連結経営の仕組みはグループの形態に合わせる

連結経営の仕組みはグループの形態に合わせる

 事業が拡大していくと、自然と企業集団を形成していきます。M&Aで外から企業を買ってくる場合もあるでしょうし、社内の資金と人材を投入して新規事業に参入する場合もあるでしょう。そして、グループ会社が数社、10社と増えていく過程で、経営は単体経営から連結経営にシフトしていきます。

 

 連結経営と単体経営では、経営の仕組みが異なります。連結経営ではグループ内の内部取引があります。各社単体の数字や単純に合算した数字だけでは、実態が見えません。非上場であっても簡易な連結決算の仕組み、連結管理会計の仕組みが必要になります。

 

 また、せっかく企業集団を形成しているのですから、シナジー効果を上げていくことが大切です。特に高額なシステム投資の共通化や連携は競争力に直結します。業務システムが「部門システム」から「全社システム」に変わっていったように、連結経営では単体だけを考えたシステムから、企業集団で使えるシステム・企業集団の最適化を意識します。

 

 企業集団の最適化には色々な形態があります。単にがむしゃらに仕組みを統合・連携していけば良いという話ではありません。連結経営の仕組みをどのように考えていけば良いのか。企業集団を2つの要素で考えてみましょう。

 

 1つめの要素は、企業集団が営んでいる事業の数です。単一事業に近い企業集団もあれば、異色な事業を複数営んでいる多角化が進んだ企業集団もあるでしょう。事業の関連性・同一性がポイントです。

 

 2つめの要素は、企業集団の統制力です。親会社の意向が絶対なのか、各会社が経営的に自立していて不可侵な状態なのかです。これは単なる独立採算制とは異なります。その会社のコントロールのしやすさ(企業集団に属した経緯、社風など)、裏を返せば親会社への依存度とも言えます。

 

 企業集団を2つの要素でマトリクスにすると「営業所型」「事業部型」「フランチャイズ型」「連邦型」の4つに分類できます。

 

■営業所型

 企業集団が単一事業を営み、全体の統制力が高い場合、連結経営の仕組みは「営業所型」です。単一事業で企業集団であると、各社は親会社の営業所的な役割を果たしている場合が多いです。法人格が別でもシステム共通化や連携を強力に押し進めます。

 

■事業部型

 企業集団が多角化していて、全体の統制力が高い場合、連結経営の仕組みは「事業部型」です。異種の事業を展開している場合、基幹システムの統合は難しいでしょう。会計系システムやワークフローやメール等、事業に直結しない分野のシステム共通基盤化を考えます。

 

■フランチャイズ型

 企業集団が単一事業を営み、全体の統制力が低い場合、連結経営の仕組みは「フランチャイズ型」です。システムを共通パッケージ化して、各社が使える方式が望ましいです。ただし自立型の各社に合わせ、パラメータ設定ができることが条件です。

 

■連邦型

 企業集団が多角化していて、全体の統制力が低い場合、連結経営の仕組みは「連邦型」です。緩やかな関係性で企業集団を形成しているので、もっとも共通化が難しいです。ムリに共通化はせず、親会社の連結決算や連結管理会計のための会計情報収集に注力する形が良いと思います。

 

 企業集団の形態を認識して、それに合わせた仕組みづくりが大切です。

既存事業に情報分析を絡めるなら「今でしょ」

 

 平成29年度の税制改正(平成28年12月22日閣議決定)において、とても興味深い改正がなされました。「新サービス」にかかる開発費用を、試験研究費の対象とするというものです。

 

 現在、多くの会社が「このままではダメだ」と、既存事業の将来に不安を持っています。ビックデータ、IoT、人工知能などの最新のIT技術と既存事業のノウハウを組み合わせることで、何か新しい発見や付加価値、事業が生み出せないかを模索しています。

 

 そのような中、政府は企業がITを使って新規ビジネスを立上げたり、競争力をつけたりするのを促進するため、それらにかかるコストの一部を試験研究費とみなし、税制上優遇するという改正を行いました。

 

