システム・業務・会計に関するコンサルティング   人手やコストをかければ、管理や業務は誰でもできるが、それでは生産性は上がらない

  1. 経営のしくみ別冊

Vol.6 改革を成功させる生産性向上の急所

6.代価として「システム投資」する

木村係長「リスクの話はわかりましたが、ハナからシステム化できれば万事解決なのでは?」

松井室長「するどいですね。そのとおりです。」

水野課長「実は自動仕訳の件は、以前から情報システム部と相談しています。システム予算の関係もあって、今は中断です。」

松井室長「そうなんですか。でも事務の生産性を改善したいのなら、システム投資の話は避けて通れませんね。」

木村係長「わかった! システム投資は工場の設備投資みたいなものだ。肉体労働の生産性向上のために新型機械を導入するのと一緒で、事務労働の生産性向上のためにはIT化が欠かせないんだ。」

松井室長「すごいです。核心ついています。」

木村係長「いやあ、置き換えのコツが何かわかってきましたよ(笑)」

・・・

肉体労働において、生産性向上の切り札は「機械設備」でした。事務労働においては、「システム」になります。事務労働からシステムへ置き換えることで、イノベーションが発生します。

しかしシステム投資にはお金がかかります。投資に見合う生産性向上がないとIT化する意味がありません。よく「システムは金食い虫」と言われますが、それはこの点がおろそかになっているからです。

工場で設備投資を検討する際は、「新型機械を導入すればこれだけ生産量がアップする」「旧型機械から新型機械に更新しないとこれだけ生産量がダウンする」という話をします。そこに「工員の仕事がこれだけ楽になる」という視点はありません。もちろん機械の操作性は大切ですが、それは大した論点ではありません。

これに対して、システム投資を検討する際は、「システムを導入すればこれだけ生産性がアップする」「旧システムから新システムに更新しないとこれだけ生産性がダウンする」という話が少ないです。

どちらかと言うと「現場の仕事がこれだけ楽になる」という視点で、実際のシステム選定や要件定義が行われます。現場の要求を受け入れすぎて、機能が増え、システム投資額が膨れ上がるケースも後を絶ちません。もちろんユーザー満足度も大事ですが、生産性向上が第一義であることを肝に銘じましょう。

IT化のポイントは「事務労働からシステムへの置き換え」「事務労働(手作業)の消滅」です。自動仕訳・マスタ化・システム連携など、現在の事務労働量・労働時間を考慮して何をITに置き換えるかを考えます。

たとえば経理で言えば、本丸は会計システムではありません。基幹システムなど周辺システムを強化・改修したほうが、実際の手作業を減らすのに役立ちます。

7.代価として「社員の効用」を犠牲にする

水野課長「それじゃあ、山崎部長に掛け合って、システム投資を相談してます。」

木村係長「どうせなら、管理資料もシステム出力できるようにすればよくないですか?」

水野課長「ああ、それは助かるね。今は毎月担当者が各資料をExcelで作ってるから。」

松井室長「検討しましょう。ところで、今の資料はすべて本当に必要なんですか?」

水野課長「3年前に現場にアンケートを取ったら、すべて「必要」と回答がありました。でも、似たような資料もあるし、どこまで必要なのかは正直、判断がつきません。」

松井室長「必要か否かの2択で聞けば、かならず「必要」と回答します。資料改廃の判断ポイントは必要か否かではなく、現場にとってどれくらい有用なのかです。有用性の低いものは原則廃止です。」

水野課長「なるほど、現場が欲しいと言えば、こちらは作るしかないと思っていました。」

松井室長「管理部は現場部門のコンシェルジュではありません。現場の要望にすべて答えていたら、管理部の仕事は際限なく増えて事務の生産性は悪化します。」

水野課長「どれだけ各管理資料に有用性があるのか、再確認してみます。」

松井室長「これは生産性向上のために、「社員の効用」を犠牲にするという話です。管理部や事務方の特有の等価交換と言えるでしょう。」

・・・

日本企業には「営業などの直接部門の地位が高く、管理などの間接部門の地位が低い」という傾向があります。これが極端になると、間接部門が直接部門の「よろず承り係」になります。言ってみれば、ホテルのコンシェルジュ状態です。

「よろず承り係」ですから、仕事の種類は多様です。現場部門がやったことが間違っていないかを確認したり、忘れていればフォローして教えてあげたりもします。とても手間ひまがかかります。

ですからコンシェルジュ状態になっていると、管理部門は肥大化します。管理部門の人数が多くなると、全社組織の直間比率が悪化します。そうすると間接部門を削れという話が出てくるわけです。

問題は、間接部門の人数が多いことではなく、間接部門を「よろず承り係」にしている風土です。直接部門が管理部門に依存せず、自分のことは自分でやるセルフサービス化が進めば、自然と部門の直間比率は改善します。

管理部門の生産性向上を図るには、ここにメスを入れなければなりません。コンシェルジュをやめ、直接部門に自立を促します。今まで受けていたサービスや効用が減れば、現場部門からはクレームがでてくるでしょう。「前は普通にやってくれていたのに、どうしてやらなくなったのか」と。

事務労働の生産性向上で、「社員の効用」を犠牲にすることがもっとも難しいです。しかし、過剰サービスに陥って管理部門が肥大化していている会社ならば、絶対にやらなければならない改革です。もちろんこれは管理部門だけではできません。むしろ経営トップが主導してやることです。なぜなら会社の風土を一変する体質改善なのですから。

8.まとめ

木村係長「3年前の業務改革が失敗した理由が、だんだんわかってきましたよ。」

水野課長「たしかに。誰も不平不満がない改革など、土台無理なんですね。」

松井室長「事務の生産性向上の代償として、正確性・リスク・システム投資・社員の効用を説明しましたが、代価は他にもあります。」

木村係長「たとえば?」

松井室長「人材投資。経理など専門性の高いスキルが要求される分野では、担当者のレベルアップも生産性に直結します。あるいは、仕入先の効用。支払条件を統一したり簡素化したりすることで、当方の工数が減ります。」

水野課長「なるほど、誰かの犠牲を覚悟すれば、創意工夫でさまざまな生産性改善策が考えられそうですね。」

・・・

いかがでしたでしょうか。生産性向上にはそれに見合う代価を支払わなければなりません。等価交換の原則が成り立っています。何がしかの代償を払うことを覚悟できれば、きっと大胆な改革案をつくることができるでしょう。がんばってください。

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