責任感が強すぎる管理職に伝えたい2つの話

責任感が強すぎる管理職に伝えたい2つの話

 責任感が強いことはとても良いことです。無責任な人が増えている中、責任感が強い人は貴重な人材です。実際、そういう人は組織の中での出世も早いでしょう。

 

 しかし、せっかく管理職になったのに、その責任感が空回りしている人をよく見かけます。空回りしているので、さらに責任を感じ、ますますおかしくなっていく・・・負のスパイラルです。

 

 どうすれば、このような状態を脱することができるのか? 参考になる話を2つしましょう。

 

 1つ目は「ホウレンソウ」についてです。

 

 責任感が強すぎる人は、結果に固執するきらいがあります。もちろん結果を出すことは大事です。どこかのCMではありませんが、結果にコミットできるビジネスリーダーは優秀です。

 

 しかし、状況が大きく変わった(違った)ときは違います。早めに自分の上司に報告を上げて対応策を考えなければなりません。

 

 それにも関わらず、責任感が強すぎる人は「与えられた仕事だから、自分や部下だけで何とかしよう」とします。

 

 上司に報告せず、判断を仰がない行為は、組織人として「大幅な減点」であることを理解しておくべきです。「状況判断ができない人」と評価されます。

 

 仕事とはある意味、責任分担です。そこには「完遂責任」と「報告責任」の両方の意味があります。責任感が強すぎる人は、「完遂責任」に重きを置きすぎているのです。

 

 2つ目は「仕事を教えること」についてです。

 

 管理職になったばかりだと、まだ部下が育っていないので、自分自身がプレイヤーを兼務することが多いです。

 

 しかし中には、いつまでたっても仕事を手放せない人、部下に落とせない人がいます。「自分しかできない」「自分がやったほうが早い」などの理由から、仕事を抱え込むのです。

 

 ある本によると、人に仕事を教えるためには、その仕事時間の30倍時間がかかるそうです。1回1時間の仕事なら30時間です。

 

 もちろん仕事内容にもよるとは思いますが、人に教えるということは、それほど根気がいるということです。

 

 仕事を部下に落とさない限り、自分の時間が空くことはありませんし、部下が成長することもありません。

 

 「この仕事は自分にしかできない」という人は、はたしてどこまで時間をかけて部下に教えたことがあるのでしょうか?

 

 教えている間は、自分自身がその仕事をやりながら、その上で、その30倍の時間を絞り出して部下に教える。

 

 管理職は自分が仕事をするのではなく、部下に仕事を任せることだと再認識しなければなりません。

 

 こうしてみると、会社というピラミッド組織の基本は「上は下に仕事を任せ、下は上に報告を上げる」ことだと言うことがよくわかります。

 

 強すぎる責任感で、そのどこかに「詰まり」が生じれば、組織の調子が悪くなってしまいます。管理職だからと気負いすぎず、仕事の風とおしを良くするよう心がけましょう。

 

業務改善・改革は、業務を減らすのが目的ではない

 私の部屋は、決して褒められたものではありません。書類や資料、読みかけのものが散乱しています。

 

 電子書籍のおかげで、いまでこそ実物の本を買うのはめっきり減りましたが、それでも毎月何冊かは増えていきますから、本棚に入らない分は横にして入れたり、下に置いたりです。

 

 ですから、定期的な取捨選択と整理整頓が欠かせません。

 

 しかし、これは本や書類を減らすことが目的ではありません。もちろん不要な本や書類は処分しますが、真の目的は「空間を取り戻すこと」です。部屋や机周りのスペースを空けて、快適性や作業能率を高めます。

 

 本や書類を減らすのはあくまで手段であって、広い部屋ならスペースに余裕があるので、ムリをして捨てる必要はありません。

 

 業務や仕事に当てはめて考えてみると、どうでしょう? 部屋の話と同じだとわかります。

 

 黙っていればやることは増えていく一方ですし、常にやりかけの仕事やしなければならない仕事で、あふれかえっています。ここでも、定期的な取捨選択と整理整頓、いわゆる業務改善や業務改革が必要となるわけです。

 

 その目的は業務を減らすことではありません。真の目的は「時間を取り戻すこと」です。

 

 しかし、実際の業務改善・改革をやっていると、プロジェクトメンバーは業務削減そのものにフォーカスしすぎるきらいがあります。もちろん削減することも大事ですが、もっと「時間をどれくらい解放できるか」という視点が必要です。

 

 業務改革では、私は時間を書いてもらうようにしています。各業務の1回当たりの所要時間、回数から総時間を割り出すのです。そうすることで、優先順位がつけやすくなり、改革の実効性が上がります。

 

 ところで、ここまで部屋の話と業務は共通していましたが、両者の間には一点だけ違うところがあります。

 

 それは、本や書類なら、広い部屋でスペースに余裕がある時は、ムリして捨てる必要はなかったですが、業務の場合は、その人の時間の余裕度に関係なく、業務を削ることを徹底しなければならない点です。

 

 できる限り空き時間を増やす。この積み重ねが間接部門の省人化を押し進め、全社ベースの直間比率の改善につながります。

 

 現場主導の業務改善だと、個人レベルの「時間の取戻し」が目的ですが、経営主導の業務改革では、全社レベルでの「人の取戻し」、直間比率の改善こそが真の目的です。

 

