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  1. コラム

売上が変わる!収益認識基準とは?

「収益認識に関する会計基準」(以下「収益基準」と言います)が公表されました。

これまで、日本にはハッキリとした売上の会計基準(詳しいルール)がありませんでした。「実現主義」と呼ばれる会計原則(憲法みたいなモノ)があるだけだったので、売上には様々な実務慣行が生まれ、例外が許容されてきました。

しかし今回、収益基準ができたことで、それらが認められなくなります。新基準にのっとって認識した金額、タイミングでしか売上を計上できません。収益基準によって自社の売上はどう変わるのかを解説します。

目次
1.収益基準の5ステップ 基本
2.収益基準の5ステップ 特例
3.まとめ

1.収益基準の5ステップ 基本

収益基準は「契約の識別」「履行義務の識別」「取引価格の算定」「取引価格の配分」「収益の認識」の5つのステップで構成され、それらを経て収益を認識します。

従来の日本基準は「実現主義」と呼ばれる会計原則があるだけです。実現主義は収益を認識(売上を計上)するタイミング)を定めています。しかし、収益基準のほかのステップに関しては明確な定めがありません。

ですから、まずは各ステップを理解することが収益基準を知る近道です。

ステップ1 契約の識別

「契約は契約でしょ!」と言いたくなりますが、収益基準では必ずしも「契約金額=売上対象」とはなりません。売上対象となるためには、次の5つの要件すべてを満たす必要があります。原文は固い表現なのでかんたんに書くと、

・契約があること
・商品が決まっていること
・支払条件が決まっていること
・経済的な意味があること
・対価の回収可能性が高いこと

です。特に最後は要注意です。顧客の支払う意思と能力がないなら、売上にはなりません。

たとえば、従来ならば、回収に問題がある先であっても契約金額が100円なら売上は100円です。回収不能分(40円)があれば、2年目に貸倒引当金40円を積みます。

しかし、収益基準になると契約金額が100円で回収可能性が60円なら売上は60円です。40円は売上と認められません。

ステップ2 履行義務の識別

「1契約=1商品」とは限りません。一つの契約でも複数の商品があったり、複数の契約でも合わせて一連の商品だったりします。履行義務の識別は収益単位を決める意味があります。

たとえば、ポイント制度。商品を100円買ったら1円分のポイントがつくとします。従来ならば売上は100円、1円分のポイントは引当金となります。

しかし、収益基準だと、このようなポイントは別な商品(履行義務)と考えます。本物の商品とは別に“ポイント”という架空の商品があると考えるわけです。

売上にできるのは、実際にお客さんに渡した「本物商品」だけです。「ポイント商品」はそのポイントが消費されない限り(履行義務が果たされない限り)、売上にはできません。

ステップ3 取引価格の算定

取引価格は、もらえる(と見込む)金額です。ただし、第三者のために回収する額を除きます。
たとえば、消費税。従来ならば税込処理が認められていました。しかし、消費税は国のために(第三者のために)お客さんから預かるものです。税込処理は認められません。

ステップ4 取引価格の配分

セット組み販売はよくあります。A商品100円、B商品50円の2つの商品があるとして、A・Bセットで120円で販売する、というケースです。A商品とB商品が同時に納品されるなら良いですが。納品がバラバラとなると、それぞれ売上をいくらにするかが問題です。

収益基準では、それぞれを単品で販売した時の価格(「独立販売価格」という)の比率で決めるとしています。この場合はA商品:B商品=2:1ですから、価格はそれぞれA商品80円、B商品40円となります。

取引価格の配分については、従来基準と収益基準とではそう変わらないでしょう。

ステップ5 収益の認識

従来の収益認識は「実現主義」でした。財の移転が完了したら売上を計上します。ですから「工事契約に関する会計基準」ができるまでは、長期工事でも“完成工事基準”が原則で“工事進行基準”が例外だったわけです。

