。

 

 本レポートで私が気になったところをいくつか記載しましょう。

 

 ●スタンス
 我が国には包括的な無形資産の会計基準が存在しません。研究開発費等会計基準はソフトウェア等に特化した会計基準です。IFRS等との整合性からも無形資産会計基準を作成する必要があります。

 

 実際の作業は、無形資産の定義・認識要件などのフレームワークを後回しにして、個別論点を優先しているそうです。

 

 ●社内開発費
 日本基準では研究開発費はすべて発生時に費用処理です。しかし、IFRSでは研究局面と開発局面に分けて、要件を立証できる場合に限り開発で生じた無形資産は資産計上します。社内開発費にかかる資産計上の要否が論点です。

 

 将来の収益獲得の不確実性から現行の費用処理を維持する関係者が多いようですが、とりあえず、IFRSで資産計上している業界ごとの事例分析、関連学術論文の収集分析をして検討継続だそうです。

 

 ●M&Aと無形資産
 企業結合会計基準では法律上の権利などの分離譲渡可能な無形資産は取得原価を配分、資産計上します。IFRSでも認識可能な無形資産は資産計上ですが、その基準は分離可能性規準と契約法律規準のどちらかを満たせばよいとなっています。

 

 例えば、分離可能要件であれば、顧客リスト、データベース、契約に基づかない顧客関係も対象になり、日本基準よりIFRS基準の方がM&A時の無形資産計上範囲は広いです。また、日本基準では例示が少なく測定の客観性の問題から、実務の不統一がおきている可能性も言われており、見直しの要否が検討されています。

 

 こうしてみると、全般的に日本基準は保守主義の原則、IFRSは真実性の原則(時価を真実とする前提で)に偏っていると言えます。無形資産という実態がない資産を、金額測定方法が一般化していない中、いかに会計基準としてまとめていくか、今しばらく熟成期間が必要なのかもしれません。