【事例】業務改革で管理部門の業務量を30%削減する方法

業務改革プロジェクトの始動

企業の成長には、組織全体の業務効率を見直し、生産性を向上させる取り組みが不可欠です。本記事では、ある製造業Z社が実施した管理部門の業務改革プロジェクトを紹介します。なお、本事例は、著者のコンサルティング実績を基にした複数の事例を組み合わせたフィクションです。具体的な社名や内容は実際のものではありません。


Z社は年商80億円の中堅製造業で、10年前は年商200億円弱を記録していましたが、その後は業績が低迷。しかし、最近は景気回復や円安効果もあり、売上が増加に転じています。この好機を活かすべく、社長は次なる成長へ向けて企業体質を改善する決断をしました。

社内を見渡すと、20年以上大規模なシステム投資が行われておらず、紙の伝票や手書きの書類が溢れています。製造部門は過去5年間で20%の人員削減を行った一方で、管理部門は10年以上12人体制のままでした。業務量は減っているはずなのに、管理部長は「現状では人員削減は難しい」と主張。これを受け、社長直轄で管理部門改革プロジェクトが始動。目標は「業務量30%削減」です。

改革の第一歩:徹底した業務調査

プロジェクトの第一段階は、管理部12名の業務を徹底的に調査することでした。調査票を全員に配布し、10日間かけて日々の業務を記録してもらい、その後個別ヒアリングを実施。背景や業務量が多い理由などを深掘りしました。

調査結果によると、年間業務量の合計は19,238時間に達していました。この数値を基に、次の3つのカテゴリーに分類しました:

  • キープ(現状維持):5,942時間(30.9%)
  • チェンジ(改善):9,816時間(51.0%)
  • ストップ(廃止):3,480時間(18.1%)

「ストップ」がやや高めの比率となりましたが、10年以上業務の見直しが行われていなかったため、妥当と判断しました。

具体的な改善施策

業務の効率化に向けて行った主な改善策は以下の通りです。

1. 伝票承認の簡素化

現状は係長・課長・部長の3段階承認を必要としていましたが、リスクレベルに応じて段階を削減しました。

  • 小額の支払いは係長のみの承認で完了
  • 中規模の支払いは係長・課長の2段階承認
  • 高額な支払いのみ部長承認を含む3段階承認

2. 銀行振込回数の削減

毎月20回近い銀行振込(定例払い、スポット払い、経費精算など)を、取引先との支払条件を見直すことで月5回以下に削減しました。

3. 郵便物記録の廃止

総務課でExcelを使って行っていた郵便物の記録業務は、有用性が低いと判断し、完全廃止しました。

4. 問い合わせ対応の効率化

社内からの問い合わせ対応を効率化するため、電子掲示板にQ&A集を作成し、よくある質問を共有。これにより問い合わせ件数を大幅に削減しました。

5. Excelファイルの廃止

担当者が個人で作成していた入力チェック用のExcelファイルは、システムとの二重管理を招いていました。これを廃止し、システムへの直接入力を基本とし、エラー確認もシステム内で行うフローへ変更しました。

全社最適化への意識改革

業務改革はシステム導入と密接に連携しながら進めましたが、新業務フローに慣れていない関係者からは混乱も見られました。そこで、現行業務フローと新業務フローを図示し、視覚的に比較しながら説明を行うことで理解を深めました。

さらに、「自部門の業務負担が増えるのでは」という懸念も浮上しましたが、プロジェクトリーダーは「今回の改革の目的は全社最適化です。管理部より現場部門が担当したほうが効率的な業務は移管し、人員体制も見直します」と説明。社長からの全面的な承認も示したことで、関係者の理解と協力が進みました。

成果と今後の展望

改革プランは6か月にわたる議論を経て完成。成果は以下の通りです。

  • チェンジ業務:9,816時間 → 4,056時間(削減率 41.4%)
  • ストップ業務:3,480時間 → 1,890時間(削減率 45.7%)

トータル削減時間は7,350時間、削減率は38.2%で、目標の30%を大きく上回る結果となりました。

この改革プロジェクトは、業務量削減だけでなく、社員の意識改革や全社的な業務改善を推進し、Z社の成長基盤となるものです。今後も同様の取り組みを他部門に展開し、さらなる企業価値の向上を目指していきます。

業務効率化は単なるコスト削減ではなく、成長への投資です。皆さまも、自社の現状を見直し、新たな成長の一歩を踏み出してはいかがでしょうか。