収益基準では、契約における取引開始日に、履行義務が“一時点”で充足されるものか、あるいは“一定期間”にわたり充足されるものかを判定します。

一定期間

次のいずれかを満たすと一定期間です。

・義務を履行するにつれ、顧客が便益を享受する(例:保守契約)
・義務の履行で資産価値が増加するにつれ、顧客が資産を支配する(例:工事契約)
・義務を履行すると転用できない資産が生じ、完了部分は対価を請求できる(例:特注契約)

一定期間となると、履行義務の充足にかかる進捗度を見積もり、進捗度に基づき売上計上します。たとえば、入会金。従来ならば、返金しなくてよい入会金なら、入会時に一括売上計上でした。

しかし、収益基準では、入会したあとのサービスを提供するにつれ(義務を履行するにつれ)、顧客が便益を享受すると考えます。サービス期間が2年なら、次のようになります。

一時点

一時点となると、資産に対する支配を顧客に移転した時に売上計上します。この考え方は実現主義と同じです。しかし、従来は実務慣行に合わせ、例外が認められてきました。

たとえば、割賦販売。従来は、割賦金の回収期限の到来日、または入金日に売上計上も認められています。総額が100円で10年の割賦だとすると毎年10円売上です。

2.収益基準の5ステップ 特例

適用指針では、特定の状況又は取引11項目について個別に指針を定めています。これについては、自社に該当するものを押さえておきましょう。ステップごとに見ていきます。

ステップ2 履行義務の識別

ステップ2「履行義務の識別」に関するものは次の4つです。

・財又はサービスに対する保証
・本人と代理人の区分(総額表示または純額表示)
・追加の財又はサービスを取得するオプションの付与(ポイント制度等)
・ライセンスの供与

・財又はサービスに対する保証

保証には2つあるとしています。1つは、顧客に何らかのサービスを追加で提供する保証。もう1つは、単なるお買い上げ商品の機能を担保する保証です(電化製品を買ったら、1年メーカー保証がつくみたいなモノ)。前者は“保証サービス”という別な商品(履行義務)と考えて取引価格を配分しますが、後者の“機能保証”は別な商品(履行義務)ではないので、収益基準の対象外としています。

・本人と代理人の区分(総額表示または純額表示)

第三者のためか否かを判断する際は、3つの指標を考慮します(適用指針47)。これも原文が固いのでかんたんに書きますが、

・商品を提供する責任があること
・在庫リスク(提供後は返品リスク)を有していること
・価格を自分で決められること

です。本人ならば総額で売上です。代理人ならば取引は手配であり、純額(手数料のみ)で売上となります。

・追加の財又はサービスを取得するオプションの付与(ポイント制度等)

これは、「1-2 履行義務の識別」で述べたポイント制度の話です。商品を購入したらついてくるポイントは、別な商品(履行義務)と考えます。取引価格は、お客さんに渡した「本物商品」と「ポイント商品」に割り振られ、ポイントは消費されない限り(履行義務が果たされない限り)、売上にはできません。

・ライセンスの供与

ライセンスが独立したモノか、商品を買った時に附随するモノか、で処理が異なります。ライセンスが独立したモノだと、ライセンスだけで「一時点」か「一定の期間」かを検討します。「一定の期間」だと売上を一括計上できず、権利期間にわたって計上することになります。商品を買った時に附随するモノだと、その商品と同じ処理になります。商品が「一時点」なら「一時点」、「一定の期間」なら「一定の期間」です。

ステップ3 取引価格の算定

ステップ3「取引価格の算定」に関するものは次の1つです。

・返品権付きの販売

返品権付き販売とは、商品を返品して次のことができる販売を言います。

・全額または一部の返金
・値引き
・商品の交換

従来ならば、商品は全額売上計上し、返品に重要性がある場合に限って、返品調整引当金を計上していました。収益基準では、返品が予想される分は最初から売上にできません。

ステップ5 収益の認識

ステップ5「収益の認識」に関するものは次の6つです。

・顧客により行使されない権利(商品券等)
・返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払
・買戻契約
・委託販売契約
・請求済未出荷契約
・顧客による検収

