経営管理には「貢献利益」を考えてみる

経営管理には「貢献利益」を考えてみる

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 利益が出ないビジネスは、たとえ売上高が何億円・何十億円あろうとも、いずれ破綻します。企業経営にとって利益はとても大切です。

 

 ゆえに、経営管理でも「利益」は一番の経営指標です。その中でも特に重宝されているのが、営業活動の成果を表す「営業利益」で、売上総利益(粗利)から販売費及び一般管理費を引いて計算します。全社ベースの営業利益のほか、事業部門別や営業所別のセグメント単位の営業利益を算出し、拠点ごとの収益性を見ます。

 

 しかし、「営業利益」や「経常利益」はもともと制度会計の概念です。株主や債権者への会計報告のために、損益計算書で開示が義務づけられた利益の一つです。

 

 もちろん「営業利益」は経営管理にも十分役立ちますが、純粋に経営管理だけを考えて作られた利益ではありません。会社独自の仕様とかではなく、どちらかと言えば、他社と比較ができるよう共通性・公共性を重視している面があります。

 

 だとすると、管理会計上は、もっと自社に適したオリジナルの“利益”概念があっても良いはずです。

 

 たとえば、

・卸売業ならば売上総利益から物流費だけを引いた利益

・販売業ならば売上総利益から営業人件費や販売奨励金・広告宣伝費を引いた利益

・不動産開発業ならば売上総利益から租税公課・修繕費と支払利息を引いた利益です。

 

 これらは、会社が費用を好きにチョイスして算出した、あくまで自社の管理会計だけで存在する利益です。「営業利益」や「経常利益」とは異なります。特に名前もないので、ここでは仮に“貢献利益”と呼びます。

 

 貢献利益を考えるメリットは2つあります。

 

 1つは、経営管理に必要な情報がよく見えることです。事業部門別や商品グループ別に営業利益を算出しようとすると、得てしてセグメントに分けられなかったその他費用を、売上高比や人数比で按分します。そうすると、かえって実態がつかめなくなるのです。

 

 また、固定費は管理の良し悪しに関わらず発生します。固定費まで差し引いた利益で見ると、どうしても利益変化の振幅が小さくなり、管理指標としてメリハリにかけます。

 

 もう1つは、事務負担の軽減です。管理会計でセグメント分析する際は、費用の明細をセグメントコードで分類しないとなりません。たとえば、卸売業なら倉庫別(営業所別、得意先別)、販売業なら営業担当者別(得意先別、商品別)、不動産開発業なら物件別(エリア別、プロジェクトチーム別)です。

 

 これを営業利益まで算出しようとすると、販売費及び一般管理費のすべての費目にセグメントコードを紐付けなければなりませんが、貢献利益ならば特定の科目だけで済みます。その他の費用の紐づけがいらないので、事務負担を軽減できるのです。

 

 管理会計では、「営業利益」や「経常利益」等の利益だけが、すべてではありません。経営に本当に役立つ利益情報とは何なのか。異なる経営指標として、自社独自の「貢献利益」を考えてみるのも良いのではないでしょうか。

システム全体を俯瞰するのは、経営全体を見るのと同じ。その大切さを全社で共有できた。【オートウェーブ様】

株式会社 オートウェーブ様 【東証JASDAQ 2666】

 カー用品販売・カートータルメンテナンスサービス企業として1990年に設立。現在千葉県内に8店舗を展開、車を愛するお客様にきめ細かいサービスを行っている。車検、タイヤ交換のほか、バッテリーチェックやオイル点検などの日常メンテナンス、本格的な鈑金塗装やドレスアップも手がけるなどメニューは幅広い。今後はお客様が必要なサービスを先回りして提案できる、積極的な販促をめざしている。 > Webサイト

 

お話を伺った方々:

システム室 室長 兼 経営企画室 福田嘉武 様

経理部 部長 兼 IR室 室長 金澤翼 様

システム室 システム課 課長 髙橋友 様

 

 

14年間稼働していた基幹システムを刷新することに。しかし、どこから手をつけていいのかわからなかった。

— 2015年7月から6カ月間、「システム構想プログラム」を受けていただきました。受けようと思われたきっかけは何でしたか。

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福田嘉武さん(以下、福田):基幹システムの古さについては現場から不満が上がっていたので、役員を含めて「そろそろ何とかしなければ」と思っていました。

