会社のために体を張る人を増やす

会社のために体を張る人を増やす

 業績の良い会社は、会社のために体を張っている人が多いなと感じます。体を張るとは、具体的に言うと、外部のプレッシャーに負けずに会社の利益を主張することです。安易に妥協しないとも言えます。

 

 営業部は、得意先に対して価格をできる限り高くできるよう体を張ります。価格を下げれば簡単に売れるでしょうが、それでは会社の利益を損ないます。営業努力で価格を下げずに売ることが求められます。

 

 体を張るのは、何も営業だけではありません。経理部、情報システム部、購買部、管理部門も同じです。外からはわかりにくいですが、管理部門も外部と接点を持っています。そして、彼らの体の張り具合が、実は会社にとって重要だったりします。

 

 経理部の主な相手は、銀行、税務署、監査法人です。生殺与奪の権を握られている面もありますから、どこも手ごわい相手です。でも、だからと言って、言いなりになるようでは会社のためになりません。

 

 たとえば、監査法人が「こうしてほしい」と言ったことを、何でもかんでも無条件で受け入れるのは良くありません。

 

 会計の目的は、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることです。重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも認められています(重要性の原則)。

 

 監査法人は厳密な会計処理が第一義です。重要性の原則はあくまで許容範囲であって、最初から考慮してくれている話ではありません。実務負担が重たい要請については、経理部が会社の実情に応じた対案、解決方法を自ら考え、監査法人と交渉すべきです。

 

 情報システム部の外部は、システムベンダーです。中堅企業以下だと社内体制が充実していないので、ベンダーの依存度も高いでしょう。10年以上の付き合いで、下手をすると社内よりも会社に詳しい取引先かもしれません。

 

 そうなると、保守料や改修作業の料金は実質言い値。機能改修はベンダーの意向が強く出ます。経営や現場で新しい提案をしても、ベンダーに「やらない方が良い」と一蹴されます。これではシステムの所有者が誰のものなのか、よくわかりません。

 

 さらに、システム部員はITリテラシーが低い経営や現場よりも、本稼働で苦楽をともにしたベンダーに親近感を覚えがちです。システム本来の目的は会社の利益貢献(業務効率化含む)のはずですが、ベンダーと同じ立場をとることが多くなります。

 

 会社のために体を張るとは「外部と敵対しましょう」という話ではありません。会社の代表として、各セクションで主体を持って思考してほしい、ということです。そのためには相手に負けない自己研鑚が必要ですし、ストレスがかかります。でもそれが仕事です。頑張ってほしいと思います。

自分に都合の良い思い込みは避ける

 大切な会議では議事録が欠かせません。これは関係者の間で議論の内容を忘れないようにする備忘としての目的と、もう一つ、話し合われた内容や何が決まったかと言う事実を文書に残しておくのが目的です。

 

 人は得てして自分に都合の良い思い込みをします。たとえばシステム構築プロジェクトの進捗会議。そこで「現状は概ね予定通り進んでいます。しかし、スケジュールに余裕はないので、何かあれば本稼働が遅れる可能性があります。」と報告したとしましょう。

 

 会議に出席していた役員はこれを聞いて「プロジェクトは順調だな。特に問題はないな」と思うでしょう。一方で発言者は「プロジェクトの遅延リスクを伝えて了承を得られた」と思っているかもしれません。

 

 発言する人は良い内容は「強め」に、悪い内容は「弱め」に話します。またそれを聞く人も聞いていて心地良い内容は「強め」に、悪い内容は「弱め」に感じとります。内容は増幅して歪められ、事実からかい離した解釈が伝わってしまいます。

 

 そうすると、問題が発生した際「そんなことは聞いていないぞ」となるわけです。会議では常にそういう傾向があるので、良い内容は「弱め」に、悪い内容は「強め」に聞くよう、自分でバイアスを逆補正することが大事です。

 

 これは会話だけとは限りません。たとえば豊洲移転問題の土地取引の瑕疵担保条項です。これはあくまで私の想像ですが、東京都と東京ガスの間で瑕疵に関する大きな認識のずれがあったのではないでしょうか。

 

 東京ガスからすれば、土地の売却先はどこでも良いわけです。当然、土壌汚染対策は一般的な土地使用・取引を想定すればよく、そのための費用78億円は負担します、というスタンスだったのではと思います。

 

 これに対して、東京都は市場用地として購入するのは、当然東京ガスも知っているわけで「東京ガスがきれいにする」と言っている以上、市場用地として使えるレベルまでの土壌汚染対策を盛り込んでくれた(それが78億円)だと、思い込んだのではないでしょうか。

