企業の収益が低下すると、経営の安定化のために固定費の削減が求められます。しかし、多くの企業で固定費削減が思うように進まない理由の一つは、部門長が「どの費用を削減すればよいのか」明確に把握できていないことです。
従来の部門別予算管理では、複雑な費用配賦や付け替えが行われることが多く、実際の支出がどのように発生しているのかが不透明になりがちです。その結果、部門長が削減努力をしても、他部門からの配賦によって効果が薄れ、モチベーションが低下してしまいます。
本記事では、効果的な固定費削減を実現するための新しい予算管理のアプローチを紹介します。
固定費削減が進まない理由
固定費削減を進める際に、多くの企業が直面する課題には以下のようなものがあります。
- 費用の透明性が低い:部門間の費用配賦が多く、自部門で発生している純粋な固定費がわかりにくい。
- 削減のインセンティブがない:削減努力をしても、他部門からの費用配賦によって成果が見えにくい。
- 固定費と変動費が混同されている:売上と連動しない固定費の削減が進みにくい。
- 投資と経費が区別されていない:必要な投資まで削減されてしまい、長期的な成長が阻害される。
これらの問題を解決するためには、予算管理の仕組みを根本から見直す必要があります。
効果的な固定費削減のための予算管理のポイント
固定費削減を実現するためには、予算管理の仕組みをシンプルかつ効果的にすることが重要です。具体的には、以下の3つのポイントに注目します。
1. 費用配賦を排除し、発生ベースで管理する
部門別の損益計算において、費用配賦や付け替えを行うと、部門ごとの実際の支出が見えにくくなります。そのため、次のような対策を講じます。
- 純粋な固定費のみを管理対象とする:部門ごとに発生する費用を明確にし、削減の責任を明確化。
- 配賦を減らすことで、部門長が自部門の支出を把握しやすくする。
- 支出をコントロールする権限を承認者に明確に持たせる。
2. 固定予算から変動予算へ切り替える
売上の減少に対して固定費を維持し続けると、企業の収益構造が悪化します。そのため、固定費の一部を変動費に切り替え、売上と比例した予算管理を行います。
- 売上に応じた変動費管理を導入:固定費を可能な限り変動費化し、売上に応じたコスト構造を実現。
- 人件費や設備維持費の一部を柔軟に調整できる仕組みを導入。
- 売上の変動に対応できる予算構成を作ることで、財務の健全性を維持。
3. 投資予算と経費予算を分別する
経費削減のプレッシャーが強いと、部門によっては短期的なコスト削減のために必要な投資まで削るケースが出てきます。これを防ぐために、以下の対応を行います。
- 経費と投資を分けて管理し、長期的な成長に必要な支出を確保。
- 経費削減の評価指標と投資判断を別々に行うことで、財務健全性を維持。
- 経営企画部が投資と経費の管理ルールを明確に策定し、無駄な削減を防ぐ。
予算管理改革の成果
この新しい予算管理の仕組みを導入したことで、以下のような具体的な成果が得られました。
1. 費用削減の透明性が向上
- 費用配賦を排除したことで、部門ごとの支出が明確になり、削減のインセンティブが生まれた。
- 各部門長が自部門のコスト構造を理解し、適切な削減策を実行できるようになった。
2. 変動費化により、売上減少時のコスト対応が柔軟に
- 売上に応じて調整できる費用の割合が増えたことで、収益変動への対応力が向上。
- 固定費の圧縮が可能になり、企業の財務体質が改善された。
3. 必要な投資が確保され、成長戦略が維持
- 投資と経費を分けることで、長期的な成長に必要な支出が削減されることを防止。
- 財務管理の効率が向上し、経営企画部からも高評価を得た。
まとめ
固定費削減を成功させるためには、単なるコストカットではなく、企業の成長を見据えた予算管理の改革が必要です。
- 費用配賦をなくし、発生ベースで管理することで、透明性を向上させる。
- 固定費から変動費へ切り替え、売上に応じた柔軟なコスト管理を行う。
- 投資と経費を分別し、短期的なコスト削減の影響を最小限に抑える。
このような新しい予算管理の仕組みを導入することで、固定費削減を実現し、企業の財務基盤を強化することが可能になります。ぜひ、あなたの企業でも実践してみてください。