 試験研究費と言えば、従来はメーカー色が強かったですが、今回の改正はこれまで試験研究費など無縁だった企業も対象となるところが画期的です。ただし試験研究費とされる業務やコストの対象範囲は限定的です。もっと広くしてくれても良かったと思うのですが、その点は残念です。

 

 それでは、どのような業務やコストが対象になるか、具体的に見ていきましょう。対象業務は次のとおりです。

 

 ■大量の情報を収集する機能を有し、その全部又は主要な部分が自動化されている機器又は技術を用いて行われる情報の収集

 

 ■その収集により蓄積された情報について、一定の法則を発見するために、情報解析専門家により専ら情報の解析を行う機能を有するソフトウエア(これに準ずるソフトウエアを含む。)を用いて行われる分析

 

 ■その分析により発見された法則を利用した新サービスの設計

 

 ■その発見された法則が予測と結果の一致度が高い等妥当であると認められるものであること及びその発見された法則を利用した新サービスがその目的に照らして適当であると認められるものであることの確認

 

 対象業務は情報の収集、分析、設計、検証です。情報を収集・分析することで一定の法則を見つけ、それを新サービスにつなげることを想定しています。

 

 なお、単に自社のマーケティングに使うデータ分析では、今回の試験研究費の対象にはなりません。あくまで新サービス、対価を得て提供する新たな役務の開発を目的として行うことが要件です。

 

 コストは対象業務の原材料費、人件費、経費、委託費です。原材料費にはIoTのセンサーチップ、他社が提供するデータ利用料などが含まれそうです。経費には、アマゾン、マイクロソフト、グーグル等が提供しているクラウドAIの利用料やBIシステムの減価償却費などが該当しそうです。

 

 人件費は一般社員ではなく情報解析専門家に限ります。事実上プロのデータアナリストの利用になりそうです。アナリストと言っても、データテクノロジスト、データサイエンティスト、データアーティスト、データストラテジストと色々ありますが、これらは全て対象になるように思います。

 

 今回の改正は「ITを絡めて何か新しいことを始めなければ!」と思っていた企業には朗報です。ぜひ検討してみて下さい。

 

 なお上記の文章は法制前の私見です。法制後に詳しい適用事例・Q&Aがでると思いますが、実際の適用検討の際は必ず顧問税理士の先生とご相談下さい。

本の要約サイト「flierフライヤー」に掲載されました

 弊所代表 中川充著「お金をドブに捨てないシステム開発の教科書」(技術評論社)が「本の要約サイトflierフライヤー」に掲載されました。

 

 「本の要約サイトflierフライヤー」は、多忙なビジネスパーソン向けに書籍の要約をWEB上で提供している10万人超の会員サイトです。

 

 

事業採算性と投資効果分析の違い

  経営では、全社だけでなく事業や拠点などセグメント単位の採算を見ることが大切です。もし正しい採算を見ることができないと、経営判断を間違えたり、決断が遅れたりしてしまいます。

 

 しかし案外、正しい採算を見ることは簡単ではありません。理由は3つあります。

 

 1つめの理由は、収益とコストの紐づきが複雑だからです。特に現代経営のコストは複数収益にまたがる共通コストが大半です。共通コストを何らかの基準を用いて、収益に見合う分だけを割り振らないと、正しい採算を見ることができません。

 

 2つめは、収益とコストの期間対応のズレです。収益の認識は実現主義です。売上が実現しない限り、会計上は収益をカウントしません。一方、費用の認識は発生主義です。コスト発生の都度、費用としてカウントします。

 

 簿記的に言うと、売上高と仕入高を引いても正しい利益にならないのと同じです。仕入高に期首商品を足して期末商品を引く、いわゆる在庫調整をし、仕入高を売上原価に変換して、はじめて売上高と売上原価を引いて正しい利益が出ます。これと同じようなことが採算を見る時に起きる場合があるのです。

 

 3つめは、グルーピングの違いです。これは特に製造業に多いのですが、収益は販売管理システム、コストは生産管理システムから情報収集します。各システムでグルーピングが違うのです。

