業務改革プロジェクトでは、現状の業務フローを把握するためにヒアリングが欠かせません。しかし、「どこまで詳細に業務フローを洗い出すべきか?」という点で悩むケースも多いのではないでしょうか。
特に、限られた期間内(例えば3か月)で、複数の拠点や部門を対象とするプロジェクトでは、効率的かつ戦略的にヒアリングを行うことが求められます。本記事では、業種を問わず幅広い企業において活用できる、業務改革に向けたヒアリングの進め方と、その際に意識すべき“深さ”のバランスについて解説します。
目的に立ち返る:「業務改革に向けた課題の把握」
業務ヒアリングの目的は、現場の状況を詳細に記録することではなく、業務改革に資する課題を発見することです。そのため、闇雲にすべての作業を洗い出すのではなく、目的に即した情報収集がカギとなります。
2段階アプローチで効率よく全体像と本質をつかむ
ステップ1:全体を俯瞰する「高レベル業務フロー」
まずは、対象部門全体の業務の流れを大づかみに把握します。これにより、複数拠点やチームに共通する業務構造や連携ポイントを見つけ出すことができます。
- 部門間のやり取り(例:顧客対応 → 受注処理 → 商品手配 → 請求・納品 など)
- 使用しているシステムや帳票の流れ
- 各プロセスにかかる時間やピーク時間帯
この段階では、「深さ」よりも「広さ」を重視します。複数拠点で共通している流れを整理することで、汎用性の高い改善策の土台が作れます。
ステップ2:代表業務を選び「詳細に深掘り」
次に、特に課題が顕在化している業務をピックアップして、詳細にヒアリングを行います。対象は、
- 時間がかかっている業務
- ミスが多発している業務
- 属人化している業務
具体的には、
- 作業の手順・使用ツール・帳票
- 手間や待ち時間の原因
- 判断基準や対応ルール などを詳細に確認し、「なぜ手間なのか」「なぜ時間がかかるのか」といった本質的な課題の仮説を掘り下げていきます。
拠点や部門の中から1〜2か所を代表例として選び、深掘りを行うのが現実的かつ効果的です。
バランスを取るヒアリングの進め方
業務ヒアリングは「全体の構造把握」と「重点業務の深掘り」の2つをバランスよく行うことで、広い視点と具体的な改善策の両方を得られます。
推奨の進め方
- 高レベル業務フローを全体で確認
- 拠点や部門間の違いを把握し、共通点と差異を整理
- 詳細ヒアリングは代表拠点・重点業務に絞る
- 例:受注処理、在庫確認、クレーム対応、請求処理など(※業種に応じて選定)
- 明らかに時間やミスが集中している部分を優先
この進め方により、時間・コスト・分析の深さのバランスがとれ、実効性の高い業務改革につながります。
まとめ
業種や規模を問わず、業務改革のためのヒアリングでは、限られたリソースの中で最大限の成果を出すために、「全体俯瞰」と「重点深掘り」の2段階アプローチを取り入れることが有効です。
拠点や部門に共通する流れを押さえつつ、課題の大きい業務を詳細に分析することで、汎用性がありながら実行可能な改善策を導き出すことができます。
詳細化のレベルを見誤らず、目的に沿った情報収集を意識して、改革につながるヒアリングを進めていきましょう。