ヤマト運輸の人手不足は、人口減少社会の縮図のようです。人口減少社会では家族構成が変化し、共働き・独身・高齢世帯が増えます。これらの世帯は買い物を簡単に済ませたいので、インターネットの通信販売が増えます。それでいて、家にいる時間が少ないので荷物の再配達率も上昇します。

 

 一方で、労働人口は減少します。人を確保するためには、給与水準を上げるしかありません。コスト増が売上増を上回るなら、値上げという話になります。通販増、再配達増、給与増のトリプルパンチで、宅配業は人口減少社会の洗礼を受けました。

 

 これより早く影響を被ったのは百貨店です。百貨店の主たる顧客は少数の富裕層でなく多数の中流層です。中流家庭が少し高級な買い物をして楽しむ、それが百貨店のビジネスモデルでした。

 

 しかし、労働力不足で女性や高齢者の就労が進むと、買い物でゆとりを楽しむ中間層が激減しました。そのため、業績が悪化した百貨店は、ビジネスモデルを転換し、フロアの全部または一部にテナントを入れています。

 

 この傾向は特に地方で顕著です。それは、地域のシンボル的な百貨店が軒並みダメになっているのでもわかります。地方は首都圏に比べ経済力が弱いうえ、人口の減少スピードが何倍も速いからです。

 

 人口減少社会では社会構造が変化します。自社のビジネスモデルやマーケティング戦略は大丈夫か? 今一度確認することが重要です。今日明日で目に見える変化はないでしょうが、「気付いた時には手遅れ」では困ります。

 

 政府の「働き方改革実現会議」で、残業上限月60時間などが話あわれていますが、基本方針は長時間労働の抑制です。労働人口減少を長時間労働で補わせないルール作りです。

 

 ゆえに、賃金は確実に上昇していきます。人を多く使うビジネスは、現行モデルでは立ち行かなくなります。大きな転換が必要です。一つの表れが、コンビニやファミリーレストランの24時間営業の廃止、百貨店や家電量販店の正月三が日の営業取り止め、営業時間の短縮、定休日の復活などです。

 

 また、賃金が上昇すれば、アウトソーシングが増えます。たとえば、給与計算や社会保険手続などの事務仕事は、多少非効率でも社内でやったほうが安かったのですが、人件費が上昇すればコストが逆転するでしょう。専門性が高いほどその傾向が強いと思います。

 

 さらに、IT化も進みます。システム導入は、システム投資金額と人件費削減金額との比較で決まりますが、人件費が上昇すればその分投資効果が上がるからです。従来ならIT化を見送った業務に対しても、IT化する動きが増えると思います。

 

 いかに自社の労働生産性を上げられるか。一朝一夕には改革できませんから、常に継続して取り組むべき経営課題です。