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  1. 経営のしくみ別冊

Vol.4 売上が変わる!はじめての収益認識基準

「経営のしくみ別冊」は、弊所が発行している季刊誌です。
この記事は、Vol.3 2019.1「売上が変わる!はじめての収益認識基準」です。

はじめに

収益認識基準の登場で企業の売上の考え方が大きく変わります。

これまでは「商品を引き渡した時点」、あるいは「サービスが完了した時点」で、売上になりました。売上を計上するのに何か特別なことを考える必要はありませんでした。

これに対して、新基準は売上計上に至るまでに5つのステップを置きます。「契約の識別」「履行義務の識別」「取引価格の算定」「価格の配分」「収益の認識」の5つです。新基準では、これらのステップを経ることではじめて売上を認識できます。

なぜ、売上を確定するのに5つのステップを置いたのか? それがわかると新基準の考え方が見えてきます。

本レポートは、はじめて収益認識基準を学ぶ経営層やビジネスリーダーに向けて書きました。

新基準はいったいどんな基準なのか? 自社の売上はどうなるか? 業務やシステムはどう対応していくべきか? 収益認識基準の骨子を理解するために、ぜひ本レポートをお読みください。

目次

1.新基準が目指したもの
2.何を売上対象とするか?
3.売上をいくらにするか?
4.単品価格をいくらにするか?
5.いつ売上を計上するか?
6.会社の売上影響を予測する
7.経営管理として検討すべき論点

1.新基準が目指したもの

上場企業の鶴亀商事は年商200億円の小売業です。2年後の収益認識基準に備えて、経理部内に対策チームをつくりました。このレポートは経理部の佐藤課長(CPAの資格を持っている)と高橋君(4年目の若手)の会話を軸に進んでいきます。

・・・

高橋君「いやあ、参りました。僕が収益認識基準対策チームに入るなんて…」

佐藤課長「何を言っているの? 新基準を勉強するチャンスだろう。喜ばなくちゃ。」

高橋君「でも、基準と適用指針を読みましたが相当難しかったです。たかだか売上を決めるのに、何であんなに難しくしたんですかね?」

佐藤課長「それには理由があるんだよ。まず新基準の目的を知らないとね。」

・・・

日本には、これまで包括的な売上基準はありませんでした。売上に関しては企業会計原則で定められた「実現主義」と呼ばれる原則だけです。

実現主義の原則:売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。

実現とは、①財・サービスの引渡しが完了し、②売上債権が確定した時を言います。しかし、業種や会社によって“実現”のとらえ方が多少異なっていました。ビジネスモデル・契約形態・商慣習などが違うため、完全には一律ではなかったわけです。

さらに最近はITを活用した新しいビジネスが続々と登場しています。従来型のビジネスには無かった新しいビジネスモデルや契約形態を持ち、売上が急成長します。そのため、ルールづくりや商慣習が追い付かず会計上もっとも大事な「売上高」が不安定な状態になったりします。

そこで、収益認識基準は“万能な基準”を目指しました。どんな会社・業種でも同じように使え、まだ見ぬビジネスにも対応できる万能な売上基準をつくろうとしたわけです。

・・・

高橋君「なるほど、収益認識基準が万能な基準を目指したことはわかりました。でも、それが“5ステップ”でしたっけ? どうしてそういう複雑なことになるのですか?」

佐藤課長「実現主義は、会社が取引先と結んだ契約に基づいて商品と金額を決め、売上を計上する。でも、契約内容は取引・会社・業種によって変わってくるよね。」

高橋君「そうですね。」

佐藤課長「たとえば、同じ内容の取引なのに、一方の契約には「商品」として書かれていて、別な契約には記載がなく別な商品を買ってくれたオマケだったら、どうする?」

高橋君「商品と書かれたほうは売上となりますが、オマケは売上になりません。」

佐藤課長「同じ内容の取引でも、契約によって売上になったりならなかったり、金額が違ったりすると困るだろう?」

高橋君「たしかに処理がバラバラになってしまいます。」

佐藤課長「そういうこと。だから、収益認識基準は契約内容を鵜呑みにはせず、収益を認識する前に取引を検証することにしたんだ」

高橋君「なるほど、それが5ステップなんですね。」

・・・

収益認識基準は5つのステップを設けました。「契約の識別」「履行義務の識別」「取引価格の算定」「価格の配分」「収益の認識」です。これらのステップは取引の実態を捉え、同じ売上処理になるように、取引をそろえるためにあります。

それでは次に適用指針の【設例1】に基づいて各ステップの内容を見ていきましょう。

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