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  1. 経営のしくみ別冊

Vol.7 新・管理会計 財務会計からの脱却

「経営のしくみ別冊」は、弊所が発行している季刊誌です。
この記事は、Vol.5 2019.10「新・管理会計 財務会計からの脱却」です。

はじめに

管理会計は、経営管理に活かすためのものです。しかし実際はどうでしょうか。管理会計の数字を活用して、売上高は増えていますか? 各部門の固定費は削減できていますか?

もしそうでないなら、管理会計には改善の余地があります。経営や現場が業績向上のための効果的なアクションを起こせるように管理会計を再考しましょう。

多くの企業は、経営のための「管理会計」と、会計基準や税法などの制度のための「財務会計」を同じくしています。いわゆる「財管一致」です。

財管一致にはメリットもありますがデメリットもあります。とくに経費削減においては、あまり役立たない数字になっています。

「今の管理会計は何十年も変わっていない。もっと業績が良くなる管理会計にしたい。」

そういう方はぜひ本レポートをお読みください。「経営に役立つ」という管理会計の本質に立ち返って、今の管理会計を見直すヒントにしていただければと思います。

目次

1.財務会計化した管理会計の弊害
2.経費削減に強い管理会計
3.確かなアクションを起こす管理会計
4.財管一致システムの問題点
5.新・管理会計のしくみ

1.財務会計化した管理会計の弊害

㈱ABCフーズは、昭和40年創業の老舗の食品製造業です。地元の食品スーパーだけでなく病院や介護施設などにも、冷凍食品や加工食品を販売しています。近年は競争環境が激化し、ピーク時に比べ売上が30%も減少。10年前に食品工場を新設した時の借入金の負担が重くのしかかってきています。

現状を打破すべく大山社長は、経理部の谷川部長に管理会計の抜本的な見直しを指示しました。社長の要望は「いまの経営管理資料は、昔から何一つ変わっていない。もっと現場が何をすれば業績が良くなるのか、はっきりとわかる資料を作ってくれ!」ということです。

さっそく谷川部長は、社内に「管理会計再構築プロジェクト」を立ち上げます。経営企画部長にも声をかけ、コンサルタントも呼んで、本日はプロジェクトのキックオフです。

・・・

コンサル「はじめまして、よろしくお願いします。ところで今、御社ではどのような管理会計をしていますか?」

谷川経理部長「そうですね。簡単に言うと毎月、部門別に予算と実績を比較した損益計算書を作っています。売上から営業利益までですが。」

コンサル「月次・部門別・予実管理ということですね。共通費は各部門に配賦をしていますか?」

渡辺経理課長「それは私が答えます。毎月実績ベースで配賦しています。」

中原経営企画部長「いま月次の配賦は30種類くらいだよね。私が取締役会に報告していますが、種類が多すぎて説明がいつも大変なんです。」

・・・

会計には、財務会計(制度会計)と管理会計があります。財務会計は制度、具体的には会社法・税法・金融商品取引法・会計基準などの法律に、要請されて実施する会計です。法律で決まっていますから、「ルール順守」と「正確性」が要求されます。

これに対して管理会計は会社が任意で実施する会計です。法律の縛りは何もないですから、経営に役立つことだけを考えて、つくればよいわけです。ですから管理会計では「経営貢献」と「簡便性」が大事です。なお簡便性とは「管理会計は義務でないから、できるだけお金と時間をかけない」という意味です。

財務会計はやることが法律や基準で決まっているので、どの会社も基本的に同じです。しかし管理会計は何も決まっていないので、個々の会社によって異なります。ただ昔からよく行われる「オーソドックスな管理会計」というものはあります。具体的には月次決算・部門別損益・予実管理です。

月次決算

財務会計の決算は年1回です(上場企業は年4回)。毎月、月次決算を行うのは管理会計であり、「会社の業績を月1回は確認したい」という経営の要請です。ただ企業の大半は月次決算を累積して年度決算をつくっています。そのため月次決算は実質的には財務会計という見方もあります。

部門別損益

財務会計の損益計算書は全社単位です。部門別に損益計算書をつくるのは、「部門別の損益を見たい」という経営の要請です。損益の範囲は、売上高から営業利益までが多いです。分割する単位は部門別もあれば、商品別・事業別などの単位もあります。

予実管理

財務会計の損益計算書は実績です。実績とは別に予算を作成し、予算と実績を比較するのは、「実績の予算進捗を見たい」という経営の要請です。予算は部門別に作成されます。また予算には変動予算(売上実績に応じて経費予算が変化)と固定予算がありますが、大半の企業が固定予算を採用しています。

月次決算・部門別損益・予実管理は管理会計ではありますが、いまや財務会計化しています。とくに上場企業の場合、上場審査項目なのでやらないわけにはいきません。それほど標準的になっています。

・・・

谷川部長「当社の管理会計は実質、財務会計化しているかもしれませんね。」

渡辺課長「管理会計と財務会計の数字は、完全に一致していますし。」

中原部長「でも今の管理会計では、先が見えないなあ。なんとなく空回りしているというか・・・。」

コンサル「それは、業績向上に役立っている実感がないからではないですか?」

中原部長「たしかに。」

コンサル「業績が好調な時と不調な時とでは、管理すべき視点が違います。それはどういうことか、説明しましょう。」

・・・

売上や利益が堅調な時は、経営は売上に集中できます。多少経費の使い方が甘くなっても気にする必要はありません。それ以上に売上を上げるほうが利益を増やすためにも大事です。

これに対して売上や利益が厳しい時はそうはいきません。もちろん売上も大事ですが、しっかり経費に注意を払わないと利益を確保できないからです。経営の局面によって管理すべき比重が異なります。

オーソドックスな管理会計は財務会計と連動しているため、内容が「実績主義」「負担主義」「形式主義」に重きを置いた数字になっています。これらは部門収支を見るのには適していますが、経費削減にはあまり役立たない数字なのです。

実績主義

財務会計で使える金額や数字は実績のみです。仮・予定・標準など、予め設定した金額や数字を使うことは認められていません。このため全社共通費が今月100万円発生したら100万円を、150万円発生したら150万円を各部門に配賦します。各部門の利益は全社共通費の実績次第で大きく変わってしまいます。

負担主義

部門別損益は部門の正しい採算を示します。「この経費はどの部門が負担すべきか」という負担の正当性に着目し、公平と思われる配賦ルールを定め、それで各種経費を各部門に按分するわけです。その結果できた数字は、そもそもどこで発生した経費なのかがよくわからなくなります。経費を削減できるのは負担部署ではなく経費の申請部署や発注部署です。

形式主義

財務会計の利益と言えば、売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益です。部門別損益を作る際も、各部門の営業利益の合計が全社の営業利益と一致するようにつくられます。つまり販管費すべてを部門別に按分するわけです。部門別に按分しにくい経費や、按分する意義が乏しい経費まで、ムリに割り振られるので、部門長が強く管理すべき経費やポイントが埋没しています。

・・・

渡辺課長「配賦すること。それが正しいと思っていましたが、必ずしもそういうわけではないのですね。」

コンサル「もちろん各部門の収支を見るのに、配賦は正しいことです。しかし経費削減の観点から見れば、配賦前の数字のほうがずっと役に立ちます。」

中原部長「今の配賦は、部門間の経費の押し付け合いになっている様相もあるしね。本来は実際の経費を削減させなくちゃならないのに、他部門に付け替えることに、やっきになっているんだから。」

谷川部長「そのおかげで、配賦が30種類まで増えました(笑)。」

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