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 今年を振り返ってみると、やはり記憶にあるのは「東芝の不正会計」です。現在進行形ですし、担当していた新日本監査法人には、21億円の課徴金、新規業務停止3ヵ月などの厳しい処分が下されました。

 

 そこで、2015年の締めくくりとして、「東芝問題」の本質をあらためて考えてみます。

 

 第三者委員会報告書では、事件の原因として“組織的関与”“目標必達(チャレンジ”“上下関係(企業風土)”“会計意識・知識の欠如”などがあげられました。たしかに、東芝の経営組織が金属疲労を起こしていたと言えるでしょう。

 

 しかし、今回の原因が企業体質だけの問題かと言うと、それもまた疑問です。

 

 

 東芝は、日立製作所、三菱電機と並ぶ大手重電の一角です。2015年3月期の各社の売上構成比をみても、重電(電力・機械・半導体・材料・電子デバイス等)比率が高いのがわかります。

 

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 セグメント情報を加工して、重電と軽電(家電・パソコン等)それぞれの営業利益率を試算してみると、次のとおりです。

 

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 東芝の軽電だけが大幅なマイナスで、軽電の主力である「パソコン事業」が、足を引っ張っているのは明らかです。

 

 ここ10年、世界のパソコン市場は急速な変化に見舞われました。大手パソコンメーカー各社は、構造改革を断行しています。

 

  ● IBMは、2005年にPC事業を中国レノボに売却

  ● 日立は、2007年に個人向けPC生産中止

  ● シャープは、2010年にPC事業撤退

  ● NECは、2011年に中国レノボと合弁

  ● ソニーは、2014年にVAIO事業を売却

  ● 富士通は、2016年にPC事業分社化予定

 

 そんな中、東芝は最後までパソコン事業の構造改革をやりませんでした。1985年にノートパソコンを世界で初めて誕生させた自負。ノートパソコンの代名詞“ダイナブック”の過信。過去の「成功体験」から脱却できなかったと言わざるを得ません。

 

 さらに、重電でも事業計画に大幅に狂いが生じます。

 

 東芝は、2006年に原発建設の米国ウエスチングハウス社を約5,400億円で買収しました。当時の東芝の連結純資産が約1兆円ですから、まさに社運を賭けた投資です。しかし、2011年の東日本大震災により、原発事業に大ブレーキがかかります。完全に裏目に出た格好です。

 

 このような東芝の経営状況を株式市場は見抜いていました。次図は2010年9月の株価を基準とした5年間の株価推移です。不正会計で利益を水増ししていたにも関わらず、株価が低迷しています。

 

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 東芝に起きたことは、端的に言えば「業績の悪化」であり、「経営の失敗」です。それを正しく認め、適切な手段や改革を講じることなく、当座をしのぐための短期利益・不正に走ったのが、本当のところです。

 

 “売上(数字)を上げる”ための「チャレンジ」が、単に“数字をつくる”ための「チャレンジ」に成り下がったとき、どの企業にも不正会計は起こりえます。