請求書の発行は「経理」か「営業」か

  • 2020年5月4日
  • 2020年9月17日
  • 業務

「請求書の発行は、どこの部署が適切なのか?」とよく質問を受けます。

しかし一概には決められません。なぜなら会社によって請求書の様式が違うからです。

請求書の様式には4つのパターンあります。この記事を読んで、その発行プロセスやシステムの違いを理解し、自社に適した部署を見つけてください。

請求書4つの様式の違い

請求書4つの様式

請求書に記載上のルールは特にありません。しかし商慣習的に4つの様式に分類できます。※分類の名称は当事務所が独自につけたものであり、通称ではありません。

都度請求書

都度請求書は売上の都度、発行します。請求金額は1回の売上金額です。主にスポット取引で使われます。

締め請求書

締め請求書は、あらかじめ得意先と取り決めた締め日でその期間の売上を集計します。請求金額は締め日までの当月売上の合計金額です。主に継続取引で使われます。

売掛金請求書

売掛金請求書は当月売上の合計金額に、締め日時点で前月請求分の未入金を加えた、売掛残高が請求金額となります。入金条件が30日超だと、締め日時点で前月請求分が未入金です。継続取引で入金条件が長い時によく使われます。

債権明細請求書

債権明細請求書は、売掛金請求書と発行単位・請求金額は同じですが明細が異なります。当月の売上明細ではなく売掛残の明細です。得意先との違算確認に適していますが、発行業務は大変です。

 

請求書の発行プロセス

様式によって発行プロセスは異なります。各様式の発行までに必要なプロセスを表したのが下図です。

都度請求書

都度請求書は、「出荷」と「売上」の2ステップが完了すれば、請求書を発行できます。ここでいう「売上」とは金額の確定の意味です。売上の社内処理が終わっていなくても、金額が確定していれば問題ありません。出荷と同時に出す「納品請求書」が良い例です。

締め請求書

締め請求書は、まとめて売上を発行するので「出荷」・「売上」・「集計」の3ステップ必要です。月末など、取引先の締め日を一律にしていると、請求書発行作業が特定の日に集中します。

売掛金請求書

売掛金請求書は、売掛金残高が請求金額なので、当月の売上だけでなく、締め日までの入金額も入力し、残高を固めます。請求書発行まで「出荷」・「売上」・「集計」・「入金」の4ステップです。

債権明細請求書

債権明細請求書は、請求明細として債権の明細を添付します。そのためには入金入力した後、内容をチェックして前月の売掛残の明細消込まで完了させなければなりません。

請求書を発行するには「出荷」・「売上」・「集計」・「入金」・「消込」のすべてのステップが要ります。

 

なお、未着手のプロセスは後で実施します。都度請求書と締め請求書は請求書発行後に「入金」「消込」を、売掛金請求書は発行後に「消込」を行います。プロセス自体が不要なわけではありません。

 

請求書の発行部署とシステム

発行プロセスが違えば、必然的に請求業務に適した部署やシステムも異なります。各プロセスに部署とシステムを紐づけると、次のとおりです。

出荷プロセス

倉庫担当者が、在庫管理システムの出荷指示のもと、商品をピッキング、出荷作業をします。都度請求書(納品請求書)の場合は、倉庫担当者が在庫管理システムから請求書を出力し、商品に同封します。

売上プロセス

在庫管理システムで出荷済みとなると、販売管理システムに情報が流れます。

都度請求書の場合は、営業(または営業事務担当者)が売上の確定処理をし、販売管理システムから請求書を出力し、得意先に郵送(または営業が持参)します。

集計プロセス

月末など締め日に、営業が最終の売上確定処理をします。営業事務担当者(または営業)が売上漏れの無いことを確認した上で、販売管理システムから締め請求書をまとめて印刷、各得意先に送付します。

入金プロセス

販売管理システムで売上確定処理が終了したら、債権管理システムに当月売上データが流れます。並行して経理担当者は、締め日までにあった売掛金入金を債権管理システムに入力。売上データと入金入力が終われば、売掛金残高が確定です。

経理担当者(または営業事務担当者)が、債権管理システムから売掛金請求書をまとめて出力・送付します。

消込プロセス

簡単な消込は経理担当者でもできますが、取引先に確認が必要な内容だと、営業(または営業事務担当者)でしかできません。経理の入金入力が終わってから、営業が債権管理システム上で、入金額を分解して売掛金の明細を消し込みます。

