予算管理を変えてみませんか?(経費予算編)

予算管理を変えてみませんか?(経費予算編)

 前回の「売上予算編」に引き続き、今回は経費予算について考えてみます。

 

経費予算

 一番スタンダードなのが、部門別、費目別、月別に設定した予算です。新年度が始まる前に、各部門長に経営企画部か経理部からEXCELファイルが配られます。今期の実績や来期の予定人員数を考えながら、数字を入力していきます。

 

 ここで、経営企画部から「予算作成に当たっては、部門経費5%削減でお願いします」などと、一律の削減目標が設定されると、何が起こるでしょう?

 

 そうです。コストの付け替えです。

 

 「この費用は、A部門のためにやっているのだから、ウチの純粋な経費でないよね。経理に言って30%くらいA部門に経費の振替えをお願いしよう。」

 

 「ウチのプリンターを、隣の部門も使っているよね。諸経費代としてリース料の50%(たとえば部門人数比で計算)くらいもらうべきではないだろうか?」

 

 このような提案がくると、理屈は一見正しいので、経理部はむやみに断ることができません。組織内の政治的な話もあり、さまざまな付け替えが起こります。私が見た中では、付け替えを30パターン以上やっていた会社もありました。

 

 さらに、付け替えは予算をつくる時だけの話ではありません。予算と実績を比較するために、毎月の月次決算でも付け替えをやるわけです。

 

 人数比で付け替えしている場合は、ご丁寧にも実際の月末の部門人数を調べて、毎月比率すら替えていたりします。こんなことをしていたら、月次決算が遅くなるのも当たり前です。

 

 このようなことが起きるのは、経費予算の趣旨をはき違えているからです。

 

 この部門は経費がどれくらいかかっているのだろうか? そういう負担割合を見るためなら、配賦も少しは意味があります。しかし、そんなことは経営にとって参考程度の情報です。

 

 経費予算の目的は、予算を守ってムダな経費を抑えることです。部門ごとの負担状況を正確に知ることよりも、経費の一次発生部署が責任を持って、コストをマネジメントすることのほうが大事です。全社で見れば、どこが負担するとかは、大した話ではありません。

 

 経費の付け替えが度を過ぎると、大事な経費の一次発生の状況すら見えなくなってしまいます。

 

 製造業のように仕掛品や完成品がある場合は、損益に影響が出ますので、ある程度の配賦は必要です。

 

 また、損益影響が出なくても、売上原価と販管費の入り繰りが出る場合は、多少注意が必要ですが、しかしそれ以外は付け替えなどバッサリやめてしまっても困りません。

 

 経費予算は、経費の一次発生を大事にします。そして、金額を削減する必要がある場合は他部門への付け替えではなく、実際の削減を伴う数字だけを採用します。

 

 削減幅を増やしたいのなら、部門を横断してアイデアを出しあったり、業務改革を実施したり、しくみやフレームワークから見直していきましょう。裏付けのある経費予算をつくることが大切です。

予算管理を変えてみませんか?(売上予算編)

  予算管理が「ほんとうに業績向上に役立っているか?」と問われると、どうでしょう? 大半の人が「数値目標を押し付けられているだけ」と答えるかもしれません。

 

 売上予算しかり、経費予算しかり。予算達成に向けて努力することは大切ですが、それが必達となると、東芝の“チャレンジ”の二の舞です。

 

 昭和どころか平成も終わろうとしている時代に、何十年も変わらない予算管理の手法を続けても、経営は良くなりません。予算管理に対する考え方を少し変えてみましょう。

 

 

売上予算

 売上予算で、よくある設定の仕方は「前期比何%増」です。営業所や店、商品セグメントごとに、前年実績を踏まえて、「今年はこれくらいいけるだろう」という数字で、今年度の予算を考えていきます。

 

 しかし、これだと非常にアバウトです。右肩上がりの時代(もう何十年も前ですが・・・)ならいざしらず、「去年の自分を超えていけ」というスタイルは適切ではありません。

 

 金額には、その数字にいたった背景というものがあります。

 

 たとえば、店舗を持つ小売業ならば売上は「来客数×購買平均単価」に分解できます。このとき「来客数」や「購買平均単価」をパラメータと言います。来客数のパラメータは、男女別、年代別などさらに細かく分けることができるでしょう。

 

 売上予算はパラメータで考えます。前年実績の来客数を5%増やす、あるいは購買平均単価を1,000円アップさせるなど、パラメータの目標数字を決め、それを掛け算して出てくる金額(結果)を売上予算とするわけです。

