システム・業務・会計に関するコンサルティング   人手やコストをかければ、管理や業務は誰でもできるが、それでは生産性は上がらない

  1. 経営のしくみ別冊

Vol.5 消費税改正システム対応策

「経営のしくみ別冊」は、弊所が発行している季刊誌です。
この記事は、Vol.5 2019.4「消費税改正システム対応策」です。

はじめに

本レポートは、一般的な消費税改正の解説本ではありません。企業(特に中堅企業)の情報システム部が、消費税改正の必要最低限のポイントを理解し、自社の業務システム改修の方針を考えるためのものです。たとえば、次のようなことが書かれています。

・基幹システムで軽減税率に対応できているか否かを確認するためのポイント
・軽減税率対応でシステム改修を極力抑えるための運用方法の視点
・区分記載請求書と適格請求書のシステム改修を一度で済ます際の注意点
・請求書の税額計算:商品単位での端数処理が認められなくなったことへの対処法
・購買システムの端数差異:インボイス制度が入ると、仕入先の請求書と買掛金の端数差異の実務はどう変わるか?

今度の消費税改正はこれまでと違い、「軽減税率」と「インボイス制度」が新しく導入されました。これらは実務だけでなくシステムにも多大な影響を及ぼしています。

しかも日本で初めての制度なので、まだ解釈があいまいな部分も少なくありません。そこで、著者の私見も交え解説しました。実際のシステム改修方針の参考にしていただければ幸いです。

目次

1.消費税改正3つのポイント
2.業務システムへの影響は?
3.適格請求書の記載内容
4.軽減税率の商品が無い場合
5.月末締めの適格請求書
6.適格請求書の消費税の端数処理
7.仕入税額と購買システムの仕様
8.買掛金の消費税の端数差異

1.消費税改正3つのポイント

鶴亀スポーツ株式会社は、スポーツ用品の小売業を営んでいいます。県内で5店舗を展開してしているほか、本社営業部では法人や官公庁向けの掛売りもやっています。12月決算と新基幹システムの立上げがようやく落ち着いたので、情報システム室と経理部が共同して、消費税改正プロジェクトをスタートさせました。このレポートは情報システム室の森室長と杉下君、経理部の水谷部長の会話を軸に進んでいきます。

・・・

水谷部長「2019年10月まであと半年しかない4月から消費税対応を始めるなんて、いかにも当社らしいね。」

森室長「すみません、1月から稼働した新システム対応で遅くなってしまいました。お蔭様でようやく落ち着きました。」

杉下君「でも今回、新基幹システムはパッケージ製品を入れたから、消費税対応はバッリチじゃないですか?」

森室長「まあ、そうだろうけど、それも含めて検討するのがプロジェクトの目的だよ。」

杉下君「了解です。ところで、消費税は具体的にどう変わるんですか?」

水谷部長「おいおい、そこからかい(笑)。改定のポイントは大きく3つ。税率変更・軽減税率・インボイス制度だよ。」

・・・

前回2013年の消費税改正は、5%から8%への単なる「税率変更」でした。しかし今回の改定は8%から10%への「税率変更」に加え、新しく「軽減税率」と「インボイス制度」が導入されます。前回は税率を変えるだけでよかったので、システムへの影響は軽微でした。今回は特に「軽減税率」と「インボイス制度」にシステム対応していくことが大事になります。

「軽減税率」とは、消費者の負担を軽くするために、一般税率10%のほかに特定の商品に関して、軽減税率8%を適用する制度です。低所得者の生活に不可欠な飲食料品(酒・外食を除く)や新聞(定期購読契約に基づくもの)が、軽減税率の対象商品となります。軽減税率の導入により、これまで全商品一律同じ税率だったものが、商品によって異なる税率を使いわけ、税率ごとに区分して消費税を集計しなければならなくなりました。

「インボイス制度」は、適格請求書等保存方式とも呼ばれ、商品を買った側は売る側から「適格請求書(インボイスともいう)」を受け取り、証憑として保存しておかないと仕入税額控除が受けられなくなるという制度です。これまでは普通の請求書で仕入控除できましたが、これからは適格請求書しか認めない、という話になりました。

企業は売上税額(仮受消費税)と仕入税額(仮払消費税)を差引いた額を、消費税として納付しています。ですからもし仕入控除が認められず仕入税額が減ってしまうと、納める税金が大きく増えてしまいます。これは買手の企業にとって死活問題です。

インボイス制度は社会的影響が大きいので、段階を踏んで導入することになりました。適格請求書の開始は2023年(平成35年)10月からです。それまでの2019年(平成31年)10月から2023年9月の4年間は「区分記載請求書」という暫定措置が取られます。

消費税改正の3つのポイント
・税率変更
・軽減税率
・インボイス制度

・・・

杉下君「なるほど。今回は前回の消費税改正とだいぶ違うんですね。ところで、当社に軽減税率の対象となる飲食料品ってありましたっけ?」

水谷部長「おいおい、スポーツ飲料、プロティン、レジの近くにはガムも置いてるぞ。」

森室長「普通に経費で飲食料品や新聞を買うことだってあるし。」

杉下君「そっか、忘れてました(笑)。でも、プロティンって軽減税率の対象ですか?」

水谷部長「そうだ。健康食品や美容食品も、医薬品等に該当しないものであれば、『食品』として扱うと、国税庁が回答している。」

2.業務システムへの影響は?

