なぜ「情報システム部」と「経理部」は経営への提言が少ないのか

なぜ「情報システム部」と「経理部」は経営への提言が少ないのか

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 ある会社の社長と経営の仕組み改革の話をしている中で、次のような質問を受けたことがあります。

 

 「当社の情報システム部や経理部からは、改革に関して経営への提言や提案がまったくないんだよ。他の会社もそうなの?」

 

 普通に考えれば「情報システム部」と「経理部」は経営の仕組みを担う両輪です。もっと積極的に「会社を良くしていこう」「会社を変えていこう」という具体的な提案や気概があってもしかるべきでないか、と言うのが社長の趣旨でした。

 

 それに対する私の答えは後ほど書くとして、まず理解して置いて欲しいことは、営業、経理、総務などの機能別(職能別)組織の欠点です。

 

 ピーター・ドラッガーも、機能別組織は各部門の目的・専門性を重視するあまり、事業全体の成果に焦点を合わせることが難しいと述べています。

 

 つまり、会社全体としては「利益をあげること」が何よりも大切だと、社員誰もが頭では理解しているのですが、普段は自分の仕事(経理部であれば記帳して決算や経費処理すること)しか意識していないのです。

 

 それは経営幹部である部門長も同じです。結局、自部門の適切な運営が第一であり、それが自分の任務だと思っています。

 

 それに加えて、「情報システム部」と「経理部」には共通した、ある特徴があります。「ミスが許されない」「正確性が何よりも大事」という特質です。

 

 情報システム部は業務システムの安定稼働がミッションです。また顧客情報などの個人情報の情報漏れは、企業存続にも関わりますので万が一も許されません。

 

 経理部は正確な決算がミッションです。税務や監査対応を考えるとミスがあっては大変です。またお金の支払いは慎重に慎重を期して行います。間違いがあると当社だけでなく相手会社にも迷惑がかかってしまいます。会社の信用問題です。

 

 一方、経営やビジネスというものは、ある意味「リスクを取ること」と言えます。新規事業や新しい試み、改革など、勝算あるチャレンジ(東芝ではないですよ)のくり返しです。

 

 ですから業務特性から言うと、「いかにリスクを避けるか」という情報システム部や経理部と、経営改革とはそもそも相性が悪いのです。ディフェンス部門に「点取られてもいいから、もっと積極的に攻撃に参加しろ」と言っている感じです。

 

 社長への私の回答は、確か次のようなものだったと思います。

 

 「両部門の経営改革提案が少ないのは他社も同じだと思います。保守的な部門の特性上、自ら進んで動く部署ではありません。

 

 でも、社長や経営企画部がリードして改革プロジェクトを動かせば、情報システム部や経理部からは様々な提案やアイデアを引き出せます。表にはあまり出しませんが、たいがい色々な思いや意見を持って仕事している部署ですから」

 

 改革プロジェクトでは各部門の特質を理解した上で、うまく巻き込むのが大切です。

 

業務ヒアリングを飛躍的に高めるちょっとしたコツ

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 業務改革やシステム構築にとって、ヒアリングはとても重要な作業ステップです。会社の実状を正しく把握できるかどうかは、ヒアリング能力にかかっていると言っても過言ではありません。

 

 その一方で、ヒアリングの成果は、説明してくれる業務担当者の能力に依存しているのも事実です。

 

 通常業務の「報・連・相」だと、回答方法や報告スタイルが定型化されていて、またその内容に熟知した経営者や上司が聞き役ですから、担当者の能力に関わらず支障なく成立します。

 

 しかし、ヒアリングは臨時かつ第三者への回答です。特に自分の業務を常日頃から整理できていない担当者だと大変です。思いつきで話すので、肝心な情報が抜けたり、どうでも良い部分ばかりにフォーカスしたり、感情だけを爆発させて訴えてきたりします。

 

 このようなことを防ぐために最も効果的なのは、事前に「業務日報」をつけることです。特に間接部門の業務は月次サイクルが主流です。ヒアリング前に担当者に1ヵ月間つけてもらうだけで、内容がかなり整理されます。

