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 業績が悪化して経営が立ちいかなくなる会社には2つの道があります。一つは「破綻」。もう一つは「事業再生」です。事業再生では、金融機関が支援したり、再生ファンドや事業会社等がスポンサーとして経営に参画したりします。

 

 法的なスキームはさておき事業再生に当たっては、現経営陣が中心になって再建する場合もあれば、スポンサーから派遣されたターンアラウンドマネジャー(事業再生請負人)が担う場合もあります。誰がやるにせよ、事業再生は大変です。

 

 なぜ、事業再生は大変なのか。それは企業の「業績が悪いから」ではありません。多くの人はそう思いがちですが、それは違います。

 

 そもそも「業績が悪い」のは関係者にとって周知です。支援を決める前にデューデリジェンス(調査)を行っています。今は業績が悪いが、この会社に新たな経営資源を投入すれば「必ず復活できる」と踏んだからこそ、支援を決めたのです。

 

 では、事業再生が大変なほんとうの理由とは何か。それは「真実が見えない」ことです。「経営の実態がつかめない」「出てきた数字が信頼できない」「正しい数字が出てきても、ものすごく遅い」、このような状況だと有効な戦略や対策が打てないのです。

 

 本業と関係ないところで大損を出してしまった等、一部の例外を除いて事業再生になる会社には共通点があります。経営の仕組みが悪いのです。

 

 「仕組みが悪い」→「実態が見えない」→「環境変化に対応できない」→「業績悪化」→「事業再生」

 

 大概このようなプロセスを経てきています。好況の時は仕組みが悪くても経営は維持できます。しかし、環境が厳しくなると経営の仕組みが悪いのは致命的です。

 

 そして、事業再生になると次のようなプロセスがおきます。

 

 「事業再生」→「金融支援」→「利害関係者増加」→「経営報告量増加」

 

 銀行や再生ファンドは数字のプロ集団です。彼らが事業再生として参画すると、これまで社内で作ったことがないような管理資料や経営情報が求められます。経営報告の質・量が飛躍的に増えるのです。

 

 しかし、事業再生会社は、もともと「仕組みが悪くて実態が見えない」会社です。急にそのような報告を依頼されても、対応できるはずがありません。スポンサーがハンズオン(実働)で人を出してくれても同じです。報告のもととなる詳細情報やデータがなければ、報告資料を作ることなどできません。

 

 「経営報告量増加」→「人海戦術」→「人的疲弊」→「再生停滞」

 

 それでも経営報告を作ろうとすると、現場や管理の人海戦術に頼らざるを負えません。仕組みやシステムがしっかりしていれば簡単に出せる情報も、人手でやるとものすごく時間がかかります。

 

 その作業が特定の人に集中すると、疲労で倒れてしまうケースすらあります。大体そのような人は再生における実務のキーマンです。倒れないにしても、相当な時間が報告に取られるため、肝心な再生作業が一向に進まないことになります。

 

 これが事業再生の「負のスパイラル」です。事業再生には確かな経営情報は欠かせない。でも、そもそも取れる情報は少ない。だから事業再生は難しいのです。

 

 情報の優先順位を見極め、社内の負担も考えながらギリギリの情報は取れるようにする。そのための突貫工事の仕組み改善と、情報不足の中で有効な経営対策を並行して打っていく。事業再生では高度なバランスが要求されます。