2025年3月期決算対策:改正企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」の影響

はじめに

2022年10月28日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、改正企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」を公表しました。本改正は、日本の会計基準をより透明性の高いものとし、企業の財務報告の一貫性を確保することを目的としています。本記事では、2025年3月期決算に向けた本改正の主な内容とその影響について解説します。

1. 改正の背景

今回の改正は、2018年に行われた税効果会計に関する会計基準の見直しを受け、追加的な論点を整理する目的で実施されました。特に、以下の2つの点に焦点が当てられました。

  1. その他の包括利益に対して課税される法人税等の会計処理
  2. グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に関する税効果会計の取り扱い

2. 主な改正内容

2.1 その他の包括利益に対する課税の会計処理

これまで、法人税・住民税・事業税等の課税所得は損益計算書に計上されていましたが、取引の一部がその他の包括利益に計上されているにもかかわらず、対応する税額が損益計算書に含まれるという問題がありました。

今回の改正では、法人税等の計上区分の原則を見直し、発生源泉となる取引に応じて、税額を損益、株主資本、その他の包括利益に区分することが求められます。これにより、税引前当期純利益と税金費用の対応関係が明確になり、財務情報の一貫性が向上します。

2.2 グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却

グループ法人税制が適用される場合、100%子会社間での株式売却において、売却損益が課税所得から繰り延べられることがあります。従来の会計処理では、売却元企業に一時差異が発生し、繰延税金資産または負債が計上されていましたが、連結決算手続きではこれが修正されませんでした。

今回の改正では、税引前当期純利益と税金費用の適切な対応を図るため、

  • 売却時の繰延税金資産・負債を連結決算で取り崩す
  • 売却株式が再売却された際に、税金費用を計上する

といった新たな処理が導入されました。

3. 適用時期と経過措置

本改正の適用時期は、

  • 原則適用:2024年4月1日以降開始する連結会計年度および事業年度の期首から(2025年3月期決算より適用)
  • 早期適用:2023年4月1日以降開始する連結会計年度および事業年度の期首から

また、適用初年度の経過措置として、累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する方法が認められています。

4. まとめ

本改正は、税金費用と財務報告の整合性を向上させる重要な一歩です。企業は、2025年3月期決算に向け、新たな会計処理に対応するために、早期の準備が求められます。また、財務報告の透明性が高まることで、投資家やステークホルダーにとっても、より信頼性の高い財務情報が提供されることが期待されます。