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 システム開発プロジェクトのキックオフミーティングで、ベンダー側の何気ない発言が気になったことがあります。それは、「・・・・ですので、(ユーザー企業の)皆様におかれましては、ぜひご協力ください」と言うフレーズです。

 

 「ベンダーがユーザー企業に協力を求めるのは、当たり前だろう」と言われれば、そのとおりなのですが、なぜか引っかかったのです。

 

 システム開発は、ユーザー・ベンダーの双方の協力があってこそ成功します。この方の発言に他意はなく、とても良いあいさつでした。

 

 でも、これを聞いた瞬間、「会社側のメンバーが受け身になってしまうのではないか」と危惧したのです。紳士的でソフトな語り口。ベンダーにおまかせすれば、万事上手くいきそうな、そんな錯覚を覚えるような内容でした。

 

 システム開発は、大きく4つのプロセスで構成されています。「要件定義」「設計」「開発」「テスト」です。

 

 このうち、「要件定義」「テスト」はユーザー企業が主体となるフェーズです。実際、システム開発契約でも「要件定義」「テスト」は準委任契約、「設計」「開発」は請負契約と形態が異なるケースが多いです。

 

 準委任契約とは、かんたんに言うと、「ユーザー企業がやる「要件定義」や「テスト」を、システムのプロであるベンダーが応援します」という契約です。ベンダーは誠意をもって一生懸命やればよく、完成責任は問われません。

 

 一方、請負契約はベンダーが「設計」「開発」の完成義務を負う契約です。ユーザー企業の協力の有無に関係なく、ベンダーは責任を持って完成させないとなりません。

 

 話を元に戻すと、「要件定義」はユーザー企業に最終責任があります。ユーザー企業のプロジェクトメンバー自らが、責任を持って積極的にやらないと質の高い要件定義ができないのです。もし質が悪いと、開発の途中で「やっぱりこうしたい」と手戻りしたり、想定があまくて稼働後に運用に耐えられなかったりします。

 

 もちろんベンダーも要件定義が上手くいくように全力を尽くしてくれますが、それにも限界があります。やる気のない子供に無理に勉強を強いるような話です。勉強は自らがするものであり、他者には強制できません。

 

 だから、「検討する時間がない」「よくわからない」とか言って、要件定義に真剣に取り組まないユーザー企業には、ベンダーがミーティング議事録を作って「言いましたよね」「このように決まりましたよ」と言質を取るのです。

 

 しかし、それはベンダーの保険にすぎません。肝心のプロジェクトは失敗リスク(予算超過や稼働遅延)が著しく高まります。何の解決にもなっていないのです。

 

 要件定義で協力するのはユーザーかベンダーか。この問いの答えに「双方」と言えば聞こえは良いですが、私は「協力するのはベンダー、やるのはユーザー」と、はっきり言っておきたいです。ユーザー企業のプロジェクトメンバーひとりひとりが「自分達で考えないとならない」という自覚を持つことが大切です。

 

 ですから、最初のキックオフで、それぞれの役割や立場を明確に伝えておかないと、参加者が勘違いしてしまいます。「ぜひご協力ください」という言葉が悪いわけではなく、ユーザー企業に自覚を促したうえで、「双方協力しましょう」が良いのだと思います。

 

 ベンダーはユーザー企業から仕事をいただく立場です。そのため、得てして低姿勢になりがちですが、それが日本企業のシステムトラブルの遠因になっているのかもしれません。

 

 ユーザー企業はベンダーにあまやかされないように注意し、システム開発に対する正しい理解と責任感を持ちましょう。