森室長「では本題に入りましょう。まず8%から10%への税率変更ですが、これはさすがに問題ありません。2013年の5%から8%の税率変更で経験済みですし、システム改修は不要です。」

水谷部長「じゃあ、2番目の軽減税率はどう?」

杉下君「当社の基幹システムは問題ないんじゃないですか。商品マスタで税区分を持っているので、商品ごとにデフォルトで10%か8%を設定できますからね。」

水谷部長「プロティンは試飲目的で、店内で飲めるようにしてあるよね。」

森室長「イートインってやつですね。この場合は、同じプロティンでも商品コードを別にします。店内飲食10%用と、通常販売(テイクアウト)8%用で、店では使い分けてもらいます。」

水谷部長「別の商品コードにすると、商品販売実績表では、同じプロティンでも別々になるな。プロティンだけで合算数字を見たいなら、EXCELでやればいいか。」

杉下君「了解です。商品部に聞いて必要なら僕が簡単なマクロで作っておきます。」

水谷部長「となると、あとは3番目のインボイス制度か。やはりこれは重たいよね。」

森室長「ええ、そうですね。販売システムは確実に改修が必要です。あと購買システムも仕入控除するうえで、消費税の端数処理が問題ないか、確認が必要になりそうです。」

・・・

システムへの消費税影響を調べる際は、「税率変更」「軽減税率」「インボイス制度」の3つに分けて考えましょう。

税率変更

パッケージシステムやスクラッチ開発を問わず、大半のシステムには「税区分マスタ」が設置されています。税区分マスタとは「課税売上高8%」「課税仕入高8%」「非課税売上高」「非課税仕入高」「対象外」などの税種別を登録しておけるマスタのことです。
これがあれば税率変更は「税区分マスタ」に10%を追加すれば終わりです。

しかし、大昔に稼働した老朽化システムを未だに使っている場合は要注意です。税区分マスタが無いシステムもあります。それでも2013年の5%から8%への税率変更を乗り切ってきたわけですから今回も、改定日10月1日にプログラムの税率をエンジニアが手作業で8%から10%に修正すれば、対応できるでしょう。

軽減税率(複数税率)

こちらはモジュール別の調査をお勧めします。たとえば下記の入力画面で、明細ごとに税区分マスタから税率を選ぶことができるどうか、あるいは商品(サービス)を選んだら、税区分をデフォルトで持っているかを確認します。

・一般会計システムの仕訳入力
・経費精算システム(ワークフローシステム)の経費入力
・販売システムの見積入力、受注入力、売上入力、請求書発行
・購買システムの発注入力、仕入入力
・在庫システムの商品マスタ登録

特に基幹システム(販売システム・購買システム・在庫システム)は、会社によって仕様が異なります。個別の検討が必要です。その際のポイントは、商品(サービス)ごとに税区分を持っているか否かです。

通常の基幹システムは、在庫システムの「商品マスタ登録」が基礎となります。そこで登録された商品コードが、販売システムの見積・受注・売上・請求の明細や、購買システムの発注・仕入の明細に使われます。ですから商品マスタで税区分を持っていれば、販売や購買システムの入力画面上に税区分の箇所が見えていなくても、少なくともデータ的には販売や購買の各明細で税区分を捉えることができるはずです。

しかし商品マスタに税区分がないときは問題です。たとえば販売システムの請求書発行。明細には税抜きの本体価格しかなく、小計した金額に8%を乗じたりしています。このような場合は、システム的に商品が8%か10%の区別を持っていません。8%の商品もある会社は、何かしらの対策が必要です。

たとえば商品マスタに使っていない入力項目があるならば、それを税率区分とみなすのも一つの方法です。その項目に「1」が入っている商品は軽減税率8%対象、「ブランク」なら一般税率10%と運用します。また商品マスタに特に未使用項目が無いならば、商品コードを利用するのも手です。商品コードの一桁目が「K」から始まる商品は8%、数字から始まっているならば10%などとコード設定ルールを決めておくわけです。

このように現行システムに現存する機能で、税区分に相当する区別を持つことができれば、消費税の計算ロジックや請求書・発注書などのアウトプットなど、システムの改修範囲を必要最低限に抑えることができます。

インボイス制度

インボイス制度は請求書に関わることなので、基本は売る側の問題です。販売管理システムやPOSレジシステムが対象となります。債権管理システムで請求書を発行している場合は、債権管理システムも対象です。

適格請求書と普通の請求書の違いは大きく2つあります。1つは売手である会社が、適格請求書の発行事業者として税務署に登録されているか否か。もう1つは請求書の記載内容が適格請求書に必要な要件を満たしているか否かです。適格請求書が開始される2023年10月までには、売手は自分たちが発行する請求書(レシートを含む)を適格請求書にしておかなければなりません。

それまでは、区分記載請求書に対応できていればOKです。消費税改正が始まる2019年10月までに、現行の請求書を区分記載請求書になるように修正します。※具体的な記載内容は次で説明します。

インボイス制度の影響は、何も売る側だけではありません。商品を買う側にも影響があります。購買システムで仕入計上する際、適格請求書にのっとった税額計算をしないと、仕入先の請求金額と、自社の買掛金に端数差異が生じてしまうからです。※購買システムについては後ほど説明します。

・・・

杉下君「インボイス制度は、販売システムだけの話じゃないんですね。」

森室長「そうだね。購買システムも確認しておかないとダメだと思うよ。」

水谷部長「たしかに消費税の端数差異って、意外と面倒な話だからな。」

1

2 3

経営のしくみ別冊の最近記事

  1. Vol.7 新・管理会計 財務会計からの脱却

  2. Vol.6 改革を成功させる生産性向上の急所

  3. Vol.5 消費税改正システム対応策

  4. Vol.4 売上が変わる!はじめての収益認識基準

  5. Vol.3 業務改革にRPAを活かす重要ポイント

PAGE TOP