企業が全社システムを刷新する際には、多大なコストと時間がかかります。新システムがうまく機能しなければ、事業全体に深刻な影響を及ぼす可能性もあります。そのため、システム導入の順番を誤らず、着実に進めることが重要です。
昨今のIT業界では、AI・ビッグデータ・IoT・DX(デジタルトランスフォーメーション)・5Gなどの最先端技術が話題に上ることが多く、企業経営者の間でも「自社も早く導入しなければ」と焦る気持ちが生まれがちです。しかし、中堅企業にとって最も重要なのは、まず基盤をしっかり固めること。すなわち、業務の生産性を向上させることが先決です。
では、どのような順番で業務システムを導入・刷新していくべきなのでしょうか?
1. 二重入力・三重入力の排除
複数のシステム間でデータ入力が重複することは、業務の非効率を生む大きな要因です。まずは、以下のようなツールを活用し、入力作業のムダをなくしましょう。
- EDI(電子データ交換):企業間取引のデータをデジタル化し、手入力を削減。
- RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション):定型業務を自動化し、作業負担を軽減。
- EAI(企業アプリケーション統合):異なるシステムを連携させ、データの一元管理を実現。
これらのツールを導入することで、業務の効率化と人的ミスの削減が可能になります。
2. 組織・人事関連の業務改善
次に取り組むべきは、人事や勤怠管理、ワークフローのIT化です。手作業が多く、非効率になりがちな業務をシステム化することで、生産性を大幅に向上させることができます。
- 人事管理システム:社員データの一元管理、評価制度のデジタル化、労務管理の効率化。
- 勤怠管理システム:出勤・退勤データの自動収集、休暇管理、シフト調整。
- ワークフローシステム:社内の申請・承認フローをデジタル化し、迅速な意思決定を実現。
これらを先に導入しておけば、次期システムのリプレイス時にも無駄にならず、そのまま活用できる可能性が高いでしょう。
3. 社内コミュニケーションの改善
社内の情報共有がスムーズでないと、業務の進行が遅れ、意思決定にも影響を及ぼします。そのため、コミュニケーションの改善も欠かせません。
- ビジネスチャットツールの導入
- 社内メールを減らし、迅速な情報共有を実現。
- 部門間の連携強化。
- 外部パートナーとのコミュニケーション効率化。
このようなツールは、業務改善の効果が高いだけでなく、次期基幹システムとの親和性も高く、導入しておいて損はありません。
4. 基幹システムと会計システムの刷新
業務の効率化を進めた後、いよいよ企業の基幹システムと会計システムのリプレイスに取り組みます。これらは、企業の業務全体を支える「基盤」となるため、十分な準備と計画が必要です。
- 基幹システム(ERP):販売管理・在庫管理・生産管理など、企業の根幹業務を統合。
- 会計システム:財務データの正確な管理、経営判断の迅速化。
基幹システムや会計システムの刷新には多くの時間とコストがかかるため、段階的に進めることが重要です。
5. 最新技術への挑戦(AI・DX・IoT など)
最後に、業務の生産性向上が一定のレベルに達したら、AI・DX・IoT などの最新技術の導入を検討します。最先端の技術は、企業の競争力を高める可能性がありますが、業務の基盤が整っていなければ活用しきれません。
- AIの活用:データ分析、予測分析、自動応答チャットボットなど。
- DX(デジタルトランスフォーメーション):ビジネスモデルの変革、データ駆動型経営の推進。
- IoTの活用:製造業のスマートファクトリー化、物流の最適化。
これらの技術を導入することで、さらなる業務効率化や新しい価値創出につながります。
まとめ:システム導入の正しい順番とは?
業務システムを導入・刷新する際には、以下の順番で進めることが成功の鍵となります。
- 二重入力・三重入力の排除(EDI・RPA・EAI の活用)
- 人事・勤怠・ワークフローのIT化
- 社内コミュニケーションの改善(ビジネスチャット導入)
- 基幹システム・会計システムの刷新
- 最新技術(AI・DX・IoT)の活用
最新技術に目を奪われるのではなく、まずは業務の基盤をしっかり固めることが重要です。業務の生産性を向上させ、その上で新しい技術を活用して競争力を高めていきましょう。