 

 大きな追加コスト発生は想定外で、決裁も予算も後付けとなり、極力費用を抑えるためにムリに盛り土を減らした。もちろん事実は違うかもしれませんが、そんなような気がします。

 

 私が色々なプロジェクトや取引を見てきて思うことは、いかに人や立場で都合の良い思い込みが繰り返されるかです。コミュニケーション不足と言えばそれまでですが、些細な勘違いが失敗の原因であることは少なくありません。

 

 ホウレンソウ(報・連・相)する際は、相手をミスリードしないよう表現に気を付け、何かを判断したり決めたりする際は、自分勝手な思い込みをしないよう、相手の立場にたって解釈し直してみることが大切だと思います。

人口減少社会がもたらす変化

 ヤマト運輸の人手不足は、人口減少社会の縮図のようです。人口減少社会では家族構成が変化し、共働き・独身・高齢世帯が増えます。これらの世帯は買い物を簡単に済ませたいので、インターネットの通信販売が増えます。それでいて、家にいる時間が少ないので荷物の再配達率も上昇します。

 

 一方で、労働人口は減少します。人を確保するためには、給与水準を上げるしかありません。コスト増が売上増を上回るなら、値上げという話になります。通販増、再配達増、給与増のトリプルパンチで、宅配業は人口減少社会の洗礼を受けました。

 

 これより早く影響を被ったのは百貨店です。百貨店の主たる顧客は少数の富裕層でなく多数の中流層です。中流家庭が少し高級な買い物をして楽しむ、それが百貨店のビジネスモデルでした。

 

 しかし、労働力不足で女性や高齢者の就労が進むと、買い物でゆとりを楽しむ中間層が激減しました。そのため、業績が悪化した百貨店は、ビジネスモデルを転換し、フロアの全部または一部にテナントを入れています。

 

 この傾向は特に地方で顕著です。それは、地域のシンボル的な百貨店が軒並みダメになっているのでもわかります。地方は首都圏に比べ経済力が弱いうえ、人口の減少スピードが何倍も速いからです。

 

 人口減少社会では社会構造が変化します。自社のビジネスモデルやマーケティング戦略は大丈夫か? 今一度確認することが重要です。今日明日で目に見える変化はないでしょうが、「気付いた時には手遅れ」では困ります。

 

 政府の「働き方改革実現会議」で、残業上限月60時間などが話あわれていますが、基本方針は長時間労働の抑制です。労働人口減少を長時間労働で補わせないルール作りです。

 

 ゆえに、賃金は確実に上昇していきます。人を多く使うビジネスは、現行モデルでは立ち行かなくなります。大きな転換が必要です。一つの表れが、コンビニやファミリーレストランの24時間営業の廃止、百貨店や家電量販店の正月三が日の営業取り止め、営業時間の短縮、定休日の復活などです。

 

 また、賃金が上昇すれば、アウトソーシングが増えます。たとえば、給与計算や社会保険手続などの事務仕事は、多少非効率でも社内でやったほうが安かったのですが、人件費が上昇すればコストが逆転するでしょう。専門性が高いほどその傾向が強いと思います。

 

 さらに、IT化も進みます。システム導入は、システム投資金額と人件費削減金額との比較で決まりますが、人件費が上昇すればその分投資効果が上がるからです。従来ならIT化を見送った業務に対しても、IT化する動きが増えると思います。

 

 いかに自社の労働生産性を上げられるか。一朝一夕には改革できませんから、常に継続して取り組むべき経営課題です。

優れたビジネスリーダーの条件

 私は組織上、人は3つのタイプに分かれると思っています。Aタイプは、受け身の人です。与えられた仕事は真面目にやりますが、自らが考えて主体的には動かないタイプです。

 

 Bタイプは、自分に期待される役割がわかっていて、一つ一つの指示がなくても必要な仕事をこなせる人です。要領がよく頭の回転も速いです。部門のエース的な存在です。

 

 Bタイプは優秀な存在ですが、その大半は自部門という枠にはまっています。自部門を良くし、自部門の業務を安定させることに満足しています。所属部門の領域を超えた課題を、積極的に解決しようとはしません。

 

 その結果、プロジェクトの打合わせや担当者ヒアリングでは「そうしたいけど、あの部署が対応してくれない」や「それは、うちの仕事ではない」といったような言葉を聞くことになります。

 