 

 昨年(2015年)はOSのシステムサポートがなくなってしまうタイミングだったので、本気でシステムごとリプレイスを考えるにはちょうどいい時期だったというのもあります。

 

 

 

 

金澤翼さん(以下、金澤):実は数年前にもリプレイスを検討したことがあるんです。もともと自社で開発したシステムなので、元を生かしながら現状の運用と合わない部分を改善したかったのですが、我々素人ではシステムのどこを直せば欲しい形になるのかわかりません。

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 いくつかのベンダーに要望を伝えたのですが全部叶えようとすると費用が莫大になります。次をどう進めればいいのか悩んでしまい、一度リプレイスは断念しました。

 

 でも、さすがに開発から14年間も経過していて現状の運用とアンマッチが出ている部分もあったので、今回のOSのシステムサポートがなくなってしまうタイミングでリプレイスの再検討を始めました。

 

 その際に顧問会計士の先生に相談したところ、紹介されたのが中川さんでした。

 

 

福田:初めて中川さんにお会いして驚いたのは、1回目のミーティングであまり情報がないはずなのに、現状のシステム状態や現場で起こっている問題をズバリ言い当てられたことです。

 

 役員も一緒に出席したのですが、システムミーティングを終えて「こんな短い期間でこれだけ具体的に指摘できるのか」と話したのを覚えています。

 

 

 

 — 具体的にどんな問題が発生していたのですか。

 

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髙橋友さん(以下、髙橋):自社で作り込んだのでテストが十分ではなく、パッケージに比べて鍛えられていない部分がたくさんありました。

 

 おかしな動作がたびたび起こっていて操作のレスポンスも遅い。現場の要望に応えるたびに無理なシステム構築を重ねたことも原因で、全体的に重くなっていました。

 

 

金澤:顧客データは3つに分かれていたので、1人の履歴を追うにも3つのシステムにアクセスしなければいけません。必要に応じて売上や個別情報をそれぞれのシステムに入力するなど、何重もの手間がありました。

 

 集計業務にも手作業が多く人をシステムに合わせていった結果、社内に「Excelの達人」が増えてしまいました。あまり喜ばしいことではないのですが……。

 

 

福田:当初から中川さんには、これらの状況とスタッフの動線、会計の取りまとめ方、規模、予算、私たちの希望も含めてまず全体から俯瞰し、今後どう改善すればよいかを提案いただきました。

 

 ただユーザーが「こうしてほしい」と言ったものを作るのではなく、現場に即してよりよいシステムを一緒に考え構築していく。そのプロセスに信頼を感じてコンサルティングを受けることにしました。

 

 

 

現状把握から「実現したい機能」の発想まで。コンサルティングを重ねるにつれ、みんなが熱く語り出した。

 

福田:コンサルティングの第一フェーズは、どんなシステムを構築するか方針書を書き上げて、会社の新しい未来を示すことです。

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 従来システムのどこを改善し、情報をどうつなぎ直して新しいメリットを生み出すか。方針書にまとめれば経営陣への説得材料になり、そのまま開発ベンダーへ示す基本理念になります。

 

 そのためにまず行ったのは現状把握です。中川さんからアドバイスをいただきながら売上、仕訳、取引先などの正確な数値情報、サービスの状況、現場での人の動きを追いました。現場では感覚で掴んでいた事柄も数値で表すとはっきりします。

 

 

 たとえばある店舗の1台のPOSはほとんど稼働しない状態だったのが見つかりました。現場では何となく必要だと思っていても数値で見ると稼働率が他の10分の1。これは次期のリプレイスから外しても問題ありません。保守費用も削減できます。

 

 

金澤:ワークフローの見直しでも、5工程のものが実は3工程にまとめられそうだとか、無駄な動きが見えてきます。

 

 メンバーで話し合いを重ねるうちに、だんだん「だったらこうしたほうがいいんじゃないか」と議論が白熱してくることもしばしばでした。みんな全体の流れがわかると問題点がクリアになって、新しい発想が出てくるんです。

 

 

髙橋:正直、今までは現場の意見といってもまんべんなく聞けるわけではありませんでした。それが今回全社で取り組むプロジェクトになり、いろんな部門の声が聞けたのはシステム部門としても大変ありがたかったです。

