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  1. コラム

請求書の発行は「経理」か「営業」か

目次
1.請求書発行に正しい部署はあるか
2.会社の規模が小さいなら経理が望ましい
3.会社の規模が大きいなら営業が望ましい
4.中堅企業はどうするか?
5.ジョブシフトを成功させる秘訣

1.請求書発行に正しい部署はあるか

業務改革や次期システムの検討をしていると、参加者からよく次のような質問を受けます。「請求書の発行は、経理部がやるのが普通なのでしょうか? それとも営業部でやるのが一般的なのでしょうか?」

請求書の発行部署を、いちがいに決めることはできません。会社の個々の状況に応じて違います。

たとえば組織体制や各部門の人員数、請求書の月間発行枚数、請求書に記載する内容、請求書を作成する際の元資料、取引条件に基づいて請求書を自動で作成する販売管理システムの有無など。これらを総合的に検討し、しかるべき請求書の発行部署を決めるべきです。

ただし一般論でいうと、企業ステージによって請求書の発行部署はだいたい決まります。規模が小さいうちは経理(または管理)、規模が大きくなれば営業です。 なぜ中小企業は経理で、大企業は営業なのか。企業ステージで異なるその理由を説明しましょう。

2.会社の規模が小さいなら経理が望ましい

いくつか理由がありますが、1つは請求書の「まちがい防止」です。規模が小さいと販売管理システムが整っていません。請求書を手書きやExcelで作成していることが多いでしょう。ヒューマンエラーが起きやすい状態です。

もし請求書をまちがった金額や内容で取引先に送ったら、どうなるでしょうか? 本来の請求額より低いと、債権を回収できずに資金繰りは悪くなります。逆に本来の金額より多く請求すれば、取引先からクレームがきます。

これよりもっと怖いのは、請求書の誤配です。A社宛ての請求書をまちがってB社に送付してしまったら、どうなるでしょう。もし同じ商品を販売していれば、A社とB社で価格が違うことを知られてしまうかもしれません。これは営業的に非常にマイナスです。

問題はそれだけではありません。会社の信用を失います。「A社の請求書が誤配されているのなら、うちの(B社の)請求書も他社に誤配されるかもしれない」 そう思われても不思議はありません。最悪、当社との取引をやめるかもしれないでしょう。

事務能力のセンスを比べれば、営業より経理のほうが明らかに優れています。誤記・誤配のリスクを考えると、請求書発行を経理に任せたほうが安心です。とくに販売管理システムが導入されておらず、請求書発行がマニュアル作業で行われているうちは、そうです。

理由の2つ目は「事務の効率化」です。請求書が手書きやExcelで作成しているなら、請求書への社判押印は実際のハンコを使用しています。請求書発行するためには、最後に押印する作業が不可欠です。中小企業の社判管理は「社長ご自身」あるいは「経理責任者」が行っているので、経理内で請求書発行するほうが効率的です。

事務の効率化はそれだけではありません。規模が小さい時は社員数が少なく、取引量も限られます。経理担当者は経理の仕事だけでフルタイムは埋まりません。時間に余裕があります。

一方、中小企業の営業担当者は、売上を獲得するのに必死で、時間がまったく足りません。100%営業活動に注力できるよう、できるかぎり事務仕事はしたくないでしょう。請求書の月間発行枚数が少ないうちは、経理担当者が請求書発行の仕事をするのほうが、全社最適化の観点で効率的なのです。

これら「まちがい防止」と「事務の効率化」が、経理が請求書発行すべき大きな理由ですが、副次的な効果として「経理事務の側面」もあります。会計的には「売上計上」と実際の「請求書発行」は必ずしも一致するものではありませんが、中小企業の多くは「請求書発行=売上計上」としています。

同じ担当者が請求書発行と売上計上をやれば、売上の計上もれや、請求書の発行もれを防ぐことにもつながります。経理が請求書発行業務を行うと、経理処理もスムーズになる面もあるのです。

3.会社の規模が大きいなら営業が望ましい

規模が小さうちは経理が請求書発行するのがいいですが、規模が大きくなっても経理が請求書発行を続けていると、弊害が目立つようになります。

それまでと何が違うのか? まず請求書の月間発行枚数が大幅に増えます。取り扱う商品やサービスの品目数も莫大になります。さらにセット販売、特殊な価格設定や値引きなど、さまざまなバリエーションが出てきます。

当初は経理の空き時間にやればよかった請求書発行業務も、請求書の発行枚数が増え、内容が多岐に渡れば、それ相応の仕事量になります。片手間ではできません。

今後も請求書発行を経理で続けていくならば、経理部内に請求書発行の専任スタッフを置かなければならなくなるでしょう。管理部門の人員増につながります。

さらに異なるのは営業と経理との距離です。社員数10~20名の中小企業であれば全社員が目に届く範囲にいますから、経理担当者は営業担当の動きや取引先の事情を把握することができます。

しかし社員数1,000名の大企業ともなれば、営業部と経理部のフロアは別々です。そればかりか、営業と経理では建物すら違うことも少なくないでしょう。そうだとすると、経理が営業担当者や取引先の事情など、よく知るはずもありません。

これまで経理が請求書発行業務を問題なくこなせていたのは、物理的にも業務的にも営業との距離が近かったからです。距離が遠くなれば、知らないことが増え、電話やメールでそのつど不明な点を確認しなければならなくなります。経理で請求書発行を行うことが、逆に業務負荷や誤記誤配のリスクを高めるのです。

