ある製造業が生産管理のパッケージシステムを買いました。これを使って工場の日程管理を徹底し、納期を短縮する・・・はずでした。しかし、いざシステムの導入設定の段階になると、そのシステムが使えない代物だったことが判明しました。

 

 さて、いったいこの会社に何があったのでしょうか?

 

 生産管理にとって、もっとも大切なのは時間です。作業日報に記載する「作業時間」、機械日報に入力する「機械時間」、製造指図書に記載する「標準時間」、原価計算で集計したり、配賦したりするのに用いる「時間」など・・・製造業にとって時間という概念は欠かせません。

 

 この会社で使っている時間単位は「分」でした。5分、15分、22分など、分単位で生産情報を収集しています。

 

 しかし、導入したパッケージシステムの時間単位は「時間(アワー)」でした。パッケージベンダーは「アワーと言っても1時間や0.5時間だけでなく、0.003時間など、少数点以下はいくらでも持てますよ」と主張します。

 

 たしかに、理屈上は「分」を「アワー」に換算してシステムに入力すれば、システムは動くかもしれません。

 

 でも、そんな面倒なことを誰がやるでしょうか? 分と時間を換算する早見表でも現場に用意しますか? このようなシステムを導入すれば、工場から大ブーイングが起きることは明らかです。

 

 仮に百歩ゆずって、日々の現場入力は「分」を「アワー」に換算してシステムに取り込む仕掛けを作ったとしても、その他の帳票・検索・原価の設定などの機能はすべて「アワー」です。予算的にすべての機能に換算のカスタマイズはできません。

 

 結局、この会社は泣く泣く購入したパッケージシステムを捨てたと聞きました。

 

 システムの世界で、このような出来事は決して珍しいことではありません。表上はあまり出てきませんが、システムが稼働することなく導入段階で廃棄されることが、今もあちらこちらで起こっています。

 

 なぜ、そのようなことが起こるのか? それは関係者がシステム的に「できる」ことと、実際の現場で「使える」ということを混同してしまっているからです。

 

 「できる」と「使える」とではまったく意味が違います。

 

 システムベンダーや情報システム部は、システムの立場から物事を考えがちです。その機能が1回だけ使われることしか想定していません。

 

 しかし現場は違います。1日100回、毎日使う機能かもしれません。あるいはお客さんと忙しく商談している時に、片手間で入力しないとならない機能かもしれません。

 

 その機能が実際にどのように使われるかをわかっていないから、「アワーと言っても0.003時間など少数点以下はいくらでも持てますよ」という発言が平気でできてしまうのです。

 

 システムは買ってしまえば、おしまいです。たとえ業務に合わないものであっても、がまんしてそれを使っていかなければなりません。

 

 後悔しないためにも、「できる」と「使える」の違いを今一度確認し、パッケージシステムは慎重に選定するようにしましょう。