成果が出る業務改革は何が違うのか?

成果が出る業務改革は何が違うのか?

 業務の生産性が悪いと感じている人は多いでしょう。ビジネスは生ものです。ビジネスの変化に合わせ、システムを継ぎ足し修正したり、その場しのぎの業務を実施したりを続けていれば、かならず生産性は悪化していきます。

 

 賢明な人なら誰しも、一から見直したくなるものですが、直ぐには着手できません。問題意識が社内で広く共有され、システム更新時期が重なるなど、タイミングが合ってはじめて業務改革(BPR)プロジェクトが発足します。

 

もしそれが全社レベルの業務改革であれば、会社の将来10年を左右する一大プロジェクトです。必ず成果を上げなければなりません。

 

 業務改革に決められた手順はありませんが、だいたい「①業務の調査・洗い出し」「②問題点の整理」「③課題の抽出」「④新業務の立案」のような内容・順番です。実際、この手順は業務や仕組みを変えるのに、とても理に叶ったやり方だと思います。

 

 しかし、手順どおりプロジェクトを進めたからと言って、必ずしもプロジェクトが上手くいくとは限りません。中には、期待するほど業務が改善しないプロジェクトもあります。

 

 それは、なぜか? メンバーの力量が足りないのでしょうか? そうではありません。

 

 成果の出る出ないの分かれ目は「②問題点の整理」にあります。ここで、問題を認識する視点が狭いと成果は上がりません。

 

 視点が狭いとは、「この業務に時間がかかっている」「この業務が大変」「この業務の時に、あの情報が見れないのがネック」など、業務の問題というより「操作・オペレーション」に近いものです。

 

 そのような視点で捉えた問題点は「操作時間の短縮」「操作性の改善」という局所的なものになってしまうので、大きな改善は望めないのです。

 

 BPRで大事なのは、「視野を広げる」「ゼロベース」で考えるということです。しかし、視野を広げることは容易ではありません。ただ「ゼロベースで考えましょう」と言ってみても、大半はスローガンで終わってしまいます。

 

 では、どうすれば良いのか?

 

 自分(自部門)以外の他人(他部門)の業務を知る。自分(自部門)が使用していない他システムの理解を深める。これにつきます。

 

 人は自分が認識できている範囲でしか、モノを考えられません。ほかを知ることではじめて、自分の業務・システムのあり方が見えてきます。

 

 ですから、「①業務の調査・洗い出し」では、他者・他部門の業務・システムをお互いにしっかり共有します。そうすれば、より大きな視点で、問題を捉えやすくなります。

5分でわかる!伝統的な管理会計

 管理会計は、財務会計と違い税法などの法律の縛りが無いため、企業が好きにして良いものです。

 

 しかし、人は「自由にして良いよ」と言われれば、逆に困惑します。どう考えればよいのか? どうしたら経営に役立つのか? 深く考えすぎてしまうようです。管理会計では、まずはやってみる。その上で調整していくことが大事です。

 

 伝統的な管理会計は、次の3つの要素でできています。

 

 

① 月次決算

 月次決算を財務会計と勘違いしている方も多いですが、月次決算は管理会計の一つです。財務会計上は、年度決算(上場企業は四半期決算も)だけあればよく、月次決算は会社が任意に作っているにすぎません。

 

 月次決算を財務会計として捉える人は、月次決算に1円までの正確性を求めようとします。一方で、管理会計として捉える人は、月次決算の精度よりスピードに主眼を置きます。

 

 経営に役立たせたいのなら、月次決算は早いに越したことはありません。考え方一つで作り方は大きく異なってきます。

 

 

② 部門管理と配賦

 部門管理は部門損益を見ることが目的です。各部署の管理者にとっては必要な数字です。しかし、費用の中には「どこの部署の負担か」、明確にはわからないものもあります。

 

 テレビに企業広告を出したら、それはどこの事業部の売上に貢献するかは判別できないでしょう。このような費用を「全社費用」または「部門共通費」と言いますが、これをどうするかが管理会計のポイントです。

 

 一つの方法は「配賦」です。企業広告の例で言えば、各部門の売上高の比率で按分するなど、何らかの基準を設けて費用を各部門に割り当てます。管理会計で部門管理と配賦はセットで考えるのはそのためです。

 

 ただし、配賦はあくまで仮で部門に割り当てたにすぎません。配賦を多用しすぎた数字は、経営実態を表わしていないことがあります。配賦の使い方や使いすぎには注意するようにしましょう。

 

 

③ 予実管理

 実績だけの数字を見ても経営的は判断がつきません。あらかじめ予算を策定し、予算と実績を比較してその「予算差異」を知ることで、経営に活かすことができます。

 

 一口に予算差異と言っても、予算の構成によってさまざまです。全社予算か部門予算か、年度予算か月次予算か。

 

 全社予算か部門予算かは、組織の集計単位のことであり、これは「部門管理」と連動しています。一方、年度予算か月次予算かは、期間の集計単位のことであり、これは「月次決算」と連動しています。

 

 つまり、伝統的な管理会計は、月次決算・部門管理・予実管理がそれぞれ単独で成立しているのではなく、3つの組み合わせです。経営に役立つ管理会計は、これらがバランス良く機能しています。

AI・IoT・RPAは魔法の箱?