営業(または営業事務担当者)が消込作業完了後、債権管理システムから債権明細請求書を出力・送付します。

なおシステムは、「販売管理」と「債権管理」を一体開発した「販売債権管理」の場合もあります。自社で検討する際は、名称ではなく実態を確認してください。

請求書発行業務の改善ポイント

請求書を早く、楽に発行するためには、どこをどう改善すればいいのか? 請求書発行業務の主な原因プロセス別改善ポイントは、以下のとおりです。

請求入力が遅い|出荷・売上

原因

出荷プロセス・売上プロセスでよくある問題点は「請求入力が遅い」です。単発取引や小規模なビジネスだと販売管理システムがありません。売上前に受注情報をデータ化していないので、請求段階で初めてExcelに入力し、請求書を作成します。

改善策

改善策は、販売管理システムの導入、Excelシートのマスタ整備(品目、取引先、担当者等)などです。入力のタイミングと効率を改善します。なお同じ取引先に月何枚も請求書発行しているなら、都度請求書から締め請求書に変えるのも一法です。請求書の発行回数・枚数が減ります。

売上確定が遅い|集計

原因

集計プロセス、締め請求書が遅くなる理由は「売上確定が遅い」からです。確定に必要な「数量」×「単価」のどちらか、あるいは両方に問題を抱えています。

人材派遣の例でいうと、派遣者の作業報告書が「数量」、料金表が「単価」です。何百人の作業報告書を集めて精査するのに時間がかかっていたり、時間や条件によって複雑に変わる料金計算が属人的になっていたりします。

物販の例だと、いわゆる「違算」です。品違い・数量違い・単価違いなど、当月売上を確定する前に違算を見つけ、赤伝・黒伝で修正しなければなりません。

改善策

1つは、売上の精度を上げることです。作業報告書であれば、月次ではなく日次週次で確認する。頻発する違算原因を特定し、受注プロセスや出荷プロセスを改善していく。EDIを利用して得意先から発注データ・検品データを受領するなど、集計後のチェックを減らします。

改善策の2つ目は、取引条件の見直しです。売上を少しでも上げようと、オーダーメード的に、複雑な取引条件や料金計算が顧客ごとにつくられます。その結果、IT化できずに業務が属人化するわけです。それでも無理にシステムを構築すると、開発費用が途方もなく高額になったり、導入が失敗したりします。

バックオフィスにコストがかかりすぎる取引条件は問題です。取引条件を見直し、簡素化したり、規則性を持たせたりできれば、会社の利益になります。

顧客の特定に手間取る|入金

原因

入金プロセスが遅くなるケースは、BtoBよりもBtoCに多いです。スポット取引が多く、どの顧客からの入金なのか、「顧客の特定に手間どる」からです。

たとえば、販売管理システムの顧客名は個人名なのに、法人名義で入金してきたりすると、入金日と入金金額で顧客を特定するしかありません。やっかいです。

改善策

改善策としては、一例がバーチャル口座の活用です。請求書(または顧客)固有の入金口座番号を割り当てれば、誰からの入金か、簡単に特定できます。ただし請求書発行システムが対応していない場合、システム改修が必要です。

消込作業が煩雑|消込

原因

消込は会社にとって重要なプロセスです。もし消込がおろそかになると、どの売掛金明細が入金して、どの明細が未入金なのか、わからなくなってしまいます。いわゆる売掛金残高のブラックボックス化です。

一方で、消込は煩雑で手間がかかります。たとえば100万円の入金に対して売掛金明細が200明細あると、どの明細が入金した分なのかを割り当てなければなりません。しかも中には一部入金(明細1万円のうち今回は6,000円分だけ入金)などもあります。

改善策

効果的な改善策は3つです。1つは違算を減らすことです。売上集計時にわかる違算は限られます。違算の多くは入金消込して判明します。違算が含まれていると消込の難易度が上がります。違算が無ければ入金日と入金金額でほとんど消込みできます。

2つ目はEDIの活用です。得意先から支払(予定)明細データを取得できれば、入金の内訳がわかります。マッチングすれば簡単に違算を把握できます。

3つ目は「債権明細請求書」から「売掛金請求書」への様式の変更です。売掛金請求書にすると請求書発行後に消込できます。ただし消込で判明する違算は翌月の請求書での修正となるので、これが許容できるかがカギです。

まとめ|請求書発行

最初に請求書の4つ様式を説明しました。

  • 都度請求書
  • 締め請求書
  • 売掛金請求書
  • 債権明細請求書

請求書の様式によって、発行までに必要なプロセス(出荷・売上・収益・入金・消込)が違うことがわかったと思います。

最終プロセスの業務を担当する部署が、請求書の発行部署としては適切です。しかし業務量やシステムの兼ね合いもありますから、自社の事情に合わせて判断してください。

また請求書発行業務を早く、楽にするための改善方法についても解説しました。どこの発行プロセスに、どのような原因があるかを整理して、必要な改善策を施しましょう。

 

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