 業務改革では、「人をどれくらい解放できるか」という視点まで高めることが大切です。

新システムを入れたら「利益向上委員会」をつくろう

 情報を「知る・見る」のと、情報を「活かす」のとはまったく意味が違います。せっかく新システムを入れたのに、データや情報を活用していないのなら、売上や利益は増えることはありません。

 

 システムの投資効果には、稼働後すぐに現れるものと、稼働後しばらくしてから現れるものの2種類あります。

 

 前者は「これまで手入力していた業務をシステムが肩代わりする」など、主としてコスト削減です。守りのITとも呼ばれ、安定稼働すれば効果を享受できます。

 

 一方後者は「蓄積したデータを分析して今までになかった販促キャンペーンを打つ」など、主として売上・利益向上策です。攻めのITとも呼ばれ、情報を分析・仮説・トライアンドエラーをしてはじめて効果を享受できます。

 

 攻めのITと言うと、基幹システムとは異なる別システムが必要かと思いがちですが、決してそうではありません。

 

 もちろんITを使って新しいビジネスモデルを立ち上げるのであれば別ですが、そればかりが攻めのITではありません。

 

 普通の基幹システムに埋もれているデータや情報から「何か売上や利益につながるヒントを見つけ、コツコツ実践していくことも立派な攻めのITです。

 

 昔、システムは「I/O」とも呼ばれていました。Input(入力)とOutput(出力)の機械だからです。

 

 システムが高度化し、システムの守備範囲が拡大したことで、インプット量は膨大になりました。しかし、それに比べるとアウトプットの活用は全然増えていません。

 

 汎用パッケージには、お決まりの帳票や出力画面しかありませんし、ユーザー側も、以前の経営管理資料があれば、たいがい満足しています。

 

 売上や利益を本気で増やしたいなら、もっと能動的に情報を活かすことを考えなければなりません。

 

 情報を見る・チェックするだけに慣れ親しみ、情報を探したり活用したりするアクションが圧倒的に不足している現実を変える必要があります。

 

 そのためにお勧めしたいのが「利益向上委員会」です。現場がよくわかっている人を少数精鋭で集め、新システムのデータを見て、仮説を立て、検証していくチームをつくります。

 

 そこで話し合われるテーマの多くは、マーケティングや販促キャンペーンになりますが、業務効率やコスト削減に関しても新たな発見があるでしょう。

 

 でも、利益向上委員会を組成したからと言って、売上や利益がすぐ増えると思うのは早計です。そう簡単にビックアイデアが見つかるなら、誰も苦労しません。

 

 しかし、大切なのは売上や利益こだわって意識的に知恵や気付きを出し合う場があり、考える時間があることです。

 

 ビジネスは同じことを繰り返していても、売上や利益など減っていく一方です。それに逆らう強い仕組みが必要です。

経営が弱体化する間違った原価管理

 実績より高い目標値を設定し、その達成に向けて努力することは良いことです。ビジネスでも個人でも改善を促します。

 

 ところが、目標値と実績に差異があるからと言って、目標値を下げる行為はどうでしょう? 実績は改善せず、何をやっているのかわかりません。

 

 実は、原価管理の世界ではこのようなことが頻繁に行われているのです。いったいどういう事でしょうか?

 

 原価管理では「予定原価」が目標値であり、「実際原価」が実績です。その差が原価差異となります。

 

 予定原価や実際原価は、原価管理だけでなく会計決算にも使われています。期の途中では予定原価で数字を把握して、期末に最終の実際原価で決算を締めます。

 

 そのため原価差異が大きいと、期の途中では「今期は利益が1億円になりそう」と予想していたのに、期が終わってみると「利益が5千万円にしかならなかった」ということが起こるわけです。

 

 これは経理部長にしてみたら大変です。銀行には「利益は1億円でます」と言っていたのに、フタをあけて見たら半分だったのですから。上場企業ならば業績予想を発表しているので尚さらです。

 

 そこで「決算が混乱しないためには、差異を出ないようにするしかない」として、予定原価を当初の1.2倍にするなどの係数掛けが行われたりします。

 

 確かにこうすれば予定原価と実際原価の差は縮まり、決算の着地見込みは大きく狂わないようになります。

 

 しかし、原価管理の本来の目的はコスト削減です。生産の目標値である予定原価を、会計の都合だけで変えるのは良くありません。さらに、営業が予定原価を売価の見積りに使っているならば、販売価格もおかしくなってしまいます。

 

 原価差異が生じる一番の原因は、予定生産量と実際生産量の違いです。

 

 予定では100個つくるはずだったのに、実際は半分の50個しか生産しなかった。そうすると固定費が100万円だとして原価は1万円(100万円÷100個)から2万円(100万円÷50個)にアップします。

 

 裏を返せば、予定生産量と実際生産量の数字がどれくらい乖離するかを押さえておけば、差異が出ても決算の着地はかんたんに予測することができます。

 

 原価差異を怖がる必要は何もないのです。予定原価に係数掛けをして目標値を変えてしまうような行為をしないですみます。

 

 ただし、これには原価計算の仕組みの見える化が前提です。何十年も前につくった古い原価計算制度で、中身がブラックボックス化しているなら、予測することはできません。

 

 原価管理のためには、原価計算の精緻化・見える化、定期的なパラメータ(予定生産量の数字等)の更新が不可欠です。

 

 もし係数掛けで調整しているなら、経営が弱体化しないよう、原価計算改革に早めに取り組むべきです。

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