 

 営業や管理部門にとって「システム」は少し遠い存在だったのかもしれませんが、意見が反映され、実際に使いやすくなれば「自分の武器として使えるツール」だと思ってもらえるはずです。

 

 

 

— どんな点が「武器」になっていくのでしょう。

 

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金澤:先ほど例に出した顧客データについては一元化する予定です。店頭の販売でお客様の情報にアクセスすれば詳細な作業履歴や購入実績がすぐ確認できます。

 

 時期を見て必要なメンテナンスや部品を勧められればお客様にも喜ばれるでしょう。この改革は私たちにとっても大きなものです。

 

 手作業だった集計はシステム化して、権限がある人ならすぐにリアルタイムで様々な数値情報を確認できるようにします。日ごと週ごとの波を捉えやすくなるので、ピンポイントで戦略が立てられます。経営分析にもメリットがある改善です。

 

 

 

システムを構築する正しい手順を導いてもらった。「会社の未来」のためとわかれば現場も協力してくれる。

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福田:現行の基幹システムの開発は私たちも覚えていますが、システム課数名で開発し、いつの間にか現場に降りてきた印象でした。システムの開発というと、社員はシステム部門に「いいものを作ってくれ」と投げるだけになってしまう。

 

 今回、中川さんのコンサルティングを受けた中で、現状をみんなで時間をかけて共有できたのが一番の成果です。「会社の未来」のためにシステムを変えようという認識が広がって現場の協力が得られ、良い形になりました。

 

 

金澤:中川さんは会計のプロでもあるので「経営・会計・システム・業務」の連携を考えられます。会計や営業で問題が発生しても一つ一つ疑問をその場でつぶして新しい案を出していただく。複雑な作業ですが、共有して理解させながら進める力は非常にすごいなと感じました。情報が上手にシステム化されていくので、これを機に会社も一回り大きくなる予感があります。

 

 

髙橋:2016年1月から引き続き3カ月間の「システム選定フェーズ」のコンサルを受け、4月からは開発が始まりました。負担が大きいヒアリングやプランニングは中川さんに導いてもらったからこそ進められたと思います。運用開始まではまだ道のりがありますが、これからもリスクを抑えたシステム構築をめざします。

 

(2016年4月6日取材/インタビューライター 丘村奈央子)

システムはルールを伴わないと意味がない

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 システムが専門でない経営者や現場ユーザーは得てして、「システムを導入したのだから、課題は一気に解決されるだろう」と考えがちです。でも、それは大間違いです。システムはきちんとした運用ルールがあってはじめて、経営や業務に力を発揮します。

 

 システム導入効果の良し悪しを決める要素は2つです。

 

 1つは、システム自体が優れていること。課題解決に役立つ機能と高い操作性が必要です。

 

 もう1つは、ユーザーの使い方が適切であること。ここでいう「使い方」とは単純なシステムのメニュー操作ではなく、システムの用い方、運用や業務ルールです。これが悪ければ、望むような結果は得られません。

 

 たとえば、文書管理システム。文書管理システムとは、契約書・提案書・見積書等の社内の重要な書類をスキャンして電子化して管理したり、WordやPDF等のデータのまま管理したりするシステムです。

 

 文書管理システムは、社内に紙文書が散乱していて探す手間を削減したり、各部門の担当者がそれぞれ契約書をコピーしたりしている状態を解消するのに役立ちます。

 

 しかし、文書管理システムを導入しても、自動的には上記の状態は解消されません。文書管理システムの利用を前提に、文書管理ルールを見直し、新しくシステム運用ルールをつくる必要があります。

 

・何の文書をシステムで管理するのか

・いつの時点でシステムに登録させるのか

・どの部門の誰に権限(登録・修正・承認・閲覧)を与えるのか

・文書管理番号の採番ルールはどうするか

・登録項目や検索項目はどうするか

・共同作成時のルールや版管理はどうするか

・どの更新情報を誰にどう通知させるか

・他システムとの連携やルールはどうするか

 

 これらのルールを全社ベースで議論しないとどうなるか。システムの利用が一部の部門や文書類に限られたり、全ての文書が登録されたりされなかったりします。情報に抜けがあると、検索しても全部のデータが揃っていないので、システムとは別にExcel管理や文書コピーが横行し、いずれシステムは使われなくなります。

