システム・業務・会計に関するコンサルティング   人手やコストをかければ、管理や業務は誰でもできるが、それでは生産性は上がらない

  1. 経営のしくみ別冊

Vol.7 新・管理会計 財務会計からの脱却

4.財管一致システムの問題点

渡辺課長「でも、新しい管理会計を実際にやるとなると大ごとですよね。いまのシステムや仕組みで上手くいくのか、心配になってきました。」

コンサル「今の管理会計のシステムや仕組みはどのようなものですか。」

谷川部長「まず“基幹システム”から“財務会計システム”に、月次が確定したら“財務会計システム”から“管理会計システム”にデータを流しています。」

中原部長「“財務会計システム”と“管理会計システム”は完全に連動していて、いまは両システムに差はないよね。」

谷川部長「ええ、財管一致を原則として業務も運用していますから。」

コンサル「だとすると、次のような問題が起こっていませんか?」

・・・

財務会計と管理会計を一致させている会社の多くは、下図のようなシステム体系になっています。まず基幹システムから財務会計システムに自動仕訳を流します。自動仕訳が生成されない分は、振替伝票で財務会計システムに仕訳を手入力です。そして月次決算が固まった後、管理会計システムにデータを流します。財務会計と管理会計との間には差はありません。

上記のしくみでは、次のような問題点が生じている可能性があります。

問題点1 管理会計が遅い

財務会計の月次決算が1円単位まで固まらないと、管理会計システムにデータが流れません。そのため管理会計の数字を見るのは、翌月中旬くらいになってしまいます。スピード経営が求められる現代において、これは致命的です。

問題点2 現場担当者の負荷が大きい

そこで一日でも早く管理会計をつくるため、財務会計の月次決算の締め切り(何営業日以内など)を厳しくします。そうすると、営業部・購買部などの各担当者は売上・仕入・経費を締めるため、月末月初は事務で忙しくなり、本来の仕事に支障がでたりします。

問題点3 経理部員の負荷が大きい

財務会計システムを経由して管理会計システムにデータを流しているので、管理会計用に仕訳を細かくします。財務会計だけであれば合計金額を入力すればよいところ、担当者別案件別に何明細行も入力したりします。入力だけでなくチェックも含めて、負荷がかかっています。

これらの問題を軽減しようと、基幹システムから管理会計システムに先にデータを流すパターンもあります。この場合は管理会計システムを経由して財務会計システムに自動仕訳を流します。振替伝票の手入力仕訳に関しては、月次決算を固めてから、後から財務会計システムから管理会計システムに流します。

たしかに、これだと月中に管理会計を一部見ることができます。しかし手入力分が含まれていないので情報は不完全です。また管理会計システムから財務会計システムに自動仕訳を流す際、明細ではなく合算して流せますが、振替伝票は相変わらず明細入力が必要なので、現場担当者や経理部員の負荷はほとんど軽減されず、本質的な解決にはいたりません。

財管一致のしくみは、ある意味、財務会計にとっても管理会計にとっても不幸です。財務会計は管理会計のために仕訳を「細分化」し、管理会計は財務会計のために1円単位の「正確性」を求められます。「細分化」と「正確性」の両方を実現しようとして、負荷が増えているのです。

5.新・管理会計のしくみ

渡辺課長「たしかに“細分化”と“正確性”の両方を求めたら、経理も現場も業務は大変になる一方です。」

谷川部長「部分的には、財管を切り離すことも検討すべきですね。」

中原部長「新しい管理会計は、具体的にどんなしくみにすればいいのだろうか?」

コンサル「新しい管理会計は2つに分けて考えます。1つは従来の財務会計化した管理会計の見直し。もう1つは戦略的な管理会計の新たな構築です。」

・・・

管理会計は大きく2つあると考えるとわかりやすいです。1つはオーソドックスな管理会計。月次決算・部門別損益・予実管理は、すでに企業にとってデフォルトで、管理会計というより財務会計化しています。財務と管理の両面を持ち、細分化と正確性で、業務の負担が重たくなっています。これを「いかに軽くしていくか」というのが見直しの課題です。