 今年初めのコラムで「2017年はAI元年になるかもしれない」という記事を書きました。

 

 家庭用では、スピーカーの形状をした音声アシスタント機器が、各社から一斉に発売されるなど、日常の風景が変わり始めています。

 

 ビジネスの世界も、AIにIoTやRPAを組み合わせた形で、業務改革BPRが進んでいます。まだ局所的な実戦投入という感じですが、近いうちに主力になるのは確実でしょう。

 

 しかし、この現象を見ていると、20年前に起きたERPの狂騒を思い出し、一抹の不安を覚えます。

 

 当時は部門システムが当たり前の時代、全社統合システム(ERP)が唱えられ、海外から様々なパッケージシステムが日本にやってきました。

 

 私はちょうどその頃、監査法人をいったん離れシステムの世界にいたので、英語のマニュアルを日本語に訳する仕事にも駆り出されました。英語が得意でないので、苦労した記憶があります。

 

 「全社統合」という新鮮なコンセプト、「ERPに合わせればベストプラクティス(業務改革)が実現できる」というセールストークも相まって、ERPに対する大きな誤解が生じました。

 

 ERPは会社を変えてくれる魔法の箱・・・

 

 企業はERPに飛びつき、ビジネスとの適合分析、業務改革や社内調整を疎かにした導入が横行し、システムが本番稼働できない事態が頻出しました。

 

 ERPと言ってもシステムの一つにすぎません。まず先に、会社をどうしたいのか、そのための仕組みや業務はどうあるべきかを企業自らが考え、それに最適化なシステムを選ぶ。

 

 この順番は変わらないですし、自ら思考するフェーズが無くなることは決してありません。

 

 では、AI、IoT、RPAはどうでしょうか?

 

 AIは、勝手に正解をくれるわけではありません。深層学習(ディープラーニング)をさせた、その結果を答えとして回答します。

 

 ですから、知り合いのAIベンチャーの経営者は、「AIに何を学習させるかが肝であり、その題材選びがノウハウだ」と言っていました。

 

 何の業務をAIに判断させるか、そのためのサンプル・事例は用意できるか、それを読み込ませ正答できるか、一定の正答率に達成するか・・・など、検証・検討しなければならないことはいくつもあります。

 

 IoTは、モノのインターネットと言われていますが、簡単に言うとモノにセンサーをつけ、感知したらデータを飛ばす仕組みです。

 

 さまざまなセンサーがありますし、条件式(温度25度以上になったらメールとか)も入れられるので、活用はアイデア次第です。

 

 何の業務をどのように人からIoTに置き換えるのか、あるいは、これまで無かった情報をIoTで取得してビジネスに活かすのか、自ら考えなければなりません。

 

 RPAは、人がパソコンでやる単純作業を自動化するツールです。エクセルファイルのデータを、基幹システムに転記するとか、パソコン上の定型・リピート作業に向いています。

 

 RPAの導入コスト、プログラム設定の手間を考えると、業務対象はかなり大量のリピート作業に限られそうです。

 

 ERPと同様、AI・IoT・RPAは魔法の箱ではありません。自らがしっかり考え、正しく活用して生産性アップにつなげましょう。

システムには稼働後に成長するタイプがある

 「システムは稼働したら終わり」・・・これはシステムによくある誤解の一つです。

 

 たしかに、システムは稼働させるまでがとても大変です。どのようなシステムにするか、どのパッケージを買うか、業務要件・パラメータ設定をどうするかなど、稼働までの検討や決断がシステム構築の肝です。

 

 しかし、システムの中には選定・導入作業はそこまで大変ではなく、むしろ稼働後から本番となるタイプがあります。モジュール名で具体的に言うと、ワークフローシステム、BI(ビジネスインテリジェンス)ツール、SFA・CRMなどです。

 

 ワークフローシステムは、稟議・経費・報告書などの申請・承認手続きを電子化するシステムです。

 

 これだけですと単なる業務効率化にすぎませんが、ワークフローシステムを経由することで、稟議・経費・報告書などの内容はデータとして蓄積されます。

 

 このデータベースを上手に活用すれば、紙の時代にはなかった情報共有化とスピードある意思決定ができるようになります。

 