一方で規模が大きくなると、販売管理システムが整備されます。引き合いがあればシステムで見積書発行。注文があるとシステムに受注入力し、出荷を自動手配。出荷が完了すればシステムで売上の自動仕訳を流す。そして最後に取引条件にのっとってシステムから請求書発行されます。一連の販売プロセスがシステム化されれば、請求書の誤記・誤配のリスクはほとんどなくなります。

もう一点、請求書への社判押印の話がありましたが、毎月請求書を大量発行していれば、すでにシステム電子印字になっているか、請求書用紙に社判が印刷済みに違いありません。もしまだ実際に押印が残っている場合でも、営業部に請求書発行専用の「社判」を与えているのが一般的です。

このような状態になっても、請求書発行を経理部で続けるのは、営業と経理の距離が遠い分、デメリットしかありません。事務の効率化・リスクの点から言っても、営業部で請求書発行を行い、営業担当者自身(ないしは営業事務)で対応するほうが賢明です。

4.中堅企業はどうするか?

中小企業は「経理」、大企業は「営業」が請求書発行するのが望ましいとして、中堅企業はどう考えればいいのでしょうか?

一口に中堅企業と言っても千差万別です。卸売業のように取り扱い品目数が圧倒的に多く、請求明細が大量にあるならば、早々に販売管理システムが導入されているでしょう。このような場合は営業が請求書発行を行うべきです。また建設業など一件当たりの請求金額が高い事業ならば、請求書の月間発行数はいまだ少ないでしょう。請求書発行を経理が続けても問題ありません。

請求書発行を「経理」と「営業」のどちらにするかは、「リスク」と「事務の効率」を総合的に考えて選択します。ここまで述べたことですが、まとめると次のとおりです。

・経理と営業は、同じフロアにいるか。コミュニケーションが十分取れているか(ないしはコミュニケーションが簡単に取れる環境にあるか)。
・請求書の社判の押印は、実物のハンコを使うか。システムによる電子印字、請求書専用用紙に印字済みか。
・もし営業部に請求書専用社判を作成して渡しても、営業部内の管理体制は問題ないか。
・1か月の請求書発行枚数は何枚か。請求書明細数はどれくらいか。
・取り扱い商品やサービスの品目数はどれくらいか。経理担当者にそれらの商品知識はあるか。
・得意先は何社か。経理担当者は得意先の個別事情を把握できているか。
・経理担当者の請求書発行が単なる事務代行になっていないか。請求書の内容に何か問題があれば自ら発見することができるか。
・請求書発行に当たって、経理と営業の間で確認作業がどれくらい発生しているか。
・販売管理システムはあるか。請求書発行を営業に任せても、誤記・誤配のリスクは低いか。
・販売管理システムに自動仕訳はあるか。売上計上漏れは起きにくいか。

いずれにせよ。中堅企業から大企業に成長していく過程では、必ず請求書発行を「経理」から「営業」にシフトするタイミングがきます。会社が成長を続けている限り、どこかで切り替えが必要です。

冒頭に述べた質問、「請求書の発行は、経理部がやるのが普通なのでしょうか? それとも営業部がやるのが一般的なのでしょうか?」をするのは、多くは中堅企業の方々です。

「現状は請求書発行をまだ経理がやっているが、このまま経理でいいのだろうか」と疑問が出てきたわけです。経理が続ける意義やメリットが感じられなくなってきた。それが一つのジョブチェンジの兆しかもしれません。

5.ジョブシフトを成功させる秘訣

「よしじゃあ、経理から営業へジョブシフトしよう」と決めたとしても、実際はなかなか上手くいきません。その際たる理由が営業部の反対です。営業部からしてみれば、ジョブシフトは新しく仕事が増えるだけです。いくら営業が請求書発行したほうが効率的・リスクが低いと言っても、彼らは納得しないでしょう。

営業部から賛同を得るためには、営業部にとってのジョブシフトのメリットを強調するのが一番です。

たとえば請求書発行の迅速化。おそらく今は「営業担当者(請求書発行申請)→営業部長(承認)→経理担当者(請求書発行)→経理部長(承認)」と部門をまたがる業務プロセスになっています。

ジョブシフトすれば、これが「営業担当者(請求書発行)→営業部長(承認)」となります。急に請求書を発行したい時(再発行も含む)、営業担当者は非常に助かるはずです。

また請求書の内容について、経理担当者からそのつど電話やメールで質問されなくなることも、案外大きなメリットかもしれません。

もう一つ、ジョブシフトとしても、いかに営業の手を煩わせないか。請求書発行の軽減策も大事です。販売管理システムによる請求書発行の自動化、実物のハンコによる押印の廃止、定例定額で毎月出すような請求書の簡便化(例:チェックや承認を減らす)など、工夫できることはたくさんあります。ジョブシフトする際は、システム刷新や業務改革とセットやる場合が多いですから、必ず軽減策を盛り込みましょう。

もしこれでも営業部から反対を受けた場合はどうするか? 営業事務を置くことや人員増も検討しましょう。もし経理部内に請求書発行の専任者がいるならば、その人の部署異動もありでしょう。

人を安易に増やすことは反対ですが、請求書の発行枚数が多く、各営業担当者に割り振っても業務負荷が重いなら、営業部内において営業事務を置き、集中的に請求書発行させるほうが得策です。

ジョブシフトは社内的には一見、経理から営業に仕事を付け替えただけのように見えます。しかし営業の最前線に近い場所(営業事務)で請求書発行するのは、同じようにように見えてもエラーを減らし、事務を効率的にさせます。

いずれ会社が成長すれば、営業部に請求書発行をジョブシフトしなければならないわけですから、システム刷新や業務改革など、「ここだ!」というタイミングがあれば、ジョブシフトに取り組んでください。

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