システム投資効果を正しく測定する方法

システム投資効果を正しく測定する方法

 「新システムを入れると、一体いくら利益が増えるのか」・・・この考えは、システムを決める上で、とても重要です。現場にしてみればシステムは道具ですが、経営にとっては投資です。投資である以上、そのリターンがすべてです。

 

 そこで、次期システム更新に当たって、経営陣に説明するためにシステムの投資効果分析を行うわけですが、その際、効果をまちがった金額で測定するケースが少なくありません。

 

 経営者の「一体いくら利益が増えるのか」という言葉を文字どおり解釈し、現行システムと新システムとの差分だけを、効果と考えがちです。

 

 たとえば、新システムを導入すると「営業の生産性が10%アップする」「書類が電子化するので紙が減る」など、現行システムからの改善点だけを、金銭的価値に置き換えて、投資効果を測ります。

 

 これは、システムを初めて導入する業務分野に対しては問題ありません。正しい測定です。しかし、システムを現在利用している業務分野に対しては正しくありません。なぜなら、現行システムの更新部分を評価していないからです。

 

 システムには寿命があります。使用しているOSやプログラム言語などの技術的な問題、事業成長に伴うデータ量の問題、ビジネス変化に伴う機能改修の限界など、現行システムをずっと使用し続けることはできません。

 

 次期システムの更新は、たとえ現行システムとまったく同一の機能であったとしても、この耐用年数を延長する価値があるわけです。

 

 これを入れずに効果測定するとどうなるか? 基幹システムなど大型システムになればなるほど、効果が過少になります。投資予算と効果の採算が合いません。

 

 そのため、ムリに差分効果を膨らませたり、採算が合わずにシステム更新が却下・保留になったりします。次期システムの正しい効果を算出するためには、差分だけでなく現行の延長分も含めることが大切です。

 

 では、延長分の効果をどのように測定したら良いのでしょうか? それには、もしシステムが1ヵ月止まったらどうなるかを想像してみるのが早いでしょう。

 

 業務はどうなるか? 売上はどうなるか? その状況を金銭的に置き変えてみると、システムを安定的に延命させる価値がわかります。

 

 しかも、次期システムが安定稼働するには、検討から含めて数年を要します。現行システムの耐用年数に十分な余裕があるうちに、取り掛からなければなりません。

 

 正しい投資効果とその必要性をきちんと説明できれば、経営の理解を得られます。これらは経営企画部や情報システム部の仕事ですから、がんばって下さい。

なぜ基幹システムは更新しなければならないのか

 次期システムの打合わせをしていると、たまに現場から「今のシステムはまだ使えるのに、何で新システムにするの?」という質問が出てくることがあります。

 

 基幹システムを替えるのは、企業にとって大きな投資です。リスクも伴います。さらに情報システム部門や現場部門に相当な業務量が発生します。わざわざ新システムにする理由を知りたいのも当然です。

 

 とかくシステムは永久機関のように思われがちですが、そうではありません。システムにも寿命があります。

 

 企業が成長したり、ビジネスの内容や形態が変わったりして、基幹システムが合わなくなることも更新理由の一つですが、最大の理由は「保守切れ・保守不能」です。

 

 一口にシステムの保守切れと言っても、標準パッケージ製品のサポート終了だけではありません。それを支えるサーバーOS、ミドルウェアなどのソフトウェア、サーバー本体やPOS端末などのハードウェアの場合もあります。

 

 また、保守切れは受託開発にもあります。システムを開発した会社が解散したり、開発会社の担当者が退職したりすると、保守契約が突然更新できなくなったりします。

 

 保守不能とは、機能を追加・改修しすぎた結果、システムが複雑になりすぎて、保守したくてもできなくなった状態です。最悪のケースだと「どこかシステムをいじると、ダウンして二度と再稼働できなくなるかもしれない」、そんな話すらあります。

 

 保守切れ・保守不能になったとしても、今現在、システムが正常に動いているなら、すぐに何か起きるという確率は低いです。ですから「今のシステムを使い続けたら」という素朴な意見が出てくるのもわかります。

 

 しかし、システムは「99%正常だったら大丈夫」というシロモノではありません。

 

 プログラムが1行バグっていたら、あるいは想定外のデータが入力されたら、突然、誤作動やシステムダウンするかもしれない・・・そういうリスクが常につきまとう精密機械です。

 

 仮に基幹システムが半年もの間、稼働しなかったらどうでしょう? 業務は混乱し、業績はガタ落ちになるでしょう。さすがに、システムがダメでつぶれたという会社は聞いたことがありませんが、システムが原因で業績が低迷した会社は少なくありません。

 

