会計とITが融合した未来

会計とITが融合した未来

  「金融」と「IT」が融合したフィンテック(FinTech)。これまでにない新しい金融サービスを生み出しています。

 

 一つは、仮想通貨・モバイル決済などの決済方法の多様化。仮想通貨は決済手段というより投機的な意味合いが強くなってしまいましたが、そもそもは決済手段としての仕組みです。

 

 ほかには、クラウドファンディング(自己資本)、トランザクションレンディング(融資)などの資金調達の多様化。これまでは証券市場や銀行の独占業務だった金融取引が、変わりつつあります。まさに革命とも言える変化です。

 

 では、次に「会計」と「IT」が融合すると何が起きるのか、興味があります。来たるアカウンテック(勝手な仮称)の未来予想図について、少し考えてみました。

 

 

違算が無くなる

 当社と得意先や仕入先とでは、業務システムが異なります。ですから、取引が大量にあると、数量違い、品違い、単価違い、日付違いなどが起こります。これを違算といいます。

 

 違算があると、どの仕入明細が合っていないのか、当社と仕入先のどちらが正しいのかを調査します。発注書や納品書をひっくり返したり、仕入先担当者に電話して事実を確認したりします。

 

 もしパブリックな取引保証システムができたりすると、違算が無くなるかもしれません。ブロックチェーン技術を応用すれば改ざんも防止されます。さらに、業界ごとに共通の品目マスタまで持つと、すごいことになりそうです。

 

 

仕訳入力が無くなる

 経理担当者による「手入力」が完全に無くなるかもしれません。

 

 すでに、クラウド会計ではAIを使って、一部実現しています。銀行から通帳データを、クレジットカード会社から取引データをもらい、仕訳化する仕組みができています。

 

 いち早くクラウド会計を取りいれた税理士事務所の先生が、「これからは簿記よりシステムがわかる人間が必要だ」と言っていました。

 

 そのとおりだと思います。簿記を意識しない世界がもうすぐやってきそうです。

 

 

監査・会計士が無くなる

 会計監査は、一言で言えば、財務諸表がほぼ合っていることを保証する制度です。取引の実在性が保証され、仕訳入力がAI化されたら、財務諸表は間違いようがありません。

 

 網羅性の観点はあるものの、監査のあり方は大きく変わります。AIで無くなる職業に、会計士が上位なのも合点がいきます。

 

 

税務署・税理士が無くなる

 今は複雑な税法ですが、アカウンテックが普及すると、自動申告のニーズも高まっていくでしょう。

 

 自動化しやすいように、法律のほうがアカウンテックに合わせて簡便的になっていくと思います。税務署・税理士も様変わりです。

 

 

 フィンテックは金融ビジネスを変革しましたが、アカウンテックは会計インフラを変革します。

 

 従来は当たり前にかかっていた、資本の調達コスト(監査・会計士)、税金の徴収コスト(税務署・税理士)、会計の事務コスト(違算・仕訳)が削減されることは、社会的には良いことです。

 

 しかし、これらをビジネスにしていた法人や、仕事にしていた人にとっては、厳しい話です。パラダイムシフトに備えて、法人はビジネスモデルの変革、個人はスキルの多能化を進めていかなければなりませんね。

「できる」と「使える」は違うこと

 ある製造業が生産管理のパッケージシステムを買いました。これを使って工場の日程管理を徹底し、納期を短縮する・・・はずでした。しかし、いざシステムの導入設定の段階になると、そのシステムが使えない代物だったことが判明しました。

 

 さて、いったいこの会社に何があったのでしょうか?

 

 生産管理にとって、もっとも大切なのは時間です。作業日報に記載する「作業時間」、機械日報に入力する「機械時間」、製造指図書に記載する「標準時間」、原価計算で集計したり、配賦したりするのに用いる「時間」など・・・製造業にとって時間という概念は欠かせません。

 

 この会社で使っている時間単位は「分」でした。5分、15分、22分など、分単位で生産情報を収集しています。

 

 しかし、導入したパッケージシステムの時間単位は「時間(アワー)」でした。パッケージベンダーは「アワーと言っても1時間や0.5時間だけでなく、0.003時間など、少数点以下はいくらでも持てますよ」と主張します。

 

 たしかに、理屈上は「分」を「アワー」に換算してシステムに入力すれば、システムは動くかもしれません。

 

 でも、そんな面倒なことを誰がやるでしょうか? 分と時間を換算する早見表でも現場に用意しますか? このようなシステムを導入すれば、工場から大ブーイングが起きることは明らかです。

 

 仮に百歩ゆずって、日々の現場入力は「分」を「アワー」に換算してシステムに取り込む仕掛けを作ったとしても、その他の帳票・検索・原価の設定などの機能はすべて「アワー」です。予算的にすべての機能に換算のカスタマイズはできません。

 

 結局、この会社は泣く泣く購入したパッケージシステムを捨てたと聞きました。

 

 システムの世界で、このような出来事は決して珍しいことではありません。表上はあまり出てきませんが、システムが稼働することなく導入段階で廃棄されることが、今もあちらこちらで起こっています。

 

 なぜ、そのようなことが起こるのか? それは関係者がシステム的に「できる」ことと、実際の現場で「使える」ということを混同してしまっているからです。

 

 「できる」と「使える」とではまったく意味が違います。

 

 システムベンダーや情報システム部は、システムの立場から物事を考えがちです。その機能が1回だけ使われることしか想定していません。

 

 しかし現場は違います。1日100回、毎日使う機能かもしれません。あるいはお客さんと忙しく商談している時に、片手間で入力しないとならない機能かもしれません。

 

 その機能が実際にどのように使われるかをわかっていないから、「アワーと言っても0.003時間など少数点以下はいくらでも持てますよ」という発言が平気でできてしまうのです。

 

 システムは買ってしまえば、おしまいです。たとえ業務に合わないものであっても、がまんしてそれを使っていかなければなりません。

 

 後悔しないためにも、「できる」と「使える」の違いを今一度確認し、パッケージシステムは慎重に選定するようにしましょう。

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