 

 だからといって、実態とかい離したルールを作るのもよくありません。

 

 たとえば、ワークフローシステム。稟議書を電子化して社内を回付させる際、システム上は職務権限表どおりに回付ルートを設定しますが、実際は職務権限表の正規ルートとは異なる別ルートが存在していたりすると、たちまち業務は滞ります。紙の稟議書では融通が利いたことができなくなるのです。

 

 こうなると、結局、紙や口頭による“実稟議”とワークフローシステムの“公式稟議”の二重業務がまかり通ることになってしまいます。

 

 ルールは、実態を十分に考慮した適切な内容でないとダメです。そして、覚えて置いて欲しいことは、そのような良いルールは、まず1回では作れないということです。

 

 どれだけ事前に想定していても、実際に試してみないとわからないことが多々あります。ルールの質を高めバランスを整えるためには、時間と手間がかかります。運用を見ながらルールの修正を繰り返すことが大切です。

 

 場合によっては、ルールだけでなくシステムの機能修正も検討します。システムとルールを一体として調整していくことで、本当に“使えるシステム”ができてくるのです。

 

1円までこだわってはいけない会計

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 経理部の方に「1円までこだわってはいけません」と言うと、たいがい驚かれます。なぜなら、経理担当者は入社以来、会計処理は1円まで合わすよう、正確性を第一に教えられているからです。

 

 誤解してほしくないのですが、私は決していい加減な会計処理を推奨しているのではありません。会計には「1円までこだわる会計」と、「1円までこだわる必要がない会計」があるということなのです。会計の専門用語で言うと、前者は“制度会計”、後者は“管理会計”です。

 

 制度会計は、文字どおり“制度”、つまり“法律”に基づいて実施する会計です。主な法律には「会社法」「税法」「金融商品取引法(金商法)」があります。法律ですから、その会計処理は、正確でないと困ります。1円たりとも間違わないようにしなければなりません。

 

 一方、管理会計は、経営のために企業が自主的に行う会計です。法律上やる必要はないけれど、経営に役に立つのでやっています。ですから、その精度は経営管理目的を果たすことができれば十分です。1円単位まで正確である必要はほとんどありません。

 

 冒頭で、私が「1円までこだわってはいけません」と言ったのは、管理会計の話です。たとえば、経営報告まで時間がかかっているならば、会計の精度を多少落としてでも早く報告するほうが、経営的にはずっと有益です。“会計は絶対に正しく”という経理部の思い込みを、解きほぐすための発言でした。

 

 しかし、制度会計と管理会計は融合している面もあります。両者が明らかに別ものであれば話は単純ですが、共有部分があると制度会計に引っ張られ、1円たりとも間違わない正確性が優先されがちです。

 

 たとえば、決算会計。「期末決算」(12ヵ月:会社法・税法・金商法)と「四半期決算」(3ヵ月:金商法)は制度会計ですが、「月次決算」(1ヵ月)は管理会計です。

 

 なお、上場企業になるための上場審査では、月次決算と取締役会の月次開催を求められていますが、これは適切な経営管理(特に予算管理)体制が構築できているかを見ています。期末決算や四半期決算のような決算開示(法律)ではありません。

 

 月次決算を義務とする法律はありませんが、よく月次決算は制度会計と勘違いされます。それは、毎月の月次決算が期末決算と四半期決算の構成要素だからです。四半期決算は月次決算を3ヵ月分集めて作り、期末決算は月次決算を12ヵ月分集めて作ります。

 

 つまり、月次決算には毎月の経営報告という「管理会計」の側面と、期末決算・四半期決算に準用される「制度会計」の側面があるのです。

 

 月次決算が制度会計に偏ると、経理担当者は1円まで正確に処理しようと、翌月届く取引先の請求書を待ったりします。あるいは、経費伝票がたった一枚漏れていたからといって、一度実施した原価計算を最初から再計算したりします。これだと、月次決算は間違いなく遅くなり、迅速な経営報告という本来の目的が失われます。

 

 では、どうすればいいのか。月次決算の役割を管理会計に戻せばいいのです。制度会計として求められる正確性は多少犠牲にし、スピードを優先します。管理会計としての月次決算は、経営が実態をつかみ、今後の方針を意思決定できる精度であれば十分です。

