システム・業務・会計に関するコンサルティング   人手やコストをかければ、管理や業務は誰でもできるが、それでは生産性は上がらない

  1. 経営のしくみ別冊

Vol.7 新・管理会計 財務会計からの脱却

2.経費削減に強い管理会計

渡辺課長「では、経費削減に強い管理会計って、どんなものですか?」

中原部長「今問題に上がった、実績主義・負担主義・形式主義を反対にすればいいんじゃない。」

谷川部長「実績に対して予定主義、負担に対して発生主義、形式に対して実質主義、というところですか。」

・・・

経費削減に強い管理会計は、その経費の発生責任(負担ではない)が誰にあるかが明確になっていると良いでしょう。具体的には「予定主義」「発生主義」「実質主義」に重きを置いて数字を整理して設計します。

予定主義

たとえば先ほどの例でいうと、実績では全社共通費が今月100万円発生したら100万円を各部門に配賦していました。仮に全社共通費の年間予算が1,500万円なら月125万円です。予定では実績に関わらず125万円を定額配賦します。そうすれば、各部門は全社共通費の増減で、部門利益が動くことはありません。部門利益を上げるには、部門経費を下げるだけです。

発生主義

経費支出を抑えられるのは、経費を申請する時か、経費を実際に発注する時だけです。その経費を申請・発注する部門に置き、その削減を促していきます。たとえば総務部が全社で使うコピー用紙をまとめて買うケース。負担主義なら各部門に人数比で振替えるでしょう。しかし仕入先と価格交渉したり発注数量を(各部門と掛け合って)減らしたりできるのは、実際に発注する総務部だけです。発生主義では総務部の経費とします。

実質主義

経費削減するのに利益は関係ありません。経費削減したい費目だけに着目し、管理するほうが効果的です。利益概念を使うにしても、販管費すべてを控除した営業利益である必要はありません。たとえば売上から特定費目(管理可能費目など)だけを引いた財務会計には無い利益(貢献利益とも言う)を使います。

上記の他にも経費削減の管理会計のポイントはいくつかあります。たとえば変動予算の採用です。固定予算は経費が定額なのに対し、変動予算は売上実績によって変動費(運賃や販売手数料など)の予算が変わります。売上増減の影響を除くので、実績が(純粋な)予算に対してどうだったのかがわかります。

また投資(のちに経費になる)と経費の分別も大事です。利益が足りなくなって、本来やるべき投資を先延ばしして利益のつじつまを合わす、そのような抜け道を防ぎます。

3.確かなアクションを起こす管理会計

渡辺課長「なるほど、こういうのが経費削減に強い管理会計なのですね。」

谷川部長「でも、大山社長が求めているのは経費削減だけではないはずです。もっとこう、情報を見て必要なアクションを起こせるような・・・。」

中原部長「たとえば、天気予報みたいに来月の売上が予測できるとか。あるいは売上が下がった原因がわかるとか。そういうのがあると便利だよね。」

コンサル「その視点はとても大事です。多くの企業が先に管理会計ありきで考えますが、そうではありません。どうしたら経営や現場が具体的な行動を起こせるか、ユーザー目線から必要な管理会計を考えていくべきです。」

・・・

コンサルをしていると、「何か管理会計のテンプレのようなものはありませんか?」と言われることが、たまにあります。残念ながらそのような質問がでる時点で、管理会計を誤解していると言わざるを得ません。

管理会計をひとことで言うと、「経営や現場が欲しいという情報を会計的な見地から提供すること」です。だから経営や現場がどんな情報が欲しいのか、どのような情報があれば意思決定しやすいか、業績向上につながる行動を起こせるか、そういうことを考えて管理会計をつくっていくわけです。

その情報ソースは会計ですが、別に財務会計にとらわれる必要はありません。目的は業績を向上させることです。別な情報と組み合わせて全然違う数字をつくっても良いですし、もし金額より回数や時間のほうがわかりやすいなら、それを提示しても良いわけです。

では、具体的に経営や現場は、どんな情報があればアクションをしやすいのか。ここでは3つ例を上げましょう。

予測情報

もし将来、売上や利益、特定の経費がどのような数字になるか、おおよそでも予測できるなら、それは経営や現場にとって有益な情報でしょう。財務会計は過去の情報だけですが、管理会計は自由です。作れるなら未来の予測情報を提供します。