 BIツールは、データ分析専門のツールです。各種システムに散らばっているデータを一か所に集め、あらゆる角度で経営分析することが可能です。

 

 言い方を変えると、BIは使い方次第で金を生む卵にもなりますし、買ったはいいが誰も使わなくなったら、宝の持ち腐れにもなりえます。

 

 つまらないありきたりのKPI(重要業績評価指標)ではなくて、自社の経営や業務の改善に直結する分析ができるかが活用のカギです。

 

 SFA・CRMは、営業支援や顧客管理のシステムです。営業担当者別の行動予定・アクション履歴を管理したり、顧客や案件別のコンタクト履歴や購買履歴などを管理したりします。

 

 SFA・CRMは、営業担当者別、顧客別、案件別に情報を一元管理できているので、状況確認するのに役立ちます。でも、そこまでしか活用しないのは、非常に勿体ない話です。

 

 実際の受注高と訪問回数から次月はどの得意先に訪問し、何を売り込むかを考えたり、購買履歴や反応度からDM対象を絞り込んだり、セールスレターを改善したり、やろうと思えば営業生産性やマーケティング戦略まで突っ込んで活用できます。

 

 これらのシステムの特長は、情報を意思決定に活用できるよう分析・可視化する点にあります。

 

 ですから、システム上で一度設定して終りではなく、実際に取得した情報を使ってPDCAを回してみて、情報の取り方や見せ方を調整していくことが大切です。

 

 情報システム部は導入までが仕事、現場部門は与えられた使い方しかしないとなると、システムの投資回収はいつまで経っても図られません。

 

 これら3つのシステムに関しては、どこの部署が責任を持って稼働後の高度利用を担うのか、決めておく必要があります。

仕組み改革者の責務

 「知識労働者」は、ピーター・ドラッガーによって提唱された言葉です。肉体労働ではなく知識や情報を駆使して付加価値をつくる労働者です。

 

 ドラッガーの言葉を借りれば、システムや業務改革などのプロジェクトメンバーは「知識労働者」です。普段の日常業務は違う場合もあるかもしれませんが、少なくともプロジェクト業務は知識労働だと言えます。

 

 知識労働者の責任は非常に重いです。別に高尚な仕事をしているとか、そういうことを言っているのではありません。知識労働者の決めたことが、他の人、企業で言えば全社員に多大な影響を与えているからです。

 

 たとえば、内部統制を設計して、ある申請業務の承認を何重にもしたとしましょう。そうすると、現場ではその申請業務を行う度に多段階承認が発生します。仮に年1,000件発生しているなら、10年で10,000件です。承認ルールを決めるのはほんの一瞬ですが、実務は10年に渡り、膨大な量になります。

 

 もう一つ例をあげます。コンビニが提供するコーヒーを飲んだことはあるでしょうか? 登場した時は衝撃的でした。「100円でここまでおいしいコーヒーが買えるのか」と思った次第です。

 

 セブンイレブンはセルフ方式ですが、デザイン的にコーヒー機器の「R(レギュラーサイズ)」と「L(ラージサイズ)」の区別がわかりづらく、よく押し間違えがあったのでしょう。

 

 独自に「小さい」「大きい」の手書きのステッカーを貼っている店が、多数散見されました。いくらデザインが良くても機能性が悪ければ意味がありません。一つのデザインが、たくさんの店やお客に迷惑をかけた事例です。

 

 このように、知識労働者の間違った判断は、多大な非効率やムダを生み出します。ひいては企業の弱体化を招きかねません。

 

 システム構築や業務改革(BPR)などにたずさわる人は、このことを強く自覚する必要があります。「自分が想定している以上に、自分が決断することは周りに影響を及ぼす」と。

 

 その上で、仕組み改革者の責務を果たすために、次の3つのことを心がけると良いでしょう。

 

 1つ目は、多軸の視点を持つこと。自分の所属部門や専門以外の分野のことも積極的に情報収集し、学ぶこと。専門外の知見を広げない限り、全社最適化のアイデアは浮かびません。

 

 2つ目は、一生懸命考えること。私はよく「死ぬ気で考えましょう」と言います。アイデア一つ、決断一つが、現場にどれほどの影響を与えるかを想像できれば、今ここで必死に考える価値がわかるはずです。

 

 3つ目は、まず試してみること。初めての試みをいきなり全社展開したり、億単位のシステムをすぐに導入したりすることは無謀です。時には小さく始めて試す、プロトタイプを作って検証してみる、そのような慎重さが大切です。

 

 知識労働者は、文字通り「頭を使うこと」が仕事です。少しでも皆が楽できるように、無意味な作業が発生しないように、知恵を絞りましょう。

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