・顧客により行使されない権利(商品券等)

商品券等の金券は、すべて行使されるとは限りません。必ず未行使分が発生します。従来ならば、金券使用時に売上を計上し、未行使分は一定期間を経過後に雑収入処理していました。収益基準になると、金券使用額だけでなく、未行使分も金券使用のパターンと比例的に売上を認識します。

・返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払

返金不要な支払としては、スポーツクラブ会員契約の入会手数料、電気通信契約の加入手数料、サービス契約のセットアップ手数料、供給契約の当初手数料等があげられます。『1-5 収益の認識(5ステップ)』の再掲になりますが、従来ならば、返金しなくてよい入会金は、入会時に一括売上計上でした。しかし、収益基準では入会したあとのサービス(2年)を提供するにつれ(義務を履行するにつれ)、顧客が便益を享受すると考えます。

なお、入会金が初期費用をまかなうものであれば、その分は除外します。たとえば、コストが20円ならば、次のようになります。

・買戻契約

買戻契約とは、自社に販売した商品を買い戻す権利(コール・オプション)または義務(先渡契約)がある取引です。収益基準では、顧客は支配を獲得していない(売上取引ではない)としています。販売価格と買戻価格を比べ、次の取引として処理します。なお、自社が部品メーカーに材料を支給し、その加工部品を自社が仕入れる有償支給取引においては、一部代替的な取扱いを定めています。原則どおり売上計上はできませんが、個別財務諸表上の材料(支給品)は消滅を認識できます。

・販売価格>買戻価格 → リース取引
・販売価格<買戻価格 → 金融取引

・委託販売契約

収益基準では、委託販売か否かを判断する指標を3つ定めています。委託販売は、従来も新基準も変わらず委託先が販売した時に売上計上します。ただ、従来認められていた仕切精算書の到着日に売上計上する簡便法は、収益基準では認められなくなります。

・委託先が顧客に売るまで、自社が商品を支配している
・自社が委託先から商品を返品させたり、別な先に販売したりできる
・委託先が売れ残り商品を買い切る義務がないこと

・請求済未出荷契約

請求済未出荷契約は、販売はしたが、顧客の要請で自社の倉庫に商品を保管しておく契約です。収益基準では、請求済未出荷契約が4つの要件をすべて満たす時、売上計上できると定めています。要件が明確化されたことにより、これまでより厳密に判断されるでしょう。

・合理的な理由がある(顧客の要望など)
・自社商品と預り商品が分別保管されている
・顧客が望めばいつでも出荷できる
・預り品を自社で使用したり、他に転売したりできないようになっている

・顧客による検収

収益基準によると、検収が形式的な場合、検収前でも商品の移転が完了していれば売上計上できます。形式的な場合とは、所定の品目、数量、大きさ、重量など、合意された仕様に従っていると客観的に判断できるときです。一方、試用期間があったり、客観的には判断できなかったりする場合は、検収が終わるまで売上計上できません。従来の「出荷基準」は、出荷時と着荷日(移転完了日)に重要な差異はないので、検収が形式的な場合にかぎり認められます。(適用指針98)

3.まとめ

収益基準を理解するために、まず5つのステップ「契約の識別」「履行義務の識別」「取引価格の算定」「取引価格の配分」「収益の認識」を説明しました。それぞれのステップで従来の会計処理と違う部分があったことが、おわかりいただけたと思います。

その上で個別の11論点を説明しました。実務に直結するところだと思いますので、新基準に基づいてどのように対策するか、どこまでやるかの当たりを掴むことができれば幸いです。

さらにくわしく収益基準を知りたい方は、弊所の季刊誌、経営のしくみ別冊 Vol.4 売上が変わる!はじめての収益認識基準(記事公開中)をご覧ください。

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