第二の東芝を生まないために!売上管理の課題と解決策

企業経営において、売上管理と利益目標の達成は極めて重要です。しかし、過度なプレッシャーや無理な目標設定が、不正や経営の混乱を引き起こすことがあります。その典型的な例が、2015年に発覚した東芝の不正会計問題です。

東芝のケースを中堅企業(年商100億円規模)に置き換えて考えることで、不適切な売上管理がどのような影響を及ぼすのかを見ていきます。

1. 東芝の不正会計問題とは?

① 背景と概要

東芝は2008年から2014年にかけて、累計1,518億円(派生的影響を含めると2,000億円超)の利益を不正に操作しました。その背景には、経営陣が「チャレンジ」と称して過度な業績改善を現場に要求し、適切な営業施策を講じる時間もないまま、短期的な数値達成を優先したことが挙げられます。

このようなプレッシャーが組織全体に広がると、現場は不正に手を染めざるを得なくなります。

② 中堅企業に置き換えた場合

東芝の年商4.8兆円を100億円規模の企業に換算すると、次のようになります。

  • 売上高:100億円
  • 営業利益:△1.5億円(小幅な赤字)
  • 純資産:32.3億円
  • 不正利益の累計:3億円(年度ごとに不正を積み重ねた)

特に2012年度には、単年度で1.7億円の不正を行っており、これは中堅企業にとっては極めて大きな金額です。

このレベルの不正が積み重なると、企業の健全な経営が揺らぎ、最終的には社会的信用を失うリスクが高まります。

2. なぜこのような問題が起きるのか?

① 過度な売上ノルマの弊害

企業の成長には目標設定が不可欠ですが、達成不可能な数値目標を一方的に課すと、管理職や現場に過度なプレッシャーがかかり、不適切な対応が生じる可能性があります。

  • 売上達成のために不正な売上計上を行う(架空売上、前倒し計上)
  • 無理な値引き販売を行い、後々の利益率が悪化する
  • 在庫や資産の評価を不正に操作する

東芝のケースでは、「チャレンジ」と称して高すぎる目標が設定され、現場が適正な対応を取れなくなったことが大きな問題でした。

② 数字管理だけに依存する経営の危険性

売上や利益の数値だけを重視し、現場の実態を把握しない経営は、企業を危険にさらします。

  • 目標達成のために投資を削減し、将来の成長を犠牲にする
  • 現場が疲弊し、優秀な人材が離職する
  • 短期的な数値に固執し、本来の経営戦略が機能しなくなる

このような状況が続くと、企業は徐々に競争力を失い、最終的に市場からの信頼を損ねることになります。

3. 健全な売上管理を行うためのポイント

① 現実的な目標設定を行う

売上目標を設定する際には、市場環境や競争状況、社内のリソースを考慮し、実現可能な数値を設定することが重要です。

  • 売上成長率は過去の実績や市場動向を踏まえて決める
  • 一律の売上目標を押し付けず、各部門・事業特性に応じた目標を設定する
  • 目標達成のための具体的な施策を準備し、実行可能な範囲で運用する

② 売上だけでなく、利益とキャッシュフローも重視する

売上高だけを追い求めるのではなく、利益率やキャッシュフローも管理することで、より健全な経営が可能になります。

  • 値引き販売が利益を圧迫していないかチェックする
  • 長期的な収益性を考慮し、単発の売上確保に走らない
  • 営業戦略として、顧客との長期的な関係構築を重視する

③ 透明性のある経営を実践する

不正を防ぐためには、企業文化として「透明性」を重視する姿勢が不可欠です。

  • 現場からのフィードバックを積極的に受け入れる仕組みを作る
  • 売上・利益の管理を社内でオープンにし、不適切な処理を防ぐ
  • 内部監査や第三者のチェックを適切に行う

特に、経営陣が「結果」だけでなく「プロセス」も評価する文化を作ることが、持続可能な企業成長には欠かせません。

4. まとめ:企業の成長を支える健全な売上管理とは?

東芝の不正会計問題は、単なる一企業の問題ではなく、売上管理のあり方を考え直す教訓として活かすべき事例です。

  • 過度な売上ノルマを避け、現実的な目標を設定する
  • 売上だけでなく、利益やキャッシュフローも管理する
  • 経営の透明性を確保し、不正を防ぐ仕組みを作る

短期的な売上目標達成にこだわるのではなく、長期的な成長と持続可能な経営を目指すことが、企業の競争力を高める鍵となります。

中堅企業の経営者・管理者の皆さんは、今こそ売上管理の在り方を見直し、より健全な経営を目指してみてはいかがでしょうか?