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 あなたは「キャッシュ・フロー計算書」が日本に導入されて、何年経ったかがご存じですか? 企業会計審議会から「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」が公表されたのが平成10年ですから、20年近く経ったことになります。

 

 当時は、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)に次ぐ第3の財務諸表として、もの珍しかったキャッシュ・フロー計算書ですが、今では多くの人が知っている(見たことがある)基本表となりました。

 

 基準公表後、間もなく「これからの時代はキャッシュ・フローだ」と言われはじめ、一時期、キャッシュ・フローの作成やキャッシュ・フロー経営に関する本が、書店にズラッと並んでいた記憶があります。

 

 そんな「キャッシュ・フロー経営」ですが、ほんとうの意味で内容を理解し、実践し、収益アップに結び付けられている企業は圧倒的に少数派です。多くの企業は単に営業キャッシュ・フローを赤字にしないよう、気をつけているにすぎません。重視しているのは、やはり「売上高」や「利益」といった損益計算書の数字なのです。

 

 しかし、キャッシュ・フローが導入されたのは、損益計算書だけでは経営的にダメだったからです。ダメな理由は2点あります。

 

 1つは、売掛金や買掛金の信用取引の発達で、「利益」と「現金在り高」が結びつかなくなったからです。典型的な例が「黒字倒産」です。損益計算書上は売上高も利益も増えているのに、資金が逼迫して倒産にいたるケースです。

 

 もう1つは、ビジネスで最も大切なハングリーさが弱まるからです。損益計算書では、従業員の「受注獲得」「資金獲得」のモチベーションがはたらきにくいのです。

 

 町や駅にあるチェーン店のケーキ屋の例で説明しましょう。ケーキ屋さんは現金商売です。店に来たお客さんがショーケースの中にある美味しそうなケーキを見ながら、その場で購入を決めて、買っていきます。「現金収入」と「売上高」が同時に立ちます。

 

 またケーキはイベント販売もあります。誕生日・クリスマスなど、事前に予約することも多いでしょう。通常は予約する時に代金を前払いします。もちろんケーキと引き替え時に後払いのお店もありますが、経営的には前払いが有利です。

 

 このとき、会計的には「現金収入」ですが「売上高」は立ちません。まだ品物を引き渡していないので、売上計上できないのです。科目的には「前受金」扱いとなります。

 

 翌日本部から各店長に送られてくる「売上日報」を見ると、昨日の予約分は反映されていません。あくまで現金売上と過去の予約引渡し分しか、売上高とはならないのです。

 

 もし「売上日報」を店長評価の基準とすると、予約はすぐに成績にならないので、店長は必死になって取りにいくことはしないでしょう。あくまで現物ケーキの販売のほうに注力するはずです。

 

 これに対して入金ベースの「収入日報」を店長評価の基準とすると、現物売りも予約売りも同じ評価なので予約にも一生懸命になります。

 

 キャッシュ・フロー経営は、キャッシュ・フローをいかに獲得していくか、言い換えれば、いかに仕事を先にとるか、いかに早めに資金化するかを、現場の末端まで徹底させる攻めの経営手法です。

 

 会計上の売上高うんぬんは二の次で、「とにかくお金を稼いでこい!」というのが本当なのです。