はじめに
2024年12月27日に閣議決定された「令和7年度税制改正の大綱」において、防衛力強化のための財源確保策として防衛特別法人税(仮称)が創設されることが掲げられました。本税制は、2026年4月1日以降に開始する事業年度から適用される予定ですが、2025年3月31日決算における税効果会計にどのような影響を与えるのかが重要な論点となります。
本記事では、2025年3月31日決算における防衛特別法人税の取扱いについて、企業会計基準委員会(ASBJ)の公表文書をもとに解説します。
防衛特別法人税とは?
防衛特別法人税は、法人税額から500万円を控除した額を課税標準とし、税率4%の付加税として課される新たな法人税の一種です。この税制は、2026年4月1日以降に開始する事業年度から適用される予定であり、企業の納税義務が発生します。
2025年3月期決算における影響
1. 当期の法人税等への影響はない
防衛特別法人税は2026年4月1日以降に適用されるため、2025年3月31日に終了する事業年度において、当期の法人税費用には直接的な影響はありません。
2. 税効果会計の適用
しかし、税効果会計の観点からは、2025年3月31日までに改正税法が成立した場合、2025年3月期決算において繰延税金資産および繰延税金負債の計算に反映する必要があります。
企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」では、決算日において国会で成立している税法の内容を考慮することが求められています。したがって、
- 2025年3月31日までに防衛特別法人税が法制化された場合:
- 繰延税金資産および繰延税金負債の計算に、防衛特別法人税を考慮する。
- 法定実効税率に防衛特別法人税率を加味する必要がある。
- 2025年3月31日時点で法案が未成立の場合:
- 防衛特別法人税を考慮する必要はない。
3. 東京都の法定実効税率の変化
現在の東京都の法定実効税率は 30.62% です。この計算は以下の内訳によります。
- 法人税率:23.2%
- 地方法人税率:10.3%
- 住民税率:10.4%
- 事業税率:1.18%
- 事業税率(標準税率):1.0%
- 特別法人事業税率:260.00%
防衛特別法人税(4%)が追加されると、東京都の法定実効税率は 31.52% になる可能性があります。

企業が取るべき対応
1. 税効果会計の影響分析
2025年3月31日までに改正税法が成立するかどうかを確認し、成立した場合には防衛特別法人税を繰延税金資産・負債の計算に反映する準備を行う必要があります。
2. 法定実効税率の見直し
防衛特別法人税が成立した場合、各社の税率が変更される可能性があるため、実効税率の見直しを行い、財務諸表に適切に反映させる必要があります。
3. グループ通算制度適用企業への影響検討
グループ通算制度を適用している企業は、グループ全体の税率計算に影響を与える可能性があるため、慎重に対応する必要があります。
まとめ
防衛特別法人税は、2026年4月1日以降の事業年度に適用される新たな付加税ですが、2025年3月31日までに改正税法が成立した場合、税効果会計の適用に影響を与える可能性があります。
企業は、決算日までの法改正の動向を注視し、適切な対応を準備することが重要です。特に、税効果会計における繰延税金資産・負債の計算への影響を慎重に評価し、財務報告の透明性を確保するための準備を進めましょう。
今後の税制改正の進展を見守りつつ、2025年3月期決算に向けた適切な準備を行うことが求められます。