すべてのリースを「見える化」する時代へ
2027年4月から、日本でも新しいリース会計基準(企業会計基準第34号)が始まります。早ければ2025年4月からの早期適用も可能ですが、多くの企業は数年以内に対応を迫られます。
この基準のポイントは、「ほとんどすべてのリースや賃貸借契約を貸借対照表に載せる」ことです。これまでオペレーティング・リースとして費用処理してきたものも、資産(使用権資産)と負債(リース負債)として計上します。
従来との違いは?
従来 | 新基準 |
---|---|
契約形態で判定(契約書に「リース」とあれば対象) | 実質で判定(契約書に「リース」となくても対象の場合あり) |
オペレーティング・リースは費用処理のみ(オフバランス) | 原則すべて資産・負債計上(オンバランス) |
金額や期間の基準(90%ルール・75%ルール)あり | そうした基準は廃止、支配権や使用権に着目 |
対象になる例
- 賃貸オフィスや店舗
- コピー機やサーバーのリース
- 仕入先が自社専用に保有する金型や製造装置
- 自社敷地内に設置された取引先所有の設備
経営に与える影響
(1) 財務指標の変化
- 資産と負債が増えるため、自己資本比率が低下する可能性あり。
- 借入契約の財務制限条項(コベナンツ)に影響するケースも。
(2) 利益のパターンが変わる
- 従来はリース料を毎期同額費用化していたが、新基準では減価償却費+利息費用に分かれる。
- 初期は利息費用が大きく、前半の方が費用が重くなる傾向。
(3) 契約条件が数値に直結
- 延長オプションや解約オプションの有無・条件がリース期間や負債額に影響。
- 実質的に長期利用する場合は、契約期間以上の年数を会計に反映することも。
今からやるべき準備
ステップ1:契約の棚卸し
- 賃借・リース・実質リース契約を全社で洗い出す。
- 「契約書にリースと書いてないから対象外」と思わないこと。
- 勘定科目や請求書から候補を抽出 → 現場確認。
ステップ2:財務影響の試算
- 自己資本比率、ROA、EBITDAなどへの影響を試算。
- 金融機関との契約条件(財務制限条項)に影響が出るかも確認。
ステップ3:社内ルールとシステム整備
- 契約情報の台帳化、変更時の経理連絡ルールを構築。
- 会計システムやエクセル計算モデルでのPV計算・利息法配分準備。
CFO視点でのポイント
- 短期リース(12か月以内)や少額リースは例外的にオフバランス可能
→ 事務負担を減らすため、例外基準の活用方針を決める。 - 設備投資とリースの比較基準が変わる
→ 「オフバランスだからリースにする」という発想は通用しなくなる。 - 契約交渉の段階で財務影響を考慮
→ 契約期間やオプション条件の設定が、貸借対照表や利益計上に直結。
まとめ
新リース会計基準は、単なる会計処理の変更ではなく、企業の財務の見え方と経営判断の基準を変える制度です。
CFOとしては、
- 契約の実態を早期に洗い出す
- 財務への影響を把握する
- 社内ルールと情報共有体制を整える
この3つを早めに着手することが、スムーズな移行と余計な混乱を防ぐ鍵になります。