 

 ただし、そのままの月次決算だと制度会計としては使えませんから、後で使える部分と使えない部分を分けて、使えないところは正しい数字に置き換えます。このような処理を「仮伝票処理」または「洗替え処理」と言います。

 

 管理会計と制度会計。「二兎を追う者は一兎をも得ず」です。目的に合わせ、メリハリをつけることが大切です。

原価を変えないと、正しい値決めはできない

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 『値決めは経営の仕事』・・・これは、アメーバ経営で有名な稲盛氏の言葉です。値決めは、会社の利益を決める最も重要な要素です。価格が高すぎると利益は出ますが、受注がとれません。一方、安くすると販売しやすくなりますが、今度は利益が残りません。ですから、値決めは利益がきちんと出て売れるギリギリの所を狙います。

 

 実際の値決めは、製造業の場合、市場価格(マーケットアプローチ)と見積原価(コストアプローチ)を比べて決定されます。

 

 工場が出してきた見積原価が市場価格を下回っていれば問題ありませんが、見積原価が高すぎると、営業担当者からは「これじゃあ売れない」となります。受注の機会をみすみす見逃すか、社内工場より安くできる外注先があれば、そちらに仕事を回して受注したりします。

 

 でも、果たして本当にこれで良いのでしょうか。工場がフル生産であれば、安い引合いをお断りしたり、外注先を活用したりするのもわかります。しかし、生産余力があるなら、話は別です。できる限り設備や人員を遊ばせないよう極力受注に結び付けなければなりません。

 

 そもそも「見積原価」は、どのような数字なのか。

 

 よく原価計算は難しいと言われます。社内で原価計算を担当していても、その意味を正しく理解している人は少ないです。そのため、大昔に先人が作った原価計算ルールをそのまま継承している会社が大半です。

 

 その根幹にあるのは、わが国の「原価計算基準」です。原価計算基準は昭和37年に公表されてから、54年間たった一度も改正されていません。

 

 昭和37年(1962年)と言えば、東京オリンピック(1964年)の2年前、日本の高度経済成長期(いざなぎ景気1966年)が始まる3年前です。当然インターネットも無い、コンピュータも普及していない時代です。その時の国内製造業のために考えられた原価計算の制度が、今もそのままの形で残っているのです。

 

 基準には原価計算の目的として、“価格決定”や“原価管理”も掲げられていますが、その主たる目的は“決算会計”です。日本の制度会計の正規な基準として、これを順守して製造原価を集計し、完成品・仕掛品の棚卸資産を計算しないと、税務調査や上場企業の会計監査がエラーになってしまいます。

 

 決算会計では、公平性・真実性が求められます。つまり、決算会計の原価計算では、「原価と言われるモノはすべてかき集め、実際の金額で、実際に作った製品や仕掛品に適切に按分せよ」となります。専門用語で言うと、『実際全部原価計算』です。

 

 この実際全部原価計算を「大嫌い」と言った大経営者がいます。トヨタのかんばん方式で有名な大野耐一氏です。全部原価計算を工場の指針にすると、生産すればするほど、一製品当たりの製造単価が安くなるので、工場長は作り過ぎてしまうのです。

 

 かんばん方式の基本精神は「在庫は“罪庫”」ですから、大野氏にとっては、経理が唱えるフルコスト(全部原価)は我慢ならなかったようです。その当時に、全部原価計算の本質的な欠陥を看破していたのには、恐れ入ります。

 

 企業の大半は、この決算会計をベースに「見積原価」を作っています。原価計算ルールを昔から承継しているのなら、尚更です。決算会計だと原価は1つの金額(会計上の真実性)しか出ません。それと市場価格を比較して「高い・低い」と値決めの結論を出しているのが現状なのです。

 

 コンピュータがない時代ならまだしも、現代は適切な原価計算システムを構築すれば、原価の多様な計算や分析・シミュレーションができます。決算会計目的の原価計算を元に、価格決定や原価管理に使う必要はありません。価格決定には価格決定に役立つ原価を、原価管理にはコスト削減に役立つ原価を提供できれば良いのです。

 

 今一度、あるべき「見積原価」、値決めに役立つ原価情報を見直してみてはいかがでしょうか。原価の定義が変われば、売上や利益をアップさせる値決めができます。

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