 しかし、重要な経営課題は部門内よりも、部門と部門の間に存在しています。規定されていない課題、分類できない課題、ビジネス環境が変化して合わなくなった課題、それらを解決するためには、部門の垣根を超えて対話や協議することが欠かせません。

 

 Cタイプは自部門だけで解決できない課題も、必要だと思えば他部門を巻き込み、責任感を持って解決できる人です。他部門も動かすのは至難の業です。でも、その解決が会社にとって本当に必要だと思うなら、自分の信念を貫いて突き進みます。

 

 優れたビジネスリーダーは、セクショナリズムで自己の責任を限定しません。より大きな視点で課題を解決するCタイプです。

 

 このようなCタイプは大変希少です。Cタイプの中には「持って生まれた性分がCタイプ」という人もいますが、Bタイプの人が企業の中で成長し、Cタイプに進化するほうが多いと思います。

 

 ある時、打合わせの中で、部門と部門に横たわる重要課題が長い間放置されていたことがわかりました。両部門で少しでも話し合いができていれば、問題にならなかった案件です。

 

 それを知った担当取締役が、ボソッと「おれらの時代だったら、当たり前に話し合いで解決できていたのに、いつからこんな関係になったのかなあ」となげいていたのが印象的でした。Cタイプの人材をいかに社内に増やすことができるかが、ビジネスを大きくするためのカギです。

 

 実際に事をなすためには、ある程度の経験、地位・役職、他部門のキーマンとの人間関係も必要です。一朝一夕でCタイプになれるものではありません。見込みある若手を育成していくことが大切です。

 

 具体的には「場を与える」、たとえば株式上場やシステム構築、業務改革などの全社プロジェクトを経験させると良いと思います。会社全体を考える視野も身に付きますし、プロジェクトを通じて他部門メンバーとの絆も深まります。

正確な経営管理資料が正解とは限らない

 システム構築や業務改革では、大抵、経営管理資料の見直しも行います。あるべき経営管理資料はどのようなものなのか。内容や様式、作成頻度まで含めてディスカッションします。

 

 内容について検討していると、多くの人は正確な管理資料をつくろうとします。「良い資料=正確な資料」という思い込みです。もちろん、正確な資料が悪いと言っているのではありません。でも、何をもって「正しい」と言っているのか。そこが重要なポイントとなります。

 

 以下に仕入リベートの例をあげるので、皆さんも経営管理資料の「正しさ」について考えて見てください。

 

 仕入リベートは小売業や卸売業にとって重要です。仕入単価で販売価格を決めるのが一般的ですが、価格競争が激しい業界だと、仕入先からもらえる仕入リベート込みの単価でないと販売価格を決められない場合もあります。

 

 仕入リベートには大きく2種類あります。1つは仕入単価に事前に決めた料率をもらうリベート。仕入単価100円に対して一律3%もらえるなら、実質の仕入単価は97円となります。

 

 もう1つは、一定期間の仕入数量や仕入先の戦略商品への貢献など、結果を見ないと決まらないスポットリベートです。社内では計算できず、仕入先の支払通知で初めてわかるケースも多いです。

 

 さて、経営管理資料として「売上日報」をつくるとして、仕入リベートをどう取り扱いますか。

 

 1:仕入リベートは反映させない

 2:料率リベートのみ反映させる

 3:料率・スポットの両方を反映させる

 

 この中で会計的に一番正確なのは「3」です。スポットも判明した時点で反映させると売上日報の合計と月次決算の粗利は一致します。

 

 しかし、そもそも売上日報の目的とは何でしょう。全社や店別の売上や粗利の速報です。その結果を翌日や翌週の戦略に反映していくことです。そう考えると、売上日報と月次決算を合わせる必要はありません。売上日報はそこまで正確でなくても良いのです。

 

 では、仕入リベートをまったく反映させないか、料率リベートのみ反映させるかになりますが、これはビジネスモデルによります。

 

 料率リベートを反映させないと、粗利が赤になるような場合は反映しないとなりません。また、仕入単価の粗利情報で翌日の戦略を練ることができるなら、反映させなくても良いでしょう。

 

 つまり、経営管理資料の目的や用途によって正確性の粒度は異なるのです。会計的正しさのみを追求していては本質を見誤ってしまいます。

 

 では、もし価格競争がし烈で、スポットリベートまで粗利に反映させないと状況がつかめないとしたらどうするか。その場合は確定した段階で実績金額をいれるのではなく、見込みを係数化して日次で反映していくのです。

 

 そのほうが経営管理資料として有益ですし、システムはシンプルな機能となります。

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