たとえば来月の売上予測。販売管理システムの受注情報と、購買管理システムの入荷予定、生産管理システムの日程管理などを組み合わせれば、実現可能です。さらに営業支援システムの現在引合中の案件情報や見積情報(受注前)も合わせれば、さらに先の売上を予測することもできます。

今月の製造原価の着地予想。メーカーだと、予定原価や社内価格(営業部と製造部との仕切り価格)で経理処理しているところも多いでしょう。月中は利益がでると思っていたのに、月次が締まってみると多額の原価差異がでて、「実際の利益は赤字だった」ということもよくあります。

原価差異の多くは操業度差異です。基準操業度に対して、今月の実際操業度がどれくらいになるかを、作業日報や生産計画などで試算できれば、月中でも製造原価の着地を予測することは可能です。

採算情報

製品や商品群(ないしは営業所)など特定のセグメントの採算を正確に知ることは重要です。採算が取れていれば利益に貢献しますが、採算が取れていなければ損失の垂れ流しです。何らかの対策が必要となります。

ここで言う正確とは「金額が1円単位で正確」「配賦で負担が正確」という意味ではありません。採算を判断する上で正しく集計されているか、ということです。たとえば費用の範囲。製品や商品の採算を見る際は、粗利までしか集計しないことが多いですが、販管費にも製品や商品の各セグメントが負担すべき費用があります。

あるいは費用の質。セグメントごとに変動費と固定費を分けます。加えて固定費は他のセグメントへ転用できるものと、そうでないものに分けることで、より意思決定に役立つ情報を提供できます。

また売上と費用の対応も大切です。会計的には費用収益対応の原則があるので、売上と費用は基本一致します。しかしたとえば、広告宣伝費や販促費等の費用発生と効果の発現に期間的なズレがあるならば、期間の調整が必要です。

さらにメーカーの場合、今月生産したものが今月売上するとは限りません。一つの生産ラインで複数製品群をつくったり、複数の生産ラインで一つの製品群をつくったりもします。売上と原価の対応関係を正しくするために、売上と原価の期間や、生産ラインと販売製品群の品目を一致させておく必要もあります。

パラメータ

経営者に話をする時は、「金額」で説明するほうが早いでしょう。しかし現場はそうとも限りません。最前線の現場担当者であればあるほど、「金額」で話すよりも、普段の仕事と直結する「時間」や「回数」などで説明したほうが通じます。

たとえば売上を上げたい場合。販売プロセスが、①見込客発掘(DM発送)→②営業アプローチ(営業担当者訪問)→③見積書提出→④受注だとしましょう。金額ベースだと「今月の受注はいくらだった」という話だけになります。

そうではなくて今月は「見込客が何社増加した」「訪問回数が何回だった」「見積書が何枚だった」という要素(パラメータ)で示唆するほうが、実感を持って次の行動を考えることができます。

製造のパラメータは、たとえば今月の「平均製造リードタイムは何週間だった」「段取回数は何回だった」「内製化率は何%だった」「機械稼働時間は何時間だった」などです。ただ単に金額ベースで「製造単価を何円下げよ」というよりも、具体的に何を改善しなければならないかがわかります。

もしかしたら「パラメータは金額ではないから、管理会計ではない」という方もいらっしゃるかもしれません。学問的な話は置いておいて、大事なのはその数字を見て売上が上がったり、コストが下がったりするかです。どうしても金額で示したいのなら、訪問回数が1回増えると何万円利益がアップする、内製化率を1%上げるとコストが何万円下がるなど、貨幣価値に換算しても良いでしょう。

・・・

渡辺課長「なるほど、これは“財務会計化していない管理会計”ですね。アクションにつながるイメージが沸いてきました。」

谷川部長「実際にどのような情報があればよいか、部門・職位ごとにいろいろ検討してみましょう。」

中原部長「現場にも一度ヒアリングしてみたら、いいんじゃないかな。」

コンサル「そうですね。本当に必要な役立つ情報を探す、というのが業績向上につながる管理会計の肝ですから、ぜひここは時間をかけましょう。」

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