労働人口の減少が予想をはるかに上回るスピードで深刻化しているようです。ヤマト運輸の「宅配総量の抑制」や「料金の値上げ」のニュースを聞くと、日本企業のビジネスモデルは転換期に差し掛かっていると感じます。

 

 実際、いろいろな事業会社で求人に苦労している話を聞きます。まだ賃上げすれば人を採用することはできますが、そうすると既存の社員やパートの給与も上げないとならないので、人件費が一気に膨れてしまいます。賃上げもそう簡単にできる話ではありません。

 

 では、どうしたら良いのか。ヤマト運輸の戦略転換から考えてみましょう。

 

 ヤマト運輸のこれまでの戦略は、荷物取扱量のシェアと売上高を重視していました。営業はディスカウントしてでも大口案件を獲得し、拡大路線一本で仕事をしていたと思います。

 

 一方で配送効率も重視していました。配達エリアを小口化することで高い配送効率を実現しています。これはヤマト運輸の物量規模があるからこそ出来ることです。さらにリアルタイムで配送管理する情報システム。ヤマト運輸のシステム部門は強力で、子会社ヤマトシステム開発では他社向けのシステムサービスも展開しています。

 

 ヤマト運輸はこの両輪でビジネスを成長させてきたわけですが、バランスが崩れ始めます。荷物取扱量がヤマトの配達可能量を突破したことで、労働者は疲弊し、人件費のコスト増で利益は激減しました。

 

 ここで方針を転換し、「宅配総量の抑制」「サービスの絞り込み」「料金の値上げ」に舵を切ります。「宅配総量の抑制」は自社の配達余力を考えた荷物総量の上限設定です。製造業では自社工場の生産余力を考えて受注調整するのはよくある話ですが、ヤマト運輸もそれを始めたわけです。

 

 「サービスの絞り込み」はお昼の時間指定廃止などサービスは多少劣後しますがそれ以上に労働環境の改善を図れます。「料金の値上げ」は、これまで受注するために安易に安売りしすぎた価格を適正化する処置です。

 

 また配送効率の戦略も変わりました。具体的に言うと、宅配ボックスの推進、取り置き方法の多様化、初回受取の割引サービスなど、再配達削減への本格的な取り組みです。情報システムや配達ルートというものは、ある意味社内で完結する話です。再配達を減らすというのは社外であるお客さんを巻き込まないとできません。ヤマトは効率の範囲を拡大したのです。

 

 企業が保有する経営資源(ヤマトで言えば配達力)は無尽蔵ではありません。限られているからこそ資源を大切に使うとともに、その資源が生み出す付加価値を少しでも高く売ることが肝要なのです。

 

 これから日本では「人」という経営資源がより貴重で高価になっていきます。安い人件費で利益を出すビジネスモデルが通じなくなってきます。そうすると高付加価値化、具体的には値上げ、過剰サービスの削減、売上より利益第一の流れが進みます。

 

 さらに労働生産性を上げる策は、個人の技量や社内だけの取り組みでは限界がきます。取引先などの社外を巻き込んで、サービスの仕様や諸条件を変更したりして生産性を上げる戦略が重要となってきます。

 

 人を多く使う企業ほど、ビジネスモデルや仕組みの構造改革にいち早く取り組む必要がありそうです。