 また、保守切れや保守不能の被害は、それだけではありません。サポート切れしたWindowsXPを使い続けて、個人情報の漏えい問題を引き起こしたら、取引先や株主から重過失で責任を問われるかもしれません。

 

 今、目の前のシステムが普通に稼働しているからといって、保守切れの状態を軽視するのは間違いです。特に基幹システムは、経営上のリスクが非常に高いと言えます。

 

 次の基幹システムを構築するためには、ゆうに1年や2年はかかります。時には予定どおりいかず、稼働遅延することすらあります。保守切れという空白期間をつくらないよう、次期システムには早めに取り組みましょう。

仕事の見える化は三次元・四次元にして考える

 まずは、次の例文を読んでみて下さい。

 

(例)ネコが鳴いた。

 

 何の変哲もない文章ですが、どんな情景が浮かびましたか? ちなみに私はサザエさんの家の庭で、タマが一声鳴いた風景です。それでは、次の例文ではどうでしょう?

 

(例)50匹のネコが1時間以上、ひっきりなしに鳴いた。

 

 とんでもない事態が起きていそうです。いったい何があったのか・・・。

 

 業務改革で一番大事なことは、現在の業務実態を把握することです。何を置いてもこれがないと始まりません。

 

 しかし、これが上手くできる会社は少ないです。

 

 社内で作成した業務フローやマニュアルを見せていただくと、ほとんどが二次元的・平面的なのです。先の例で言えば「ネコが鳴いた」です。

 

 たとえそれが正確なフローであったとしても、業務の流れを描写しただけでは、見る人に実態は伝わりません。

 

 「50匹のネコが1時間以上鳴いたのか」、あるいは「1匹のネコが朝、ひと鳴きしたのか」では、まったく状況は異なります。

 

 ですから、自著「お金をドブに捨てないシステム開発の教科書」でも書きましたが、業務を調査する際は、数量や数値を書くことがとても大切になってきます。

 

「伝票を月100枚、手入力していて、1枚入力するのに平均10分かかる」

「社内問合わせが月100件(50時間)あり、そのうち80%が営業部」

 

 その業務の回数や頻度、1回当たりの所要時間、年間時間などの数字情報を入れ込みます。

 

 私はこれを「業務を三次元にする」と言っています。平面的なフローや業務記述書に数字を盛り込むことで、業務を立体的に見せるのです。

 

 これだけでも、見える景色はだいぶ変わりますが、さらに改革する上では、「業務を四次元で見る」ことが大切です。

 

 「将来、この業務はどれくらい増えそうか」、あるいは「3年前は、問合わせは月1000件だったから、今はだいぶ減ったね」など、過去や未来の時間軸を入れて、今の業務を捉えます。

 

 そうしてはじめて、「これは大変だからシステム化しよう」、「昔よりはだいぶボリュームが減ったから、今のままでも問題ないか」と言うような判断ができるようになるのです。

 

 「50匹のネコが1時間以上、ひっきりなしに鳴いた」という話も、1年前は「1000匹のネコが一日中鳴いていた」というのであれば、ずいぶん話が違って聞こえてきます。

 

 仕事の見える化は、業務の流れやその内容をたんに描写するのではなく、数字をたくさん入れて三次元にし、時間を意識して四次元で考えるようにしましょう。

売上が変わる!!収益基準がもたらすインパクト②

 収益認識に関する会計基準(案)の説明の続きです。

 

 前回の①では、「売上が減るケース1(返品調整)」、「売上が減るケース2(入会金)」、「税込処理はできなくなる」、という売上金額が小さくなる論点についてお話しました。

 

 今回は、売上を認識するタイミングがずれる論点についてです。新しい収益認識基準は、5つのステップからなります。「契約の識別」「履行義務の識別」「価格の算定」「価格の配分」「収益の認識(履行義務の充足)」です。

 

 このうちタイミングの話は、5つめの「収益の認識(履行義務の充足)」になります。

 

 

 現在の実務では、出荷基準は検収基準と並びスタンダードな売上基準です。「出荷=売上」だと、事務処理がシンプルですから、多くの企業で採用されています。

 

 当初から「出荷基準が認められなくなるのでは?」と心配されていましたが、国内販売で、出荷から検収までの日数が短ければ、許容されることになりました(指針案97)。短い日数とは、取引ごとに合理的と考えられる日数です。

 

 実はこれは微妙な話です。仮に日数を3日以内なら出荷日で売上、4日過ぎたら検収日で売上というように、ダブルスタンダードになると、それを管理する仕組みは、かえって面倒になります。

 

 商品の99%が3日以内なら出荷基準で問題ないでしょうが、80%だと期末日に近い案件をすべて確認する作業が出てくることになりそうです。

 

