売上高、キャッシュ・フロー、営業利益、ROA、ROEなどは、どれも経営に欠かせない数字や指標です。これらと比べると、変動費と固定費は、あまりメジャーではありません。どちらかと言えば軽視されています。

 

 しかし、変動費と固定費、そして売上高から変動費を引いた限界利益の概念は、経営的に非常に重要です。「企業が生き残るために最も役に立つ」と言っても過言ではありません。

 

 なぜ、変動費と固定費が大切なのか? まずは変動費と固定費の説明から始めましょう。

 

 変動費は販売や生産を行わなければ発生しません。科目的には商品仕入、運賃、販売手数料、材料費、外注費などがそうです。一方、固定費は販売や生産の有無に関わらず発生します。人件費、家賃、機械の減価償却費などがそうです。

 

 ただ、固定費と言っても永久ではありません。道義的責任は置いておいて、業績が悪化したら、従業員を解雇することはできます。家賃は賃貸借期間が終了すれば終わります。減価償却費も法定耐用年数も過ぎれば終りです。

 

 販売や生産を止めても(あるいは止めようと思っても)、一定期間は支出が止まらない費用、それが固定費です。

 

 変動費と固定費の違いが現れるのが、販売や生産の見込みが狂った時です。変動費はすぐに止められますが、固定費はすぐには止まりません。費用発生が続くわけです。

 

 家電大手のシャープが外資に買収されたのも、これが理由です。液晶ディスプレイの巨大工場を2004年、2006年、2009年と立て続けに3つも稼働させたため、市場変化に対応できず2016年に債務超過に転落しました。固定費があまりにも重すぎたのです。

 

 経営的に言うと、固定費は限界利益(=売上-変動費)で賄わないとなりません。

 

 価格や販売量が乱高下するビジネス、限界利益率(限界利益÷売上)が低いビジネスであれば、固定費は極力低め・短めにしておかないと、経営的に危険です。すぐに赤字になってしまいます。

 

 固定費は投資から発生します。人の採用、賃貸借契約、機械の購入、これらは広義の投資、経営の意思決定です。

 

 ですから、自社のビジネスの限界利益の絶対量、変動幅、将来の見込み、これらをしっかり考えた上で、(固定費になる)投資の意思決定をしなければなりません。

 

 しかし実際は、投資する時に慎重さを欠き、大きく見誤ることが少なくありません。そしてその都度、無理な販売促進(東芝のチャレンジ?)、配置転換やリストラ、生産設備の売却に走ってしまいます。

 

 変化が激しい時代では「固定費を抑える経営」、別な表現を使えば「持たざる経営」が大切です。そのためにも、もっと変動費、固定費、限界利益に着目しましょう。