スタイル変化と構造改革

スタイル変化と構造改革

 最近の決算発表や業績修正で目にとまった会社は「リコー」と「大塚家具」です。一昔前はどちらも超優良会社でした。しかし今は、時代の変化についていくために苦悩しています。

 

 リコーは今から約10年前、2008年にIKON Office Solutions, Inc.を約1,600億円で買収しました。複写機、ファクス、プリンターなどのOA機器の販売を行う会社です。欧米で400拠点持っています。

 

 この時の社員数はリコーグループ83,000名に対してIKON25,000名です。M&A的には、グローバルな販売網を強化する大きな攻めの一手でした。

 

 しかし、この10年で市場環境は激変してしまいます。インターネット、スマートフォン、タブレット、クラウドなど怒涛の技術革新で、急速にペーパーレス化が進みました。

 

 たとえば工場。図面も紙に印刷するのではなく大型モニターで見るようになったり、日報入力も紙に書くのではなくタブレットで入力したりしています。

 

 私自身も10年前と比べると、明らかに紙の印刷量が減りました。昔は資料をいったん印刷してファイルするのが当たり前でしたが、いまは縦型の液晶モニターでレビュー・修正しています。PDFA4などは画面に1ページまるまる映せますから、とても便利です。

 

 欧米は、日本以上にペーパーレス化進んでいます。それは海外ERPシステムを見てもわかります。帳表は驚くほどお粗末です。海外ERPベンダーは、「ビジネスリーダーたる者、システム画面で数字を見るのが当然だろう」という思想だからです。

 

 リコーは今期、IKON社で1,400億円ののれん等の減損を実施します。

 

 大塚家具は、本業である「高級家具」の販売不振です。昨年、売上が前年比20%減、今期がさらに11%減。3年前の売上580億円から410億円まで落ち込みました。

 

 昔は、「家具というのは一生もの、高くても良いモノを買う」という風潮があったと思うのですが、いまはニトリやIKEYAなどに代表されるように、「家具はカジュアルなモノ」に変わっています。

 

 スタイリッシュで、値段も手ごろ、買い替えも頻繁となると、高級家具の市場自体が縮小していくのもやむをえません。

 

 ライフスタイル(ビジネススタイル)の変化は、ネットショッピングの台頭、百貨店の低迷にも通じる話です。さまざまな企業が時代の荒波に揉まれています。リコーと大塚家具はその象徴のようです。

 

 このような時に必要なことが事業の「構造改革」です。旧態依然の体制を見直し、新たなビジネスモデルや収益源を探します。第二創業とも言われる思い切った改革です。

 

 実際、大塚家具は14億円の事業構造改善引当金を積んで、次期の巻き返しを図るようです。本業がゆらぐ正念場をどのように乗り切るのか? これから経営手腕の見せどころです。この2社に来期は注目したいと思います。

わが家にネコが4匹やってきた

 わが家にネコがやってきました。ネコと言っても本当のネコではありません。ただのフィギアです。

 

 某コーヒーチェーンのキャンペーンのフィギアなのですが、飲みもの3杯分のレシートで1匹もえらます。このネコをもらうために、最近はお店に頻繁に通っています。

 

 ネコの顔は決してかわいいわけではありません。ですが、いかにもネコらしいちょっとふてぶてしい感じが良いです。同じネコでも目の位置が微妙に違っていて、個性があるところも面白いです。

 

 もらえるネコは5種類あります。わが家にあるのはまだ2種類です。できればコンプリートしたいのですが、このキャンペーンは2月からはじまって、お店の在庫が無くなり次第終了してしまいます。

 

 ある時、お店の「抽選箱」に入っているネコの数が少なくなっていたので、心配になり次の日もお店を訪れました。いったら「抽選箱」のネコは補充されていたので、今しばらくは大丈夫そうです。

 