 

 ここで大事なことは“毎日”つけることです。できれば1日の途中で小まめにメモします。

 

 なぜそうしてもらうかと言うと、多くの人は日々の業務に忙殺され、普段やっている業務の重要ポイントを後で網羅的に思い出すことが難しいからです。

 

 さらに、慣れ親しんだ業務は無意識にやっています。無意識な作業は体や手を使うものだけではありません。頭を使うのも含みます。「資料をざっと見て判断・指示する」、「問い合わせのメールを見てすぐ返信する」、これらは脳トレのようなタスクなので、当人はあまり意識していないのです。

 

 ですから、面倒でも頻度を増やして業務を「記録」することが大切になります。

 

 しかし、「ヒアリングのために1ヵ月も業務日報をつけることはできない」という時もあります。

 

 その場合は、普段の業務内容を思い出して、事前に洗い出してもらうしかないのですが、それにも限界があります。人によってもピンキリです。どうしたらよいのか。

 

 ここでちょっとした業務を思い出すコツをお教えしましょう。

 

・電子メール内容(送信、受信の両方、1ヵ月分以上)を見直す

・パソコンや共有フォルダ内のファイル(更新日時を意識しながら)を見直す

・紙の作成資料や提出資料、保管ファイルを見直す

・訪問場所を洗い出す、覚え出せない場合は経費精算書やスイカの履歴を見る

・もらった名刺を見直す

・社内を一周する

・よく仕事を頼む・頼まれる他部署の人と話す

 

 つまり、物理的に残っているモノや視覚・会話を頼りに、業務の痕跡をたどるのです。このように何かキッカケがあると、漠然とやっていた業務の洗い出しが、リアルなものに変わります。

「キャッシュ・フロー経営」で稼ぐ力を取り戻す

 

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 あなたは「キャッシュ・フロー計算書」が日本に導入されて、何年経ったかがご存じですか? 企業会計審議会から「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」が公表されたのが平成10年ですから、20年近く経ったことになります。

 

 当時は、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)に次ぐ第3の財務諸表として、もの珍しかったキャッシュ・フロー計算書ですが、今では多くの人が知っている(見たことがある)基本表となりました。

 

 基準公表後、間もなく「これからの時代はキャッシュ・フローだ」と言われはじめ、一時期、キャッシュ・フローの作成やキャッシュ・フロー経営に関する本が、書店にズラッと並んでいた記憶があります。

 

 そんな「キャッシュ・フロー経営」ですが、ほんとうの意味で内容を理解し、実践し、収益アップに結び付けられている企業は圧倒的に少数派です。多くの企業は単に営業キャッシュ・フローを赤字にしないよう、気をつけているにすぎません。重視しているのは、やはり「売上高」や「利益」といった損益計算書の数字なのです。

 

 しかし、キャッシュ・フローが導入されたのは、損益計算書だけでは経営的にダメだったからです。ダメな理由は2点あります。

 

 1つは、売掛金や買掛金の信用取引の発達で、「利益」と「現金在り高」が結びつかなくなったからです。典型的な例が「黒字倒産」です。損益計算書上は売上高も利益も増えているのに、資金が逼迫して倒産にいたるケースです。

 

 もう1つは、ビジネスで最も大切なハングリーさが弱まるからです。損益計算書では、従業員の「受注獲得」「資金獲得」のモチベーションがはたらきにくいのです。

 

 町や駅にあるチェーン店のケーキ屋の例で説明しましょう。ケーキ屋さんは現金商売です。店に来たお客さんがショーケースの中にある美味しそうなケーキを見ながら、その場で購入を決めて、買っていきます。「現金収入」と「売上高」が同時に立ちます。

 

 またケーキはイベント販売もあります。誕生日・クリスマスなど、事前に予約することも多いでしょう。通常は予約する時に代金を前払いします。もちろんケーキと引き替え時に後払いのお店もありますが、経営的には前払いが有利です。

 

