経営者同士の会話では、よく売上の話が出ます。
「売上が100億円を超えた」「来期は120億円を目指している」「業界トップクラスの規模になった」
売上は分かりやすい指標です。会社の成長を示す数字でもあります。
しかし、これからの時代において、本当に重要なのは売上規模なのでしょうか。
私はむしろ、規模より利益率の方が重要になると考えています。
なぜ企業は規模を追い求めるのか
これまで多くの企業は規模拡大を目指してきました。
理由は明確です。規模が大きくなるほど有利だったからです。
大量購入による仕入コストの低下。生産設備の稼働率向上。固定費の分散。知名度の向上。いわゆる「規模の経済」です。
市場が成長している時代には、売上を伸ばすことが利益を伸ばすことにつながりました。
そのため、「もっと大きくなる」ことが経営目標になったのです。
売上は大きいのに苦しい会社
しかし近年、こんな企業が増えています。
売上は過去最高。受注も好調。社員も忙しい。それなのに利益が残らない。資金繰りも楽ではない。
なぜでしょうか。答えは単純です。売上よりも利益の方が重要だからです。
売上が増えても、人件費が増える。外注費が増える。物流費が増える。原材料費が増える。結果として利益が残らないことがあります。
売上は会社を大きくしますが、利益は会社を強くします。この違いは非常に大きいのです。
利益率が高い会社は強い
利益率の高い会社には共通点があります。
値引き競争に巻き込まれにくい。顧客から選ばれている。無理な受注をしない。自社の強みが明確。
つまり、利益率の高さは競争力の結果でもあります。
利益率が高ければ、景気が悪化しても耐えられます。原材料価格が上昇しても対応できます。社員への投資もできます。設備投資もできます。
利益率は企業の体力そのものなのです。
売上100億円より利益率20%
極端な例を考えてみましょう。
A社
- 売上100億円
- 営業利益率2%
- 営業利益2億円
B社
- 売上20億円
- 営業利益率20%
- 営業利益4億円
売上だけを見るとA社の方が圧倒的に大きな会社です。しかし利益を見るとB社の方が大きい。さらに利益率が高いため、景気変動への耐性もあります。
資源制約の時代には、こうした企業の方が強い場合が少なくありません。
これからは「何%残るか」が重要
売上至上主義の時代は、「いくら売るか」がテーマでした。
しかし今後は、「いくら残るか」がテーマになります。
売上1億円を増やすより、利益率を2%改善する方が価値が大きいこともあります。
なぜなら、利益率改善は企業体質そのものを変えるからです。
利益率を上げるために必要なこと
利益率向上というと、すぐにコスト削減を思い浮かべる企業があります。
もちろんそれも重要です。しかし本質はそこではありません。
利益率向上とは、経営資源の使い方を最適化することです。
- 利益の出る顧客を増やす
- 利益の出る商品に集中する
- 利益の出る市場を選ぶ
- 利益の出ない業務をやめる
つまり、何を増やすかではなく、何に集中するかなのです。
経営者が見るべき数字も変わる
売上だけを見ていると、会社の本当の姿は見えません。
これから重要になるのは、
- 営業利益率
- 顧客別利益
- 商品別利益
- 案件別利益
- 一人当たり利益
といった数字です。
これらはすべて、限られた経営資源をどれだけ有効に使えているかを示しています。
つまり、利益率を見るということは、資源配分を見るということなのです。
大きな会社より強い会社へ
高度成長期には、大きいことが強さでした。しかし資源制約の時代には、強さの定義が変わります。
重要なのは、どれだけ売ったかではありません。限られた人材。限られた時間。限られた設備。それらを使ってどれだけ価値を生み出せるかです。
規模の競争から、収益性の競争へ。今、企業はその転換点に立っています。
次回予告
次回は、「在庫は悪なのか」をテーマに考えます。
長年、在庫は減らすべきものと考えられてきました。しかし供給が不安定になる時代において、その考え方は本当に正しいのでしょうか。
資源制約時代における在庫の意味を考えてみたいと思います。