大した仕事をしているわけでもないのに、なぜか時間が足りなくなってしまう。思うような成果が上がっていない・・・よくある話だと思います。

 

 「仕事の生産性を上げるためには仕事のスピードを上げることだ」と思っているなら、おそらく現状を脱することは永遠にできないでしょう。

 

 製造の現場では「段取り」と「加工」というものがあります。段取りとは、モノをつくり始める前に機械に金型を設定したり治具を調整したりする作業です。

 

 段取りを一度終えたら、あとは加工です。必要な数だけ製品をつくります。別な製品をつくる際は、また段取りからやり直しです。多品種を生産している工場では、この段取り回数をいかに減らすかが生産性のカギを握っています。

 

 事務作業もこれと同じことが言えます。一つ一つの仕事が軽くても、並行して作業する仕事の種類が多いと生産性を落とします。

 

 それまでやっていた仕事をいったん離れ、別な仕事をやるために頭をリセットする。そして次の仕事の内容を思い出したり、書類を準備したりしなければなりません。

 

 たとえば、製造が営業に提出する原価見積表の様式をどうするかで、話し合っていたとしましょう。

 

製造A「この欄は営業自身に書いてもらえば良いですよね。内訳を見ながら電卓を叩けば簡単に数字を出せますから」

 

製造B「でも、営業は面倒だと言いませんか」

 

製造A「だって、こんなの5秒もかからないでしょう。そこまでやる必要ってある?」

 

 問題となっているのは「内訳を見て電卓を入れて数字を記入すること」です。そのひと手間を製造と営業どちらがやるべきかという話です。これを製造がやるのであれば、原価見積表作成の流れの中でできます。たしかに5秒もかからず終わるでしょう。

 

 しかし営業がやるとなると、この作業のために今手にしている作業をいったん中断しなければなりません。もしかしたら「電卓はどこにある?」とか言って、事務所内を探しまわることもあるでしょう。

 

 全国に営業が100名、一人に月10枚の書類なら月1,000回です。たった5秒の作業だからと言ってもバカにできません。製造か営業のどちらかがやらなければならないとしたら製造がやるべきです。

 

 仕事の中断が悪いのは、何も生産性が悪化することだけではありません。それ以上に問題なのが、本人は「仕事をした気になってしまう」ことです。自分は色々なことを抱えている、こんなに忙しい、自分は仕事をよくやっている、と思います。

 

 たしかに「段取り」も仕事です。でも必要なのは「加工」です。アウトプットを伴わない「段取り」ばかりやっていても、売上は上がりませんし、コストは増える一方です。本当の意味で仕事をしたことにはなっていないのです。

 

 ですから、業務改善では「段取り」の回数を減らすことに注力します。抱えている仕事の種類を減らす、一つの中でも枝葉やイレギュラーを減らす、1つの仕事に取り掛かったら終わるまで中断しない、何日か分をまとめてやるなど、段取り替えしないで済むようにするのです。

 

 もちろん仕事のスピードを上げて「段取り」や「加工」の時間を短くすることも有益ですが、それには限界があります。一つ一つの仕事の内容を精査して取捨選択、シンプル化していくことのほうが、ずっと生産性を高められます。