システム・業務・会計に関するコンサルティング   人手やコストをかければ、管理や業務は誰でもできるが、それでは生産性は上がらない

  1. 経営のしくみ別冊

Vol.5 消費税改正システム対応策

3.適格請求書の記載内容

森室長「それでは続いて、適格請求書の話をしましょう。」

杉下君「適格請求書って言うくらいだから、厳しい規則があって請求書にいろいろ書いておかないとダメなんでしょうね。」

水谷部長「いやいや、そんなことはない。複数税率に対応できるように、どの商品が軽減税率なのかとか、税率ごとの税額や登録事業者の登録番号など、ごく普通の内容だよ。そんな難しい話じゃない。」

森室長「それじゃあ、今の請求書と区分記載請求書と適格請求書の3つの内容を比べてみましょうか。」

・・・

現行の請求書、区分記載請求書、適格請求書の記載要件は以下のとおりです。

まず請求書の基本事項とも言える「①請求書発行者の氏名又は名称」「②取引年月日」「③取引の内容」「④請求書受領者の氏名又は名称」を記載しないとならないのは、どの請求書も同じです。異なってくる点は「⑤対価の額(税込)」の記載内容です。そして新たに記載が求められているのが、「⑥軽減税率の対象品目である旨」「⑦登録番号」「⑧税率ごとの消費税額」です。

(出典:財務省 消費税の軽減税率制度等に関する資料)

区分記載請求書

区分記載請求書は、あくまで適格請求書に移行するまでの暫定の請求書です。最低限、複数税率に対応するための内容となっています。具体的には、まず「⑤A合計対価(税込)」は「⑤B税率ごとの合計対価(税込)」となります。8%と10%それぞれに分けて合計対価(税込)を書き、さらに両者を足した請求合計を記載します。記載内容は多くなるでしょう。

また「⑥軽減税率の対象品目である旨」の記載も必要です。これがないと、どの商品が軽減税率なのかがわかりません。特に書き方は定められていませんが、国税庁の説明資料が「※」の注方式になっているので大半がそのような表記になると思われます。2019年10月までのシステム改修としては、まずこの2項目に対応できるよう請求書及びレシートを修正します。

ちなみに、これらは買手が自分で記入してもOKとなっています。売手のシステム改修が間に合わなかったり、対応しない売手が存在した時に、買手が自ら請求書に書くことで仕入税額控除できるようにしたものです。しかし買手にそのような負担をかけさせるわけにはいきませんので、売手としてこのシステム改修は必須でしょう。

適格請求書

適格請求書は2023年(平成35年)10月から開始されます。それまでに適格請求書の要件を満たす請求書にしておかなければなりません。区分記載請求書からの変更点で言うと、まず「⑤B税率ごとの合計対価(税込)」は「⑤C税率ごとの合計対価(税込or税抜)及び適用税率」になります。合計対価だけでなく適用税率も必須の記載事項となります。加えて「⑧税率ごとの消費税額」の記載も必要です。これにより本体価格・税額・税率がはっきりとわかるようになりました。そして適格請求書発行事業者の「⑦登録番号」です。

販売システムの請求書を、2019年10月までに「区分請求書」に改修し、2023年10月までに「適格請求書」に改修するのは、二度手間です。できるなら一度で「適格請求書」に対応できるようにしておくことも検討しましょう。

先行して適格請求書をつくる際に問題となるのは「登録番号」です。登録番号は法人の場合、頭に「T」を付けて後ろに自社の「法人番号(13桁)」となります。「T-1234567890123」か「T1234567890123」で表記し、半角全額どちらもOKです。(参考:国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問12)

しかし、登録の申請は2021年(平成33年)10月から受付けとなっています。登録されていないうちに請求書に記載すると、あたかも既に登録されたように見えるので、問題です。最初から適格請求書の要件を満たした請求書にするにしても、実際に登録されるまでは、登録番号を非表示にしておきます。

適格簡易請求書

小売業のレシートのように不特定かつ多数の者に渡す場合は、適格請求書に代えて「適格簡易請求書」が認められています。「④請求書受領者の氏名又は名称」を省略できるほか、「⑧税率ごとの消費税額」に代えて適用税率でもOKです。(参考:国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問38)

