法律が整備されたこともあり、一昔前と比べるとM&Aがとてもしやすくなりました。会社法で組織再編が柔軟になり、組織再編しても余計な税金がかからないように税法改正されています。

 

 商法の頃は、債務超過の会社を吸収合併することはできませんでした。そのため、合併直前の純資産の査定をしていて債務超過になりそうだと「やばい!どうしよう」と肝を冷やしたものです。今は債務超過の会社も事業価値があれば合併できるようになったので、そのようなことはありません。

 

 このようにM&Aのハードルが下がったことで、経営の一つの選択肢としてM&Aが積極的に用いられるようになりました。新聞やニュースでM&Aに関する記事を目にしないほうが珍しいくらいです。

 

 しかし、その一方で、その後のフォロー不足が問題となるケースが増えてきているように思います。

 

 たとえばDeNAのWELQ問題。本業のゲーム事業が落ち込んでいく中、新しい稼ぎ柱として期待したのが、特定テーマの情報サイトをつくり、広告を集めるキュレ―ション事業でした。2014年にMERY、iemoなどのベンチャー企業を買収します。

 

 ベンチャーは将来有望なビジネスを持っていますが、同時にさまざまなリスクも抱えています。いい意味でビジネスも会社も未完成です。それまで目立たなかったから、大ごとにならなかっただけという問題はたくさんあります。あらためてリスクを検証すべきでした。

 

 またDeNAの経営者が、新規事業のコンセプトそのものをもう少し考えていたら、もっと違う結果になったと思います。「人に役立つ情報とは何か」、そういうキュレ―ション事業の核となる部分について共有できていなかったことが、粗悪なサイトづくりを助長してしまったような気がします。

 

 東芝問題もしかりです。ネットでインタビュー記事を見たのですが、米国ウエスチングハウス社の買収を決断した元社長は「買収は当時の適切な判断で、問題はマネジメントの能力の欠如だった」と答えています。

 

 日本企業の買収でさえ相手とコミュニケーションを取ってコントロールしていくのが大変なのに、海外企業なら尚更です。「買収後も経営の自主性を尊重する」と言えば聞こえは良いですが、それは「問題が発生しない限り放任する」という話ではないはずです。

 

 M&Aでは、まったくカルチャーが違う会社や事業を買ってきます。それらを上手くグループに取り込み、当初描いた成長路線に乗せていくためには相当な手腕を要します。

 

 実務では経営だけでなく営業、人事、法務、経理、情報システムなど、各セクションで時間をかけて地道な情報共有や摺合せが必要です。にもかかわらず、これを十分にできていない、想定があまい、買っておしまいになっている案件が増えているのです。

 

 風呂敷を広げることはできても、きちんと畳むことができないならM&Aは成功しません。その後のフォローは社内的に評価されにくいですが、ここが一番肝心です。もっと買収した後のことを考えないとならないと思います。