 このコーヒーチェーンが「ネコがもらえるキャンペーン」を始めたのは、今回が3回目だそうです。もともとは何周年記念でやっていたみたいですが、思いのほか販促効果があったのでしょう。今年は関係なく決算前にキャンペーンをやっています。

 

 私はこの販促キャンペーンに好感を持っていますが、それはネコだけが理由ではありません。そのやり方、事務のオペレーションも理由の一つです。

 

 このようなキャンペーンで一番オーソドックスなやり方は、ドリンク1杯につき引換券1枚を渡す方法です。しかし、これだと引換券を大量に印刷して用意しておかなければなりません。

 

 このキャンペーンではそのような引換券をつくらず、レシートで済ませている点が良いです。

 

 そして、そのためにある工夫を2つしています。一つはレジへの入力方法です。

 

 たとえば同じドリンクを4杯頼んだとしても、数量を4と入力するのではなく、数量1を4回入力しています。つまり、レシート上は4品目(4行)で記載されます。

 

 もしそうしなかった場合、3杯でネコ1匹と交換ですから、1匹渡したら4の数字を「残り1は未使用」などと書き換えなければならなくなります。このような煩雑な手間をつくらないようにしています。

 

 もう一つの工夫はレシートの品名表記です。通常であれば「コーヒー」と印字するところを「□コーヒー」としています。品目の頭に「□」をいれることで「レ点」をつけやすくしているのです。「レ点」の有無で交換済みと残りが明確になります。

 

 これはシステム的にとても簡単なやり方です。POSレジは品目マスタを持っていますが、正式な品目名称はそのままで、レシート表記用の名称だけを期間限定で変えるだけです。

 

 このように、オペレーションの手間やコストをできるだけかけずに、キャンペーンを実施しているわけです。仕組み一つで現場の生産性が大きく変わる良い事例だと思います。

 

 はたしてわが家のネコは何匹まで増えるのでしょう? 今日もまたコーヒーを飲みに行きますか!

サービス過剰を見直す時代

 何号か前の「日経コンピュータ」で、日本郵便のCIO(最高情報責任者)のインタビュー記事を読みました。そのタイトルは「ハードの保守費8割削減!」です。システム機器の保守は毎年のことですから、これは相当な改革です。

 

 「コスト8割削減とは、いったい何をするのだろう?」 はやる気持ちを抑えながら読みました。

 

 その答えをひとことで言うと・・・「サービス過剰」の見直しです。

 

 それまで日本郵便はすべての機器で24時間保守を原則としていたのを、機器に合わせて保守のグレードを変えることにしたのです。グレードは軽微なものから「スポット保守」「日中週1保守」「日中保守」「24時間保守」の4段階です。

 

 すべての機器を24時間保守にしていたのも驚きですが、重要度に応じたグレードにできれば、保守費は大幅に削減できそうです。

 

 たとえば深夜を含めた24時間体制から、昼間でしかも一週間以内に修理を完了してくれればよい(日中週1保守)となると、ベンダーは人員を24時間確保(あるいは連絡が取れるように)しておく必要はありません。

 

 また機器の交換になっても1週間も余裕があれば、メーカーから代替機器を取り寄せることができます。ベンダーが予備在庫を自前で持つ必要はありません。ベンダー側もコスト削減できるのですから、確かに値引交渉の余地はあります。

 

 一方で、保守サービスが低下することで業務に支障はないのか? 見直しをする際に難しい点がこの“見極め”でしょう。

 

 この決断にいたるまでに、日本郵便は故障したハードを1週間放置するなどの実証実験をおこなったそうです。そうして業務に問題がなかったことを確認してから見直しを決めています。

 

 システムを利用する側は、得てして「システムはパーフェクトに動くもの」と思っています。日本郵政もその期待に応えるべく24時間保守を原則としていたわけです。

 

 もし保守サービスをグレードダウンして、万が一業務に大きな支障が出たら・・・「それ見たことか」と社内やベンダーにたたかれる恐れもあります。今回の方針転換の責任を問われることもあるでしょう。

