原価計算改革の8つのステップ

原価計算は、製造業の経営判断を支える重要な情報基盤です。精度の高い原価情報があれば、適切な価格設定やコスト管理が可能となり、競争力のある経営が実現できます。以下に、弊所が提案する「原価計算改革の8つのステップ」を紹介します。

ステップ1:現行の原価計算を調査する

まずは現状を正確に把握することが原価計算改革の第一歩です。現行の原価計算フローや関連資料、システム構成を徹底的に調査し、課題を洗い出します。

ポイント

  • 原価情報の収集方法と精度
  • 生産管理システムや経営管理資料の内容
  • 引合時の原価見積方法とフロー

成果物例

  • 原価計算フローチャート
  • 経営管理・生産管理資料一覧
  • 原価見積フローチャート

ステップ2:組織・工程・製品の関係性を見直す

次に、組織構成や製造工程、製品(仕掛品を含む)の関係性を整理し、無駄や重複を見直します。沿革や将来の事業展開も踏まえた再構築を行うことで、効率的な組織体制を確立します。

ポイント

  • 各部門の業務内容を把握してボトルネックを発見
  • コスト削減の余地を見極める組織と工程の再配置

成果物例

  • 組織・工程・製品対応表
  • 改訂後の原価計算フロー

ステップ3:費目別計算を精緻化する

費目ごとの集計範囲や分類を見直し、開発費や営業支援費などの販管費も適切に整理します。特に、固定費と変動費の正確な分類は、価格戦略の基礎となります。

ポイント

  • 固定費と変動費の分類方法を見直し、透明性を向上
  • 実際原価と回収原価の比較・調整による経営精度の向上

成果物例

  • 原価費目ルール
  • 実際原価と回収原価の調整表

ステップ4:部門別計算を精緻化する

部門ごとの原価配賦方法を見直し、必要に応じて工程や作業単位に細分化します。これにより、正確な部門別原価計算が可能となり、改善計画の策定に役立てます。

ポイント

  • 部門間の配賦基準の妥当性
  • 各部門のコスト発生状況の透明化

成果物例

  • 部門原価表
  • 配賦ルール
  • 情報・データ収集一覧

ステップ5:製品別計算を精緻化する

工程や作業単位ごとのコスト発生形態を基に、製品別の原価配分ロジックを構築します。段取り費や加工費を分けて計算することで、より詳細なコスト管理が可能になります。

ポイント

  • 生産量やロットごとの原価配分方法
  • 加工費や段取り費の分離による透明なコスト算出

成果物例

  • 製品別原価計算表
  • 部門別生産能力一覧
  • 現場ヒアリングメモ

ステップ6:価格決定と生産管理の戦略を策定する

原価計算データを活用し、価格決定や生産管理の戦略を具体化します。精緻化された原価情報は、市場競争力を確保し、適切な経営判断に貢献します。

ポイント

  • 価格戦略案の策定と検証
  • 生産管理施策の具体化と効率化

成果物例

  • 価格決定戦略案
  • 生産管理戦略案

ステップ7:生産管理システムの見直し

新たな原価計算方法を効率的に運用するため、生産管理システムの見直しを行います。現行システムの課題を把握し、必要な機能やデータ項目を定義します。

ポイント

  • 現行システムの課題整理
  • IT環境改善による業務効率化

成果物例

  • 現行システム問題点一覧
  • 新システム構成案

ステップ8:新・原価計算方針書の作成

最後に、これまでの成果を基に新しい原価計算方針書を作成し、経営層や社内向け資料としてまとめます。この方針書は、今後の原価管理のガイドラインとして活用されます。

ポイント

  • 原価計算改革内容の要約
  • 改善計画とPDCAサイクル運用方法の提示

成果物例

  • 新・原価計算方針書

原価計算改革への第一歩

原価計算改革は、企業全体の競争力を高める重要な取り組みです。精度の高い原価情報は、適切な価格設定や効率的な生産管理を実現し、経営者の迅速な意思決定を支援します。この機会に、組織全体の原価管理を見直し、次なる成長ステージへと進んでいきましょう。