業務改革を成功させるために必要な視点

企業の成長を支える要素のひとつが、適切な業務改革です。しかし、多くの企業が改革プロジェクトの途中でつまずき、期待する成果を得られないことがあります。これは、業務の特質を理解せず、場当たり的に取り組むケースが多いためです。本記事では、業務改革を成功させるために必要な判断基準を確立する方法と、業務の特質を理解する重要性について解説します。

なぜ業務改革は難しいのか?

業務改革が難しい理由のひとつは、各企業ごとに業務内容や体制が異なるためです。業務フロー、システムの規模、改革に割ける時間や予算、従業員のスキルなどは企業ごとに千差万別です。さらに、改革には必ずと言っていいほど社内の抵抗があります。改革の指針が明確でなければ、プロジェクトは混乱し、最悪の場合空中分解してしまいます。

改革を成功させるためには、業務特性を正しく理解し、判断基準をもとに意思決定を行う必要があります。以下に、そのための重要なポイントを解説します。

業務の特質を知ることで見えてくる改革の指針

業務改革において重要な基準のひとつは、「どの業務を効率化し、どの業務を見直すべきか」を判断することです。そのためには、以下の2つの業務特性を理解する必要があります。

1. 業務は自己増殖する

「パーキンソンの法則」 という理論をご存じでしょうか。イギリスの歴史学者C.N.パーキンソンが提唱したこの法則は、「役人の数は仕事量に関係なく増加する」という内容です。この法則は、現代の企業組織にも当てはまります。

なぜ業務が増え続けるのか?
  1. 部下を増やすことで自分の立場を守ろうとする心理
    管理者は、業務を同僚に任せると競争相手を増やしてしまうリスクがあります。そのため、部下を増やして業務を細分化し、重要な業務を自分の手元に残そうとするのです。
  2. 仲間のために仕事をつくる心理
    新しい部下が増えると、社内の連絡・調整業務や会議が必要になります。結果として、もともと1人で行っていた業務に関連する新たな業務が次々と生まれ、組織全体の業務が肥大化します。

また、事務業務は時間の制約が曖昧な場合が多く、効率性を測りにくい点も業務増殖の要因です。業務時間を厳格に管理できないため、自然と業務が肥大化しやすいのです。

2. 業務をやめるのは難しい

一度始まった業務をやめるのは容易ではありません。以下の理由がその背景にあります。

なぜ業務は止められないのか?
  1. 停止する手続きが複雑でリスクがある
    一つの業務を廃止する際には、関係部署や担当者の了承を得る必要があります。業務停止後に不都合が発生すると、責任を問われるリスクもあるため、誰も積極的に廃止を提案しようとしません。
  2. 業務に少しでもメリットがあると停止しにくい
    ほとんどの業務には何かしらの役割やメリットがあります。たとえ高い効果が期待できなくても、わずかな成果がある限り「完全な不要業務」と断定するのは難しいのです。しかし、コストに見合った効果が得られない業務は、たとえ一部のメリットがあっても見直す必要があります。

業務改革の進め方

業務改革を効果的に進めるためのアプローチは以下の通りです。

1. 判断基準を設定する

改革案を進める際には、業務を評価するための明確な基準を設定します。

  • 業務の必要性:その業務が本当に必要か、業務の目的を再確認する。
  • コスト対効果:人件費や時間に見合う効果が得られているかを評価する。
  • 代替案の有無:他の方法で代替できる業務かどうかを検討する。

2. 業務の可視化を行う

業務のフローを見える化し、業務がどのように生まれ、誰にどのような影響を与えているかを整理します。これにより、不要な業務や重複したプロセスを特定できます。

3. 小規模な成功体験を積み重ねる

改革は一気に進めるのではなく、小さな改善を積み重ねることで、社内の信頼と協力を得やすくなります。

まとめ

業務改革を成功させるためには、業務の特質を理解し、明確な判断基準をもとに進めることが重要です。業務は自然に増殖し、停止が難しいという特性を持っていますが、それを理解した上で適切な基準を設定し、業務全体を見直すことで、効率化と組織の成長を実現できます。変化に対する社内の抵抗を最小限に抑えつつ、効果的な業務改革を進めるために、まずは現状を正しく把握することから始めましょう。