ERPを導入したい。そんな相談を受けることがあります。理由を聞くと、多くの場合は似ています。
業務を効率化したい。Excel管理をなくしたい。入力作業を減らしたい。部門ごとにバラバラのシステムを統合したい。
もちろん、どれも重要な目的です。しかし私は最近、ERP導入の目的そのものが変わりつつあると感じています。
これからのERPは、効率化のためだけのシステムではありません。経営資源を最適に配分するためのシステムになるのです。
ERPは効率化のために導入されてきた
これまでERPは、業務の標準化、情報の一元化、処理の効率化を目的に導入されてきました。
販売管理。購買管理。在庫管理。生産管理。会計管理。これらを統合し、重複入力や手作業を減らす。これはERPの大きな価値でした。
そして実際、多くの企業で成果を上げてきました。
効率化だけでは競争力にならない
しかし、ここで考えてみたいことがあります。もしERPによって業務が10%効率化されたとして、それだけで企業は勝てるでしょうか。
競合も同じシステムを導入できます。同じ機能を利用できます。つまり効率化だけでは、持続的な競争優位になりにくいのです。
さらに言えば、人手不足や原材料不足が進む時代には、効率化だけでは解決できない問題が増えていきます。
本当に必要なのは「見える化」である
これからの経営者が知りたいのは、処理件数ではありません。
どの商品が利益を生んでいるのか。どの顧客が利益を生んでいるのか。どの事業に資源を投入すべきなのか。どこで利益を失っているのか。こうした情報です。
つまり、業務を処理することではなく、経営を判断することが重要になっています。
そして、そのためには正しいデータが必要です。
ERPは経営のセンサーになる
前回の記事で、KPIは資源配分のためにあるという話をしました。しかしKPIは突然生まれるわけではありません。現場のデータが必要です。
受注データ。原価データ。在庫データ。生産データ。購買データ。こうした情報を集め、つなぎ合わせることで初めて経営の姿が見えてきます。
ERPの本当の役割は、会社全体を見える化することなのです。
システム導入が失敗する理由
ERP導入が失敗する企業には共通点があります。システム導入そのものが目的になっているのです。
新しいシステムを入れる。古いシステムを置き換える。Excelをなくす。もちろん必要なことです。
しかし、その先に何を見たいのかが決まっていないことが少なくありません。結果として、システムは導入した。しかし経営は変わらない。そんな状況になります。
これからのERP導入で最初に考えるべきこと
私はERP導入を検討する企業に、まず次の問いを考えていただきたいと思っています。
経営者として、何を判断したいのか。どの顧客に資源を投入するのか。どの商品に集中するのか。どの事業を伸ばすのか。何をやめるのか。その判断に必要な情報は何なのか。
ここから逆算してシステムを考えるべきです。
ERPは経営戦略の一部になる
安い時代には、効率化が競争力でした。しかし資源制約時代には、資源配分が競争力になります。
するとERPの役割も変わります。業務処理システムから、経営判断システムへ。現場を管理するための仕組みから、経営資源を配分するための仕組みへ。
ERPは単なるIT投資ではなく、経営戦略の一部になっていくのです。
情報がある会社が強い
人材は限られる。設備も限られる。原材料も限られる。だからこそ、どこに資源を使うかを判断する力が重要になります。
そしてその判断を支えるのは情報です。正しい情報を持つ会社は、素早く意思決定できます。
正しい情報を持たない会社は、経験や勘に頼るしかありません。資源制約時代において、情報は経営資源そのものになるのです。
次回予告
次回は、「これから伸びる会社の共通点」をテーマに考えます。
ここまで見てきたように、経営環境は大きく変わりつつあります。そんな中で成長する企業にはどのような共通点があるのでしょうか。
資源制約時代を勝ち抜く企業の特徴を整理してみたいと思います。