 

 そのような危険も承知で、リスクや影響を正しく評価してグレードダウンを決定し、過剰な保守のコスト削減と適正化をはかるのは、とても意義がある経営判断だと思います。

 

 サービスには必ず対価がつきものです。これから働く人は減りますから、企業は“サービス過剰・やりすぎを見極めて削ること”がますます大事になってきます。顧客や取引先とのサービス、部門間のサービス、今まで当たり前だったサービスを見直してみましょう。

「サービス設計12箇条」がスゴイ!

 今年1月に「デジタル・ガバメント実行計画」なるものが閣議決定されました。

 

 内容を一言でいうと「これから5年で行政サービスを大改革しよう」という話です。これまでも政府主導の電子行政の試みはありましたが、今度のものは本気度が違います。文章のあちこちに“やる気”を感じます。

 

 たとえば、次のような感じです。

 

 『この際、サービスのフロント部分だけでなく、バックオフィスの業務における情報のフローを一から点検した上で、書面や対面の原則、押印等のデジタル化の障壁となっている制度や慣習にまで踏み込んだ業務改革(BPR)の検討を行う』

 

 行政といっても、やっていることは一般企業の間接部門や事務方と大して違いはありません。自社の業務改革にも参考になると思いますので、ぜひご一読をおすすめします。

 

 なかでも必見は「サービス設計12箇条」です。「うんうん、わかるわかる」「そだねー」と思わず頷いてしまいます。

 

第1条 利用者のニーズから出発する

 ここでの利用者は、行政サービスをうける「国民」と、サービスを提供する「職員」の両方を指します。社内で「国民」と「職員」は誰なのかをあらためて確認しましょう。

 

第2条 事実を詳細に把握する

 思い込みや仮説でサービス設計していませんか? 多少のヒアリングや資料でわかったつもりになっていないでしょうか? きちんとした可視化が大切です。

 

第3条 エンドツーエンドで考える

 サービスや手続の一つ一つではなく、その前後も含めた行動全体の一連の流れの中で考えましょうという主旨です。

 

第4条 全ての関係者に気を配る

 デジタル機器が使えない人もいます。取引先にもFAXでしか発注書が送れない先もあるでしょう。すべての関係者がWINWINになる方法を考えます。

 

第5条 サービスはシンプルにする

 行政手続はめったに利用しないものばかりです。申請書の様式やシステムのメニュー画面など、一見してわかる仕組みが大切です。

 

第6条 デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める

 「紙(EXCELを含む)」より「デジタル・IT」を優先すべきです。データ化の意義は検索・集計のフェーズにあります。

 

第7条 利用者の日常体験に溶け込む

 システムでもTPOを考えない開発が多すぎます。いつ・どのように使われるかを理解できないと本当の意味でユーザーフレンドリーなものはできません。

 

第8条 自分で作りすぎない

 すでにパッケージやクラウドサービスがあるのに、一から作り込みするのはナンセンスです。また要望からあるからと言って、過剰な機能をつくり込むのもダメです。

 

第9条 オープンにサービスを作る

 関係者に情報公開しながら作るという主旨ですが、その後の変化に対応しやすい拡張性がある仕組み、という考え方があっても良いと思います。

 

第10条 何度も繰り返す

 試行的に実施して、フィードバックを踏まえてサービスを修正していく話です。仕組みはPDCAを回してはじめて効果が増加します。

 

第11条 一遍にやらず、一貫してやる

 大きなプロジェクトは一度に完璧なものをつくろうとしない。予算や時間には限りがあるのですから、優先順位を決めて最低限のスタートを考えます。

 

第12条 システムではなくサービスを作る

 システムは近視眼てきになりやすいものです。システムの安定稼働は大切ですが、システムが動くこととシステムが使えるということは別な話です。

 

デジタル・ガバメント実行計画

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