 

 たとえば、販売管理システムは製品種グループ、生産管理システムは生産ライングループで分かれていると、収益とコストをダイレクトに紐付けることができません。収益とコストを対応させる調整作業が必要になります。

 

 このように、収益とコストを結びつけるのはそう単純ではないので、正しい採算を見るためには、調整項目や手順を適切に設計しないとなりません。

 

 その際、気を付けなければならないのが、「事業採算性」と「投資効果分析」

の違いです。どちらも「いくら儲かったのか」を分析するという点では同じです。しかし根本的に違う点があります。それは、何を基準にしているかです。

 

 事業採算性は、事業(収益)を基準にして採算を見ています。一方、投資効果分析は、投資(コスト)を基準にして採算を見ています。つまり収益とコストの調整計算において、どちらを正にして、どちらを修正するのかという点が違うのです。

 

 事業採算性は、事業(収益)を基準にしていますから、収益はそのままに、コストを修正します。たとえば、グルーピングの違いがあるとしたら、販売管理システムのグル―ピングを正として、生産管理システムのグルーピングを修正するのです。

 

 投資効果分析は、投資(コスト)を基準にしていますから、こちらはコストをそのままに、収益を修正します。たとえば、収益とコストで期間対応のズレがあるとしたら、コストを正にして、売上高(収益)をコストに合うように逆在庫調整します。

 

 「期間対応はコストベース」、「グルーピングは収益べース」など調整項目内で一貫していないと、間違った採算分析になりますから気を付けましょう。

2017年はAI元年になるかもしれない

 「富国生命がAI(人工知能)を導入し、保険査定部署の人員3割(34人)削減」という記事(毎日新聞)が年末に掲載されました。その削減人数もさることながら、AIが“保険査定業務”を担うことに驚きました。

 

 なぜなら、医療系の情報は自由度がかなり高いのです。診断書(レセプト)はほぼ電子化されていますが、お医者さんによってその記載内容はバラバラです。

 

 さらに病名。正式名称のほかに様々な通称があったり、症状を組み合わせて創作されていたり、その医療分野のエキスパートでないと判断できないものもあります。

 

 これほど自由度が高い専門情報をテキストマイニングし、複雑な判断を下せるのはスゴイと思いました。

 

※テキストマイニングとは、通常の文章からなるデータを単語や文節で区切り、それらの出現の頻度や共出現の相関、出現傾向、時系列などを解析することで有用な情報を取り出す、テキストデータの分析方法(出典:Wikipedia)

 

 少し前にも「新日本監査法人がAIを使った次世代監査システム開発に乗り出す」という記事(日本経済新聞)がありました。

 

 しかし、こちらは企業の数字データを分析して異常な取引を抽出したり、財務諸表の数字から過去に不正があった企業との類似点を見つけ出したりを想定しています。文字や文章も多少扱うでしょうが、数字中心のデータマイニングです。

 

 大学やシンクタンクがよく「将来AIやロボットに代替される職業」を予測していますが、そこには一定の傾向が見てとれます。

 

 ・数字を扱う事務仕事

 ・最低限の会話で成り立つ単純労働

 

 「数字」と「文章・会話」では、「数字」のほうが圧倒的に情報の取得・整理・意味付けが簡単です。経験値に基づく仕事上の判断も機械学習で代用できます。会計士も無くなる職業候補の筆頭ですが、この条件によく当てはまります(笑)。

 

 テキストマイニングも日進月歩で進化していますが、ファジーな文章や会話を認識し、AIが業務を取って代わるまではもう少し時間がかかるだろうと思っていました。

 

 しかし、そうではなさそうです。

 

 文章や会話が必要なホワイトカラーの仕事のほうがずっと多いわけです。AIでできるなら数字系よりずっとニーズはあります。

 

 コストも投資検討の範囲内です。富国生命は34人の人員削減で2年弱でコスト回収できます。AIのクラウドサービスもすでにあり、ハードルは低いでしょう。

 

 2017年は酉年ですが、AIに「100匹目のサル現象」が起きそうな予感がします。

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