「人手不足が深刻だ。」そんな言葉を聞かない日はありません。
しかし、私はこれから企業が直面するのは、人手不足だけではないと考えています。
今後、不足するものは人だけではありません。エネルギー。原材料。物流能力。さらには時間そのものまで、企業にとって貴重な経営資源になっていきます。
そして重要なのは、「不足すること」そのものではなく、「不足が前提の経営になること」です。
人手不足は始まりに過ぎない
日本では少子高齢化が進み、生産年齢人口は減少を続けています。これは景気の良し悪しとは関係ありません。構造的な変化です。
採用を強化しても人が集まらない。募集しても応募が来ない。現場のベテランが引退していく。こうした状況は今後も続く可能性が高いでしょう。
これまでの経営では、「仕事が増えたら人を増やす」という発想が一般的でした。
しかし今後は、「人を増やせない前提で経営する」必要があります。これは極めて大きな変化です。
エネルギーは当たり前ではなくなる
戦後の経済成長は、安価で安定したエネルギー供給に支えられてきました。工場も物流もオフィスも、十分なエネルギーが供給されることを前提に設計されています。
しかし近年はどうでしょうか。電力価格の上昇。燃料価格の高騰。地政学リスクによる供給不安。エネルギーコストは単なる経費ではなく、経営課題になりつつあります。
今後は、「エネルギーをどれだけ消費する事業か」という視点も重要になるでしょう。
原材料はいつでも手に入るとは限らない
製造業ではすでに実感している企業も多いと思います。以前なら数日で調達できたものが、数か月待ちになる。価格が突然上昇する。そもそも供給されない。そんなケースが珍しくなくなりました。
化学製品や包装資材の原料となるナフサもその一つです。ナフサは私たちの目には見えません。しかし、その先にはプラスチック製品があり、包装材があり、多くの工業製品があります。
もし供給が不安定になれば、影響は一部の業界にとどまりません。原材料の問題は、社会全体の問題になります。
物流能力も限られた資源になる
モノがあっても運べなければ意味がありません。
物流業界ではドライバー不足が深刻化しています。輸送コストは上昇し、配送リードタイムも長くなる傾向があります。
これまで企業は、「必要なときに届く」ことを前提に在庫を削減してきました。しかし、「必要なときに届かない」可能性が高まれば、経営の考え方そのものを見直す必要があります。
在庫の意味も変わります。サプライチェーンの設計も変わります。
本当に不足するのは「経営資源」である
ここまで、
- 人
- エネルギー
- 原材料
- 物流
について見てきました。
しかし本質は個別の問題ではありません。共通しているのは、すべてが経営資源であることです。そして、その経営資源が無限ではなくなってきているということです。
これまでの経営は、「どうやって売上を増やすか」が中心でした。しかし今後は、「限られた経営資源をどこに使うか」が中心になります。
同じ人員を使うなら、どの顧客に使うのか。同じ設備を使うなら、どの商品を作るのか。同じ原材料を使うなら、どの市場に投入するのか。
経営は次第に、資源配分のゲームへと変わっていきます。
不足は脅威であり、機会でもある
不足という言葉にはネガティブな印象があります。しかし見方を変えれば、不足は企業の実力が表れやすい環境でもあります。
誰でも材料が買える。誰でも人を採用できる。そんな環境では差がつきません。
しかし資源が限られたとき、何を優先し、何を諦めるか。その判断力こそが企業の競争力になります。
これからの経営は、拡大競争ではなく選択の競争になるのかもしれません。
次回予告
次回は、「売上至上主義の終焉」をテーマに考えます。売上を伸ばすことは本当に企業の成長なのでしょうか。
資源が限られる時代において、売上拡大と利益拡大は必ずしも同じ意味を持たなくなります。
これからの経営者が追うべき指標について考えてみたいと思います。