 

 よくテレビショッピングで「今なら月々何回払いで、金利は当社が負担!」とやっていますが、信販会社を使わずに自社で割賦販売をやっている会社は、割賦金の入金日にあわせ、売上を分割して計上できています(割賦基準)。

 

 これは税金やリスクを考えて、あえて売上を遅く認識しているわけですが、新基準ではこのような処理が認められなくなります(基準案36・37、指針案14)。商品を渡した時点で全額売上です。

 

 

 業種によっては、お客さんの都合で、商品を出荷せずに自社の倉庫で預かるという慣行があります。

 

 お客さんから倉庫料がもらえるケースもあれば、こちらからお願いして、お客さんにまとめ買いしてもらって、必要に応じて出荷するようなケースもあります。ケースバイケースではありますが、預り在庫は基本、売上計上できています。

 

 これに対して、新しい基準では次の4つの要件を満たす場合のみ、売上となります(指針案77~79)。

 

 ・商品を出荷せず預り在庫となる合理的な理由があること

 ・倉庫内や会計・システム的にも区分管理できていること

 ・いつでも商品を得意先に発送できる準備が整っていること

 ・預り在庫を他に使い回しできないようになっていること

 

 この4つの要件は、上場企業であれば、それほど厳しいとは思わないかもしれません。従来から言われてきた事であり、あいまいだった要件が明確になっただけと言えます。

 

 

 さて、収益認識に関する基準案のうち、気になる点を抜粋して説明してきましたが、変更点は大小含めて、まだ色々ありますので、関係ある方は原文に当たることをお勧めします。

 

 なお、適用時期(案)は、影響の大きさを考慮して、2021年4月1日以降としています。ただし、IFRSは2018年1月1日からなので、それに合わせ、日本も2018年4月1日からの早期適用を考えているようです。

 

 本適用と早期適用の間が3年もあるのは異例です。「世界を考えて早くしたいけど、システム等の実務対応が大変なのもわかるので・・・」というASBJの気持ちが伝わってきます。

売上が変わる!!収益基準がもたらすインパクト①

 先月、収益認識に関する会計基準(案)がASBJ(企業会計基準委員会)から公表されました。企業にとって、売上の金額、売上を計上するタイミングが変わるのは、業績に直結する重要な話です。

 

 さらに売上の認識が変わるということは、それを処理する販売管理システムや業務の仕組みの変更や改修も伴います。ですので、そういう点も含めると、この基準は、ここ10年くらいで最も重要な会計基準となります。

 

 まだ公開草案の段階ですから、基準の内容は変わる可能性がありますが、新基準で売上がどうかわるのか? ここでは会計が専門でない方でも、興味を引きそうなポイントに絞って、説明したいと思います。

 

 なお、この話が対象となるのは上場企業(上場準備企業を含む)です。中小企業は強制ではありませんので、ご安心ください。

 

 

 「60日間返品保証!」など、返金保証、返品保証をつけて販売しているケースが小売りを中心によくありますが、これらのマーケティング手法を採用していると、売上を減額する必要があります(指針案84~88)。

 

 たとえば、価格1,000円の商品を売っていても、予想返品率が10%なら、売上は1,000円ではなく900円となります。従来は、返品があった時に売上の取消しをしていたわけですが、新基準では売上時にそれを見越して売上金額を減額しなければなりません。

 

 これは、販売管理システムや仕組みへの影響が大きいでしょう。顧客に出すレシートや請求書は1,000円なのに、会計上の売上は900円ですから、請求と売上を別々に管理する必要があります。

 

 

 入会金という制度は、経営的にとても良い仕組みです。最初に現金は入りますし、すぐに売上を立てられます。

 

 しかし新基準では、すぐに売上を立てられなくなります。入会金の目的は、将来受けるサービスに対する前払いであるとして、サービス提供に合わせて売上を立てなければなりません(指針57~60)。これは返金義務がない入会金も同じです。

 

 入会金ビジネスの会社は、会員獲得時の売上が一気に減ります。また売上をサービスに合わせて計上していくシステムや仕組みが別途必要となります。

 

 

 現在、消費税等の会計処理は、「税抜方式」と「税込方式」の2つが認められています。

 

 新基準では、第三者のために回収される額(たとえば、消費税や預り金等)を売上とすることは認められなくなるので、消費税等の金額を含めて売上とする税込方式は採用できなくなります(基準案44)。

 

 販売管理システムでは税込方式を採用し、決算をつくる際に、会計システムで一括税抜処理している会社については、最終的に税抜きされているので問題はなさそうですが、これを機に、販売段階からの税抜処理化が進むでしょう。

 

 次回に続く・・・

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