 

 分解したパラメータの目標数字がわかれば、具体的な施策につながります。来客数を5%増やすために月1回のキャンペーンを月2回にしよう。あるいは、購買平均単価を1,000円アップさせるために、接客時間を増やそう。そのために、店舗事務を本部に一部移管しようなど、アイデアが出てきます。

 

 また、法人営業ならば、どうでしょう。ビジネスによって違いますが、たとえば、売上が「訪問回数×見積回数×見積単価×成約率」の4つのパラメータで構成されるとしましょう。

 

 営業マンの訪問回数%増やせば、見積回数が同率アップして、見積単価と成約率が前年と一緒だったとしても、売上は増えます。

 

 「それは計算上の話で営業は気合いだ!」という人もいるかもしれません。しかし、データというものは本当に面白いものです。一定の母体数があれば、結果は予測どおりに現れます。

 

 だからこそ、マーケティングの世界には“ファネル”や“コンバージョン率”という概念があるわけで、営業活動であろうと統計データを馬鹿にはできません。

 

 金額だけで売上予算を決めると、現場は数値目標を押し付けられたと感じます。さまざまなデータが取れるようになり、それを分析できる時代です。パラメータの予算管理で、施策と一緒に実現可能な売上予算を考えましょう。

 

 今日はここまでです。経費予算は次回お話しましょう。

100億円企業は1,000億円になりきろう

 

 誰かに教えてもらったのか、何かで読んだのか、覚えていないのですが、私が仕事で意識してきた言葉があります。

 

 その言葉は、「上の役職になって、考えてみろ」です。

 

 一般社員ならば課長やチームリーダーに、課長やチームリーダーであれば部長に、部長ならば役員になったつもりで、考えて行動せよ。そうすれば、組織にとってより良い行動や判断ができる、という格言です。

 

 真面目な人は、組織から自分に与えられた仕事を完璧にこなすこと、それが役割だと考えます。そういう人は、どうしても専門性に走りやすく、視野狭窄になりがちです。

 

 かの有名なピーター・ドラッガーが、50年以上前に指摘した「専門化の危険性」です。

 

 たとえば、経理担当者は1円まで正確であること、勘定科目に一つも間違いがないことを正しいとします。システム担当者であればIT化する際、現場の要求を100%取り入れて、完全なシステムをつくろうとします。

 

 専門性を追求しすぎて、担当者本人の時間のみならず、他の社員の時間まで奪ったり、多額な金銭的負担がかかったりしてしまうなら、それは会社の利益にはなりません。

 

 「上の役職になって、考えてみろ」という格言は、このような専門化に陥りがちな思い込みや殻を破るのに有効です。

 

 経理部長であれば、正確性だけでなくコストパフォーマンスや現場負担も考えるでしょう。軽微なミスは許容できます。システム部長も同様です。完全性だけでなくコスパや将来の変化を見越して考えるでしょう。現場の言うことが必ずしも正しくはないことを経験則として知っているからです。

 

 このように上の役職になりきると、ものの見方や、重要視する基準がより高いレベルになります。

 

 上の役職は、一つの上の直属の上司だけでなく、もっと上役でも良いでしょう。場合によっては、他部門の上役でも良いかもしれません。とにかく自分の仕事から一歩引いて、別な立場で考える方法は、担当者の判断をより組織目標に合致したものにしてくれます。

 

 私もコンサルをしていて難しい判断を要する時は、自分がクライアント企業の社長になったつもりで考えます。自分が社長だったらどうするか? 自分が社長になってやらないようなことを、アドバイスなどできません。本気で社長になりきって考えます。

 

 また、この“なりきり”のワザは、個人だけでなく企業でも使えます。

 

 たとえば、業務改革などをしていると、担当者は現行業務にこだわりがちです。そういう時、いま年商100億円の企業なら、年商1,000億円の企業になったらどうするか、と考えるのです。

 

 私は「ソニーやパナソニックがそのような業務をやっていると思いますか」などと言ったりします。

 

 もちろんソニーやパナソニックほどの超大企業である必要はありません。今の10倍の売上になった時に「この業務は今の形で続けているだろうか」と考えて、もしその業務をやっていないと思うなら、それはどこかで必ず切り替えなければならない、ということです。

 

 成長した先や何かになりきって、今を振り返ってみる。「上の役職になって、考えてみろ」は、先人の知恵ですね。

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