 このとき、会計的には「現金収入」ですが「売上高」は立ちません。まだ品物を引き渡していないので、売上計上できないのです。科目的には「前受金」扱いとなります。

 

 翌日本部から各店長に送られてくる「売上日報」を見ると、昨日の予約分は反映されていません。あくまで現金売上と過去の予約引渡し分しか、売上高とはならないのです。

 

 もし「売上日報」を店長評価の基準とすると、予約はすぐに成績にならないので、店長は必死になって取りにいくことはしないでしょう。あくまで現物ケーキの販売のほうに注力するはずです。

 

 これに対して入金ベースの「収入日報」を店長評価の基準とすると、現物売りも予約売りも同じ評価なので予約にも一生懸命になります。

 

 キャッシュ・フロー経営は、キャッシュ・フローをいかに獲得していくか、言い換えれば、いかに仕事を先にとるか、いかに早めに資金化するかを、現場の末端まで徹底させる攻めの経営手法です。

 

 会計上の売上高うんぬんは二の次で、「とにかくお金を稼いでこい!」というのが本当なのです。

最強の経営マネジメントは、最強のダイエット法と同じ

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 40代後半ともなるとお腹周りも気になります。スポーツジムに行きたいけれど、忙しさにかまけてサボりがち。たまに行くとついついやり過ぎてしまい、翌日には筋肉痛になったり偏頭痛がしたり。

 

 そんな中、ある人に最強のダイエット法というものを教えてもらいました。それは「毎日体重計にのること」です。日々現状を認識し、やせるためにどうすべきか(運動なり食事なり)を常に考えるようにします。

 

 週末や思い付いたときに体重計にのるのではダメなのです。毎日です。そして変化を記録します。

 

 これは目新しくもない、とても基本的なことですが、本当にやせたいならこれが一番だそうです。「人間は怠惰だから毎日意識をリセットするしかない」と言う言葉には説得力があります。

 

 この話を聞いたとき、最初に思ったのは「経営マネジメントと同じ」ということです。

 

 業務改革やシステム構築で経営管理資料などを見直す際、経営管理者が毎日見たい情報、部下に指示したい情報を整理します。日次の売上高や受注件数であったり、来客数や一人当たり購入額であったり、操業度や稼働率であったり。

 

 そのような情報は、毎日毎日チェックして貪欲にこだわらないとなりません。その力が弱まると即業績に跳ね返ります。結局、人は怠惰なのです。嫌われようと何しようと、マネジメントに口うるささは不可欠です。

 

 多くの人は「見える化」を勘違いしています。打合せしていると、「それは今のシステムでも見ることができますよ」と言われることも少なくありません。

 

 しかし、仮に現行システムでいつでも見える状態であっても、それが現実的に使われていないなら、それは見えていないのと同じです。

 

 体重計が家にあって、どこかにしまってあるだけなら、ダイエットに役立たないのと同じです。体重計の置き場所を変えるとか、老眼でも見えるよう大きな画面にするとか、体重計を毎日使うよう啓蒙・習慣化させるとか、何らかの対策が必要です。

 

 もう一点付け加えるならば、「見える化」は生データの吐き出しではありません。実績数字の羅列だけでは目がすべります。

 

 資料を見ていろいろな事に気付けて、経営管理者が口うるさく言えるような内容になっていないとダメなのです。

 

 たとえば、データを時系列で並べてみたり、他店舗との比較であったり、商品グループ毎で見てみたり、事象の「変化」を見て取れる必要があります。一目でわかるように、グラフや表、色でも使えていれば尚可です。

 

 目を皿にしないとわからないような資料だったら作るだけムダです。使われなくなるか、何も意見が出てこない形式的な報告資料になるのは目に見えています。

 

 「経営管理のPDCA」と言うと聞こえは良いですが、業績が良い企業がやっているのは地味な作業です。でも稼ぐ上で一番重要なことだと思います。「見える化」する際は、そういう点をおろそかにしないよう注意します。

 

 とりあえず、私は「体重計」を買うことから始めましょう。体重の「見える化」です。

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