「知識労働者」は、ピーター・ドラッガーによって提唱された言葉です。肉体労働ではなく知識や情報を駆使して付加価値をつくる労働者です。

 

 ドラッガーの言葉を借りれば、システムや業務改革などのプロジェクトメンバーは「知識労働者」です。普段の日常業務は違う場合もあるかもしれませんが、少なくともプロジェクト業務は知識労働だと言えます。

 

 知識労働者の責任は非常に重いです。別に高尚な仕事をしているとか、そういうことを言っているのではありません。知識労働者の決めたことが、他の人、企業で言えば全社員に多大な影響を与えているからです。

 

 たとえば、内部統制を設計して、ある申請業務の承認を何重にもしたとしましょう。そうすると、現場ではその申請業務を行う度に多段階承認が発生します。仮に年1,000件発生しているなら、10年で10,000件です。承認ルールを決めるのはほんの一瞬ですが、実務は10年に渡り、膨大な量になります。

 

 もう一つ例をあげます。コンビニが提供するコーヒーを飲んだことはあるでしょうか? 登場した時は衝撃的でした。「100円でここまでおいしいコーヒーが買えるのか」と思った次第です。

 

 セブンイレブンはセルフ方式ですが、デザイン的にコーヒー機器の「R(レギュラーサイズ)」と「L(ラージサイズ)」の区別がわかりづらく、よく押し間違えがあったのでしょう。

 

 独自に「小さい」「大きい」の手書きのステッカーを貼っている店が、多数散見されました。いくらデザインが良くても機能性が悪ければ意味がありません。一つのデザインが、たくさんの店やお客に迷惑をかけた事例です。

 

 このように、知識労働者の間違った判断は、多大な非効率やムダを生み出します。ひいては企業の弱体化を招きかねません。

 

 システム構築や業務改革(BPR)などにたずさわる人は、このことを強く自覚する必要があります。「自分が想定している以上に、自分が決断することは周りに影響を及ぼす」と。

 

 その上で、仕組み改革者の責務を果たすために、次の3つのことを心がけると良いでしょう。

 

 1つ目は、多軸の視点を持つこと。自分の所属部門や専門以外の分野のことも積極的に情報収集し、学ぶこと。専門外の知見を広げない限り、全社最適化のアイデアは浮かびません。

 

 2つ目は、一生懸命考えること。私はよく「死ぬ気で考えましょう」と言います。アイデア一つ、決断一つが、現場にどれほどの影響を与えるかを想像できれば、今ここで必死に考える価値がわかるはずです。

 

 3つ目は、まず試してみること。初めての試みをいきなり全社展開したり、億単位のシステムをすぐに導入したりすることは無謀です。時には小さく始めて試す、プロトタイプを作って検証してみる、そのような慎重さが大切です。

 

 知識労働者は、文字通り「頭を使うこと」が仕事です。少しでも皆が楽できるように、無意味な作業が発生しないように、知恵を絞りましょう。