4.軽減税率の商品が無い場合

事例の鶴亀スポーツは、軽減税率対象商品がありましたが、それらをまったく販売してない企業もあるでしょう。その場合の記載は次のようになります。

・区分記載請求書

軽減税率対象が無い会社は、一般税率10%のみですので、「税率ごとに」わける必要はありません。「⑤B税率ごとの合計対価(税込)」は、すなわち「⑤A対価の額(税込)」です。「⑥軽減税率の対象品目である旨」もいらないので、実質これまでの請求書と記載事項は変わりません。ただし内容をわかりやすくするために、適用税率「10%対象」と記載しておくのが良いと考えます。

・適格請求書

適格請求書では、「⑤A対価の額(税込)」に加え、適用税率「10%対象」の記載が必須となります。軽減税率対象が無い会社でも「⑦登録番号」と「⑧税率ごとの消費税額」(この場合は10%の消費税額)の記載は省略できませんのでご注意ください。(参考:国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問47)

現在軽減税率対象が無い会社であっても、将来飲食料品を取り扱う可能性があるかもしれません。またさらなる消費税改正が実施される時に、飲食料品以外にも軽減税率対象範囲が拡大されるかもしれません。新規に基幹システムを開発される際は、いろいろなことを想定しておきましょう。

5.月末締めの適格請求書

杉下君「3つの違いがよくわかりました。ところで、営業部の掛売りでは、納品書もありますよね。納品書には“適格納品書”とかってないんですか?」

水谷部長「それはない(笑)。」

森室長「でも場合によっては、納品書が適格請求書の一部になることがあるんだ。」

・・・

法人取引においては、商品を納入する時は納品書を出して、請求書は1か月分の取引をまとめて発行することが一般的です。そのような場合は、納品書と請求書を組み合わせて、適格請求書の要件を満たすように設計することも可能です。

1か月の取引が多い場合、納品書に商品明細を書いて、さらに請求書にも商品明細を書くのは手間です。たとえば納品書にだけ「②取引年月日」「③取引の内容」「⑥軽減税率の対象品目である旨」を書き、請求書には該当する納品書番号を書くなどができます。

ただし複数の書類全体で、適格請求書の要件を満たす場合は、複数の書類相互の関連性を明確しておかないとなりません。(参考:国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問43)

6.適格請求書の消費税の端数処理

杉下君「なるほど。請求書と納品書の様式は、新基幹システムでもちょっと手直しが必要そうですね。パッケージベンダーと相談しておきます。」

水谷部長「待て待て、請求書を修正する際は、消費税の端数処理の問題もあるぞ。1つの適格請求書では1回しか端数処理ができないんだ。」

森室長「うちの法人向けの請求書はどうかな?」

杉下君「たしか個々の商品でラウンドしてたような・・・あとで調べておきます。」

・・・

適格請求書の記載事項である「⑧税率ごとの消費税額」は、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理しかできないとルール化されました。これにより一の適格請求書に複数の商品が記載されていても、個々の商品ごとに消費税額を計算し、1円未満の端数処理を行い、その合計を消費税額とすることはできません。

もし現行システムがそのような方法を採用しているなら、適格請求書がはじまる2023年10月までに、システム改修が必要です。ちなみに区分記載請求書は「⑧税率ごとの消費税額」が記載要件になっていませんので大丈夫です。なお、端数処理の方法は「切上げ・切捨て・四捨五入」など、任意に選ぶことができます。(参考:国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問43)

また、請求書と納品書を組み合わせて適格請求書とする場合、請求書1通に対して納品書は複数枚となります。この場合は、どのように端数処理するのでしょうか? それは、「⑧税率ごとの消費税額」を請求書と納品書のどちらに記載しているかで異なります。

納品書に記載している場合は、納品書1通ごとに1回の端数処理です。請求書に記載している場合は、請求書1通で1回の端数処理となります。(参考:国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問44)

ですので、極端な話をすると、1商品につき納品書1通という形態をとるならば、個々の商品ごとに消費税額を計算し、1円未満の端数処理を行うことと結果的に同じになります。しかしそれでは納品書が大量になるので、現実的には難しいでしょう。

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