もう1つは戦略的な管理会計。経費削減や業績向上のために、経営や現場に示唆を与え、具体的なアクションを起こさせるものです。こちらは基幹システムや会計システムからデータを抽出して、加工していきます。これはITが発展した現代だからこそできる管理会計と言えるかもしれません。「いかに役立つ情報を提供できるか」、そのための仕組みを「いかに簡単に構築できるか」が課題です。

新・管理会計のしくみは、個々の会社に合ったものを設計すべきです。ここでは参考として、オーソドックスな管理会計、戦略的な管理会計、それぞれのグランドデザインづくりのポイントを説明します。

オーソドックスな管理会計

月次決算・部門別損益・予実管理はしっかり根付いており、今後も会社の経営管理において重要な役割を果たしていきます。オーソドックスな管理会計の見直しポイントは細分化と正確性のバランスをどうとるかです。具体的には次のとおり。

①細分化を減らす

細分化を減らして合算入力できるようになれば、業務を軽減できます。経理部員が振替伝票を入力する際、各現場担当者が基幹システムに入力する際、それぞれで楽になるでしょう。金額のより詳細な内容を知りたい時は、基幹システムや戦略的な管理会計のほうで、直接確認します。

②配賦を減らす

配賦は重要なモノだけに絞り、細かい配賦を減らせば、業務を軽減できます。しかし各部門からは反対の声が上がるかもしれません。少しでも自部門の評価を良くしたい、公平であるべきという主張があるからです。配賦を減らす際は、部門評価のしくみも再検討します。部門損益の比重が下がれば受け入れやすくなります。

③予定や仮伝票を使う

予定や仮伝票を使うと、実績入力が遅くなっても数字を固められます。月次決算の早期化にもつながりますし、業務も軽減できます。ただしその場合、実績を月次決算後に入力・チェックすることとなりますが、新たに予定と実績との差額を翌月で調整したり、仮伝票と洗い替えたりするタスクが発生します。予定や仮伝票を適用する際は、その点も考慮して決めましょう。

戦略的な管理会計

戦略的な管理会計はクリエイティブかつ動的です。たえず必要となる経営情報は変わっていきます。一度作って終わりではありません。定期的に今、何が経営や現場の業績向上に役立つかを考え、柔軟に変えられることが求められます。

①財務会計と切り離す

戦略的な管理会計は、財務会計と切り離します。売上高や営業利益の合計をムリに一致させません。財務会計が月次締め直前で経費伝票が1枚修正されたからといって、それを反映する。そのようなことを無くすことで、システムも業務も軽くなります。

②配賦前の情報を使う

配賦されると、そもそもの発生元がわかりづらくなります。配賦前の発生べ―スのデータを保持しておきます。もし負担割合を見たければ、シミュレーションでデータ加工します。

③非金額の情報を使う

基幹システムには、金額以外のデータ、たとえば時間・回数・数量・仕様などの情報が膨大に蓄積されています。これらを取り出して、他システムの情報と組み合わせたり、予定(時間)と実績を比較したり、別な視点で活用します。

・・・

渡辺課長「では私は、オーソドックスな管理会計を見直していきます。」

中原部長「戦略的管理会計は経営企画の仕事だな。でもシステム投資が高くならないかが心配です。」

コンサル「今はBIツールや、データを変換して取り込めるEAIツールのパッケージ製品が色々ありますから、上手く活用できれば金額を抑えられます。」

谷川部長「プロジェクトはまだまだ序盤ですが、大山社長に良い中間報告ができそうです。皆さん、引き続きよろしくお願いします。」

・・・

いかがでしたでしょうか。本レポートが管理会計の考え方を変えるきっかけになれば幸いです。ぜひ業務の負荷を減らし、本当の意味で業績に貢献できる管理会計を実現してください。

1 2

3

経営のしくみ別冊の最近記事

  1. Vol.7 新・管理会計 財務会計からの脱却

  2. Vol.6 改革を成功させる生産性向上の急所

  3. Vol.5 消費税改正システム対応策

  4. Vol.4 売上が変わる!はじめての収益認識基準

  5. Vol.3 業務改革にRPAを活かす重要ポイント

PAGE TOP