平成29年度の税制改正(平成28年12月22日閣議決定)において、とても興味深い改正がなされました。「新サービス」にかかる開発費用を、試験研究費の対象とするというものです。

 

 現在、多くの会社が「このままではダメだ」と、既存事業の将来に不安を持っています。ビックデータ、IoT、人工知能などの最新のIT技術と既存事業のノウハウを組み合わせることで、何か新しい発見や付加価値、事業が生み出せないかを模索しています。

 

 そのような中、政府は企業がITを使って新規ビジネスを立上げたり、競争力をつけたりするのを促進するため、それらにかかるコストの一部を試験研究費とみなし、税制上優遇するという改正を行いました。

 

 試験研究費と言えば、従来はメーカー色が強かったですが、今回の改正はこれまで試験研究費など無縁だった企業も対象となるところが画期的です。ただし試験研究費とされる業務やコストの対象範囲は限定的です。もっと広くしてくれても良かったと思うのですが、その点は残念です。

 

 それでは、どのような業務やコストが対象になるか、具体的に見ていきましょう。対象業務は次のとおりです。

 

 ■大量の情報を収集する機能を有し、その全部又は主要な部分が自動化されている機器又は技術を用いて行われる情報の収集

 

 ■その収集により蓄積された情報について、一定の法則を発見するために、情報解析専門家により専ら情報の解析を行う機能を有するソフトウエア(これに準ずるソフトウエアを含む。)を用いて行われる分析

 

 ■その分析により発見された法則を利用した新サービスの設計

 

 ■その発見された法則が予測と結果の一致度が高い等妥当であると認められるものであること及びその発見された法則を利用した新サービスがその目的に照らして適当であると認められるものであることの確認

 

 対象業務は情報の収集、分析、設計、検証です。情報を収集・分析することで一定の法則を見つけ、それを新サービスにつなげることを想定しています。

 

 なお、単に自社のマーケティングに使うデータ分析では、今回の試験研究費の対象にはなりません。あくまで新サービス、対価を得て提供する新たな役務の開発を目的として行うことが要件です。

 

 コストは対象業務の原材料費、人件費、経費、委託費です。原材料費にはIoTのセンサーチップ、他社が提供するデータ利用料などが含まれそうです。経費には、アマゾン、マイクロソフト、グーグル等が提供しているクラウドAIの利用料やBIシステムの減価償却費などが該当しそうです。

 

 人件費は一般社員ではなく情報解析専門家に限ります。事実上プロのデータアナリストの利用になりそうです。アナリストと言っても、データテクノロジスト、データサイエンティスト、データアーティスト、データストラテジストと色々ありますが、これらは全て対象になるように思います。

 

 今回の改正は「ITを絡めて何か新しいことを始めなければ!」と思っていた企業には朗報です。ぜひ検討してみて下さい。

 

 なお上記の文章は法制前の私見です。法制後に詳しい適用事例・Q&Aがでると思いますが、実際の適用検討の際は必ず顧問税理士の先生とご相談下さい。