経営計画を立てる。予算を策定する。事業計画を作成する。そのとき、多くの企業が最初に考えるのは売上です。
来期は売上を何%伸ばすか。新規顧客を何社獲得するか。市場シェアをどこまで広げるか。長年にわたり、売上成長は企業経営の中心的な目標でした。
しかし、これからの時代も同じ考え方が通用するのでしょうか。私はそうとは限らないと考えています。
売上拡大は合理的だった
まず誤解しないでいただきたいのは、売上を伸ばすこと自体が悪いわけではありません。
前回までの記事で見てきたように、人材も確保できる。原材料も調達できる。設備投資も進められる。そうした環境では、売上を増やすことは利益を増やすこととほぼ同義でした。
100の仕事がある会社が120の仕事を受ける。そのために人を採用する。設備を増やす。結果として利益も増える。非常に合理的な成長モデルです。
多くの企業が成功したのも当然です。
しかし今は資源が足りない
問題は前提条件が変わったことです。現在、多くの企業が直面しているのは、受注不足ではなく供給能力不足です。
仕事はある。問い合わせもある。しかし対応する人がいない。生産能力が足りない。材料が確保できない。
こうした状況では、売上拡大と利益拡大は必ずしも一致しません。むしろ売上を追うことで利益を失うことすらあります。
売上100億円より利益10億円
極端な話をしてみましょう。
A社
- 売上100億円
- 利益1億円
B社
- 売上30億円
- 利益6億円
どちらが強い会社でしょうか。
もちろん業種や状況によります。しかし資源制約の時代には、B社の方が経営的に安定しているケースが少なくありません。
なぜなら、売上ではなく、利益を生み出す能力が重要だからです。人手が足りない時代に、利益の薄い仕事を大量に抱えることはリスクになります。
「売れる仕事」と「儲かる仕事」は違う
経営者が陥りやすい錯覚があります。それは、売れている仕事は良い仕事だ、という考え方です。
しかし実際には、売れる仕事と儲かる仕事は違います。
例えば、
- 手間がかかる
- クレーム対応が多い
- 値引き要求が厳しい
- 少量多品種で非効率
そんな仕事でも売上は作れます。しかし利益は残りません。
資源が無限にある時代なら、それでも問題は小さかったかもしれません。しかし今後は違います。
限られた人員や設備を使う以上、どの仕事に資源を投入するかが重要になります。
売上ではなく資源効率を見る
これから経営者が見るべきなのは、売上そのものではありません。
例えば、
- 一人当たり利益
- 顧客別利益
- 商品別利益
- 設備当たり利益
- 時間当たり利益
といった指標です。
つまり、どれだけ売ったかではなく、どれだけ効率よく利益を生み出したか。という視点です。
これは単なる数字の違いではありません。経営の考え方そのものの違いです。
「全部やる」が最も危険になる
人も足りない。時間も足りない。設備も足りない。そんな時代に最も危険なのは、すべての仕事を受けることです。
すべての顧客を大切にする。すべての商品を維持する。すべての案件を受注する。
一見すると理想的ですが、資源が限られる時代には企業を疲弊させます。
経営とは選択です。何をやるかだけでなく、何をやらないかを決めることです。
利益管理が経営の中心になる
こうした環境の中で重要になるのが利益管理です。
どの商品が利益を生んでいるのか。どの顧客が利益を生んでいるのか。どの業務が利益を失わせているのか。
これを把握できなければ、適切な資源配分はできません。
つまり、利益管理は経理のためではなく、経営判断のために必要になるのです。
次回予告
次回は、「顧客を選ぶ会社が勝つ」をテーマに考えます。
すべての顧客を追いかける時代は終わりつつあります。限られた経営資源を誰に使うのか。
顧客選択という視点から、これからの経営を考えてみたいと思います。