先週の土曜、たまたまテレビを見ていると、「陣屋」という単語が聴こえてきました。

 

 陣屋と言えば、鶴巻温泉の老舗旅館です。将棋の名人戦や王座戦など数々のタイトル戦が行われています。対局の時に特別に用意される「陣屋カレー」は有名で、いつかは食べてみたいです。

 

 テレビ番組の内容は、陣屋の経営改革の話でした。10年前にサラリーマンをしていた息子夫婦が事業にたずさわってみると、最初は経営状態や生産性の悪さに愕然としたそうです。

 

 紙ベースの予約台帳や顧客台帳。ノートやメモの文化だったのでしょう。そして、スタッフの情報共有もれ。

 

 宿泊業ですから、食事の献立をふくめ、お客さんの細かなリクエストや注意事項があるはずです。口頭やメモ中心だと、現場の段取りが悪くなったり、お客さんの満足度も低くなったりしてしまいます。

 

 また、このような状況では、売上や人件費、材料費などの原価を把握するのに、時間がかかっていたことでしょう。もしかしたら支払いや決算の時にならないと、わからなかったのかもしれません。

 

 そこで、お二人が取り組んだのは徹底したIT化でした。スタッフにはタブレットを持たせ、すべての情報はデータ化し、共有・蓄積させていました。

 

 さらに玄関には監視カメラが着いていて、車両ナンバーを読み取り、どのお客さんがご到着したかまでも把握し、スタッフや調理などに瞬時に伝達するしくみは、感心しました。

 

 これにより従業員は3分の1の数で回るようになり、昨年からは週休3日を実現したそうです。

 

 実際、ここまでの仕組みをつくるのには、並大抵の苦労ではなかったはずです。女将さんは「最初の3年間はトライアンドエラーの連続でした」と語っています。

 

 紙からタブレットへの変更は、慣れない人にとってはものすごい抵抗もあるでしょう。古参のスタッフからは「私に辞めろ、ということですか?」と泣きつかれたこともあったとか。

 

 これを乗り切れたのは、その当時お二人が30代と若かったからということと、もう一つ理由があると思いました。それは、入力(インプット)・出力(アウトプット)を徹底的に現場が使いやすいように工夫したことです。

 

 タブレットは音声入力・ペン入力でできるほか、その入力フォームやマスタは相当研究したのではないかと思います。

 

 また、視認性を考えて、調理場やフロントには大型モニターが置いてありましたし、関係スタッフにアラートや通知が即時にいく仕組みがある感じでした。

 

 システムが現場で使えるか否かは、究極のところI/O周りがいかにストレスフリーか、ということにつきます。毎日使うシステムだからこそ、何年も試行錯誤して改良をつづけたのでしょう。

 

 この陣屋が独自開発したシステムは、旅館やホテルに270社以上に販売されているそうです。もし陣屋に泊まりにいくことがあったら、カレーだけでなくシステムの運用状況も見たいですね。