配賦とは何か?
配賦とは、一言でいえば「共通費をどこかに割り振る」会計技術です。制度会計においては原価計算の一部として使われ、管理会計においては部門別コストや製品別採算を整えるためによく使われます。共通費は誰がどれだけ使ったかを直接測れないため、人数や面積、作業時間などの基準を使って分配します。
ただし、配賦はあくまで“技術”であり、目的ではありません。目的を誤ると、数字がゆがむだけでなく、現場の不信感や組織の分断を生む危険性すらあります。
配賦には複数の種類があり、それぞれ別の目的を持つ
配賦と聞くと一つの概念のように思われがちですが、実は用途や目的が大きく異なる複数の種類があります。
製造現場で使われる配賦(原価計算領域)としては、工場の共通費を製造部門に配賦して部門別原価を精緻にする方法や、部門費を製品に配賦して製品別原価を正しくする方法があります。共通なのは、どちらも「製品別原価を正確にする」という明確な目的があることです。
一方、管理会計の領域では、全社共通費を各部門に配賦して部門別コストを見える化したり、間接部門費を営業部門や製造部門に配賦して“部門利益”をつくったりします。さらに、並列の部門間で費用付け替えを行う場合もあります。これらは制度会計には不要であり、管理目的のために会社独自で行っているものです。
配賦の混乱は、「どの配賦を、どんな目的で行っているのか」が曖昧なことから始まります。
配賦が誤った使われ方をすると、組織に大きな弊害を生む
ここからが実務で最も重要なポイントですが、配賦は便利な反面、誤って使われると現場に深刻な問題を生みます。
典型的な一つ目として、本社家賃を人数比で各部門に配賦するケースがあります。営業部はほぼ外出、管理部は常駐にもかかわらず、一律に人数比で家賃を負担させられると、部門長にとっては納得度が低くなります。これは部門長がコントロールできないコストであり、「部門責任」として扱うべきではありません。
二つ目として、新工場と旧工場で製品原価に差が出る場合があります。設備投資の影響で新工場の原価が高く見えると、営業が旧工場ばかりに生産を依頼し、現場と数字が分断されてしまうことがあります。こうした現象は、配賦が事実を正しく反映していない結果です。
三つ目として、部門間応援を費用付け替えで処理するケースです。A部門がB部門を支援した時間を配賦し始めると、経理に毎回報告が必要になり、月次決算の負荷が急増します。さらに、部門長同士の関係を悪化させ、組織に不要なストレスを生むこともあります。
こうした例に共通しているのは、「配賦のための配賦」であり、管理会計本来の目的から外れている点です。
部門長の責任範囲はどこまでか
配賦の妥当性を判断する際の重要な基準は、「そのコストを部門長がコントロールできるか」です。部門長が決められないコストまで背負わせると、どれだけ努力しても評価につながらない構造が生まれ、数字への納得度も管理会計への信頼も失われます。
例えば、以下のようなコストは部門長責任として扱うべきではないことが多いです。
・本社の家賃
・戦略的な設備投資の減価償却費
・法務・広報などの全社機能によるコスト
・間接部門の人数構成による固定的コスト
責任と権限が一致しない配賦が続けば、管理会計はむしろ組織の生産性を奪う存在になってしまいます。
配賦よりも重要なのは「設計」と「役割分担」である
配賦はあくまで道具であり、万能ではありません。配賦が乱用される背景には、組織構造や業務分掌の不整合が隠れていることが多くあります。
例えば、間接部門が肥大化し、製造や営業に対して支援が過剰になっている場合、配賦で調整するのではなく業務分掌を見直すべきです。また、恒常的に応援が行われている場合は、部門間支援の仕組みそのものに問題がある可能性があります。
配賦を見直すより前に、「組織は正しい役割分担になっているか」「部門境界線は適切か」を見直した方が、本質的な改善につながるケースが多いのです。
配賦は悪ではないが、使い方を誤れば組織を壊す
配賦は管理会計の重要な手法ですが、万能ではありません。正しく使えば経営判断を助けますが、誤って使えば組織の活力を奪い、数字への信頼を失わせます。
重要なのは次のポイントです。
・配賦は目的を明確にしたうえで使う
・部門長がコントロールできないコストは配賦しない
・部門間の支援は「お互い様」。恒常化するなら組織を見直す
管理のための管理ではなく、経営のための管理にするために、配賦の位置づけを正しく理解することが求められます。